[No.295-1]ボブカットの攻撃
No.295-1
登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
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「似合ってる?」
葵(あおい)が、ここぞとばかりに頭を僕の目の前に突き出す。
「そんなに近付けなくても見えてるよ」
髪型を変えた時は、いつもこの調子だ。
それに、ちゃんと答えるまで、この“攻撃”が続く。
「似合ってるから」
「・・・から、なに?」
自分が満足するまで、言葉を拾って返してくる。
「夏らしくていいね」
「・・・夏っぽいかな?・・・ま、いっか!」
ようやくひと段落つけそうだ。
それにしても、葵の髪型を見ていると思い出すことがある。
「へぇ~、それは初耳」
「髪型だけに・・・女性関係よね?」
高校時代に付き合っていた彼女が、今の葵と同じ髪型をしていた。
「あら、おしゃれじゃない!」
「今は・・・だけど」
その昔、髪型の流行は、時のアイドル歌手を真似たものだった。
きつめのウェーブとボリュームのあるふんわり感が特長だ。
「彼女は女子高に通っていたんだけどな・・・」
そこの校則によって、髪型が決められていた。
「ボブカット?」
「そう」
流行から外れているその髪型を、彼女も気にするひとりだった。
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