[No.295-2]ボブカットの攻撃
No.295-2
「今とは流行が逆ね」
確かに葵(あおい)の言う通りだ。
今なら、ボブカットの方が圧倒的に多いはずだ。
「でも、今も昔も流行って、ひとつの基準だろ?」
黒髪のボブカットは、流行に反して単調な髪型に見えてしまう。
・・・とは言っても、髪を染めたりすることもできない。
「だから、耳をよく出してたな」
前とサイドの髪を耳に乗せるかのように、後ろへ流す。
これだけでも、髪型にアクセントが付いた。
「やっぱり、流行を意識してたと思う」
見ようによっては、ウェーブのようにも見えなくもない。
「彼女・・・可愛いね、乙女心じゃない!」
「乙女心?単に流行を追ってたんだろ?」
「これだから男って・・・」
僕には単に流行を追っているようにしか感じられなかった。
そこに違う理由があることなんて、考えもしなかった。
「少しでもおしゃれに、そして見た目をよく・・・」
「それが“流行を追う”ってことだろ?」
「バカね!彼女、あなたの前でしか耳、出さなかったでしょ?」
耳を出してはいけないことが校則にあったどうかは知らない。
けど、言われて見ればデートの時だけだったような気がする。
「“あなたのためだけ”に、そうしたはずよ」
「なんでそう言えるんだよ?」
そう言い放った瞬間、その答えに気付いた。
方法こそ違えども、“攻撃”を繰り返す葵と彼女が重なったからだ。
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