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2011年9月

[No.302-1]早すぎたメール

No.302-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
のちに運命を変えることになる一通のメールが届いた。

『ショッピングモールに行きたいんやけど』

彩(あや)からメールが届いた。

(珍しいな・・・)

メールが届いたことではない。
彩から誘われることがほとんどないからだ。

『いいけど、いつ?』
『今からだよ』

(今?・・・これまた急だな)

『わかった、じゃあ今から行くよ』

場所はカーナビが教えてくれる。
とにかく、待たせないように急いで車のハンドルを握った。

走り出して、数分も経過していない時だった。
今度は彩から電話が入った。

「・・・今、走り出したから、30分後ぐらいには・・・えっ!?」

一瞬、耳を疑うことを言われた。

「ごめんね、来なくていいから」

すぐには意味を理解できなかった。

「ちょ・・・どういう意味?」
「あのね、別・・・」

僕の問い掛けに対する彩の答えに、動揺を隠せなかった。

(No.302-2へ続く)

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ホタル通信 No.090

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.189 小さな勇気 
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性

この話を読んで、どのような印象をお持ちでしょうか?全体的な雰囲気をよそに、意外とアダルトな話なんですよ。

・・・では、“あえて”小説上の私(男性)に、下心があると思いながら読んでみてください。

全体の3分の2はほぼ事実です。冒頭から後半の「それから更に1年が過ぎた」までが、それにあたります。
小説に出てくる同郷の女子社員はいくつか他の小説にも登場していますが、実はこの話がきっかけになります。つまり、メールアドレスをお互い知ることで、ふたりの関係が始まりました。

飲み会の席にはもうひとり存在し、自分を含めて三人での飲み会でした。
飲み会は、忙しかった仕事が一段落して、それに対する「お疲れ様会」だったのですが、彼女を誘うことで、以前、同じ職場で働いていた三人が揃うことになるため、声を掛けてみました。
もちろん、声を掛けた理由に嘘はありませんが、それだけではなかったことも、嘘ではありません。

話の展開にもう少し触れておきます。
小説の通り、彼女からはメールではなく、電話で連絡が入ったこと。そして、次の日にメールが届きます。
さらに、メールが届くその朝に・・・・「No.64 きのこの山」のイベントが発生しました。時系列で考えると、「No.189」が全ての始まりだったわけですが、小説の掲載の順番としてはかなり後になりました。

彼女にメールアドレスを教えると、彼女のメールアドレスを知ることができる・・・
結局、彼女の方から積極的に教えた格好にはなっていますがきっかけは自分が作っています。これらは彼女も理解しておりだからこそ「あなたの勇気に応えてみた」と、ちょっと艶かしい表現で締めくくりました。今でも「小さな勇気」は続いています。
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[No.301-2]進化論

No.301-2

「えっー!ラッキーガールが、ふたりもここにぃ!」

さっきまでの神秘的なイメージが一気に下がる表現だった。

「まぁ・・・そういうことになるわね」
「なんか、急に安っぽくなったと思わない?」

確かに、運命の大安売りの気配もただよう。

「でも、わたしのせいじゃないわ」

単に、私たちが惚れっぽい、だけだろうか?
それこそ、安っぽい恋愛をしていることになる。

「そんなことないよ、ちゃんと選んでる」
「・・・いつも同じようなタイプになっちゃうけど」

決して誰に対しても恋愛感情を抱いてはいないらしい。
それは私も同じだ・・・好みは一貫している。

「私もよ、みんな似た感じの人・・・外見も内面も」
「だよね~」

やはり運や偶然を超えた運命やら奇跡という言葉が似合うが・・・。

「・・・でも・・・他にも居た・・・」
「余り記憶に残っていないけど」

理想には程遠いが好きになった人も、決して少なくはない。
ただ、いつの間にか、記憶の片隅から消えていた。

「私たち、都合良く解釈してただけかもしれないね」

素敵だと思う男性のみ記憶に残る、ただそれだけなのかもしれない。

(No.301完)
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[No.301-1]進化論

No.301-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「私は運命に導かれているの!」

ドラマでも小説のセリフでもない。
目の前の友人から発せられたセリフだ。

「アルコール、入ってないよね?」
「失礼ね!まだ昼間よ」

失礼も何も、そうでなきゃ、私なら恥ずかしくて言えない。

「はい、はい・・・で、運命がどうしたって?」
「よくぞ聞いてくれました!」

(別に好きで聞いてるわけじゃないよ・・・)

世の中には、掃いて捨てるほど男性が居る。
だからと言って理想とする男性と、そうめぐり合うことはない。
でも、友人は何度も出逢っているという・・・。

「こんなの、運命以外の何ものでもないと思わない?」
「思わなくはないけど・・・」

どこかしっくりこない所がある。
とは言え、友人の話に矛盾などを感じているからではない。

「・・・けど、なにさ?」

しっくり来ないのは、友人の話に否定的ではないからだ。
むしろ、肯定的だからこそ、しっくりこない。

「わたしも・・・そうよ」
「えっ!・・・どういうこと?」

友人だけでなく、私も運命的な出逢いを繰り返している。

(No.301-2へ続く)

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[No.300-2]天空のホタル

No.300-2

「それはそうと星って、昔から色んな人を照らして来たんやろな」
「そうだね、今の僕らのように」

加えて、星の輝きは目印にもなる。
輝く光で数多くの人を導いても来たはずだ。

「みちびく?」
「ほら、実用的なものだけじゃなく・・・」

光り輝く星は、まず方角として人を導く。

「それに・・・心情的にもね」

占いを代表とする、神秘的なシンボルとしても人を導く。

「逆もあるやん」
「逆?」
「惑わすこともあるやろ」

確かに、たかが星占い、されど・・・という面もある。

「うちは、そんなに光ってなくてもええねん」

そう言うと、夜空を指差す。
どこかの星を指差しているように見える。

「・・・どれ?名前は?」
「名前・・・は、やね~」

そう言うと、夜空を差していた指を、フラフラと動かし始めた。
そして、その指を僕の目の前で止めた。

「ほい!ホタルの光、みっけ!」
「小さな光やけど、うちにとっては一番や!」

照れくさい言葉に、今だけは赤く光ってるのかもしれない。

(No.300完)

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[No.300-1]天空のホタル

No.300-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「今度、見たらいいよ」

夜空を見ていると、ふと思い出した。
以前、シリウスをネットで検索している時 、ある動画を見つけた。

「うん、見てみる」

シリウスの存在は有名だろう。
太陽を除けば、地球から見える最も明るい恒星だ。
冬の夜空をロマンティックに演出する。

「意外に大きいぞ」

その動画は星の大きさを比較したものだった。
もちろん、シリウスも登場する。

「ほんまに!太陽よりも?」
「遥かに!」
「それに、もっと大きな星も登場するよ」
「うそぉー!」

想像を超える星の大きさに、ただただ圧倒された。
でも、だからこそ、ロマンが広がるのかもしれない。
宇宙の彼方に、そんな星があると考えるだけで、ワクワクする。

「まぁ、そんな中でもシリウスは身近な存在だね」

いくら大きく輝いていても、地球から遠ければ暗くて見えない。
だからこそ、シリウスは程よい存在だ。

「そうやね・・・私の二番目に好きな星やもん!」
「二番?一番じゃなかった?」
「いいや、今年から二番」

“一番”と“今年から”が、気になるところではある。

(No.300-2へ続く)

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ホタル通信 No.089

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.183 ベルサイユのばら 
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

この小説はある“感想”がきっかけです。想い・・・というほど深いものではなく軽いタッチなので“感想”です。

タイトルでもある、ベルサイユのバラ(以下ベルバラ)
マンガ(アニメ)でも宝塚でも、どちらを思い浮かべて頂いても構いません。感想とは、これらベルバラに対するものです。

ベルバラは、色々な要素が詰まった作品だと感じています。
それに宝塚で演じられるように、男性よりも女性が好む内容が満載の作品でしょう。
登場人物は、美男美女。特に美男についてはイケメンブームの走りなのかもしれませんね。特にオスカルは美男美女、両方の要素を兼ね備えた究極の美の形なのかもしれません。
それにオスカルが女性とは言え、見た目では今で言うBL(ボーイズラブ)だとも言えなくもありません。

一方では宮中における妬みや陰謀・・・ドロドロした世界観は昼ドラに通じるものがあります
また、これとは対照的に宮中は、煌びやかで華やかな世界でもあり、舞踏会、ドレス・・・などなど、憧れ的な要素も満載でしょう。
身分を越えた恋愛や革命を代表とする壮大な歴史観。他にも探せば、もっと色々な要素があると思います。

そんな盛りだくさんのベルバラを、バイキングに引っ掛けました。
いつもと異なり、ラストが先に決まっているような状況でしたのでそうなるように、話を展開させました。
タイトルと内容のギャップをあえて狙った作品です。バイキングがどう転べばベルバラになるのか・・・
尚、バイキングの話は全くの創作です。ですから、実話度は限りなくゼロですが、バイキングの展開・・・何となく経験したような記憶があり、それを含めて20%としました。
No089
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[No.299-2]スクラッチ&ビルド

No.299-2

あれから、更に1ヶ月ほど経過した。

「元気にしてた?」

また、由実子(ゆみこ)から先に声を掛けられた。
ただ前回と少し違う。
今日は、あえてここで待ち合わせをしていた。

「・・・すっかり、無くなっちゃったわね」
「うん、跡形も無く」

なんだか、想い出まで無くなってしまったように感じる。

「私の部屋は、あの辺りだったね!」
「“あの”ってどこよ?」
「ほら、向こうに見える・・・向こう・・・?」
「どうかしたの?」

今まで気付かなかった。
寮の向こうに、こんな景色が広がっていたなんて・・・。

「公園・・・あったんだね」
「うん・・・私も今、気付いた」

寮に住んでいた頃は、全く気付かなかった。

「寮が無くなって、気付くなんて皮肉ね」

由実子の言葉は、何らかの教訓のようにも聞こえる。
事実、無くなって・・・失ってみて、気付くことは少なくない。

「でも、気付けてよかったよ」
「また、新しい想い出が作れそうね」
「・・・ってことは!?」

答える間もなく、ふたりで公園に向かって走り出した。

(No.299完)

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[No.299-1]スクラッチ&ビルド

No.299-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「あなたも来たの?」

同僚の由実子(ゆみこ)が私に声を掛けてきた。

「うん、だって・・・」

つい1ヶ月前まで住んでいた建物の解体作業が今日から始まる。
そこには約3年ほどお世話になった。

「いよいよ、女の園もおしまいね」
「・・・というより、大奥でしょ?」

会社の女子寮が閉鎖され、取り壊されることになった。

「みんなどうしてるかな?」

今はみんな、散り散りになっている。

「喜んでる人も居るんじゃない?」

寮に入ることは強制ではないにせよ、周知の事実ではあった。
それでも、何かと寮の方が便利であったことは間違いない。
通勤にしろ、食事にしろ・・・。
ただ、快適・・・というには程遠かったが。

「まぁ、なんたって、女の園だもんね」

気苦労は耐えなかった。
だから、寮の閉鎖を手放しに喜んだ人も多かった。

「・・・で、今日はなに?」

聞かなくても分かる答えをあえて求めた。

「あなたと同じ理由よ」

ほどなくして、重機の音が聞こえてきた。

(No.299-2へ続く)

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[No.298-2]調整力

No.298-2

「もぉー!また、ズレちゃった」

二面の難しさは、後輩の言葉そのものだ。
先に一面を揃えても、二面を揃える時に、一面がずれてしまう。
言葉するには難しいが、わざとズラしながら・・・。

「でしょ?最後に、ふたつ合わせ込むように・・・」

直前までバラバラでも、最後にピタッ!と合わせ込む。
二面を揃えるには、そんなテクニックが必要になる。
それが、三面、四面と進めば、なおさらだ。

「こうして・・・これをズラしておいて・・・」
「“ある力”を鍛えてると感じない?」
「確かに・・・そんな気がしてきた」

(それが、調整力よ!)

調整力・・・一般的な言葉かどうかは分からない。
でも、少なくとも私はそう名付けている。
仕事をしていれば、何かと足並みが揃わないことは多い。
スケジュールしかり、考え方しかり・・・だ。

「あせらず、ギリギリまで我慢して、最後にピタッ!っと」
「・・・その“力”、分かったよ!それに・・・できたぁ!」

二面の完成と共に、どうやら必要な“力”も分かったらしい。

「そう!これが調整りょ・・・」
「うん!・・・こうすれば、上手く鉢合わせしなくて済むんだね」

それぞれを上手くコントロ-ルする、二股力を身に付けたらしい。

(No.298完)

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[No.298-1]調整力

No.298-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「ルービック・キューブって知ってるよね?」
「あのガチャガチャするやつでしょ?」

かつての大ブームはとっくに過ぎている。
それでも、今でも魅力的な玩具だ。

「それが、どうしたって?」
「ちょっと遊んでみない?」

どうして、私がそれを持っているのか、後輩は聞かなかった。
ややこしくなると思い、あえて聞かなかったのだろう。

「まずは一面、揃えてみて」

最初は渋々感が漂っていた。
でも、だんだんと表情が変わってきた。

「こうして・・・こうして・・・できたぁ!」

(まっ、一面はこんな程度よ!)

「じゃ、次、二面に挑戦して」
「二面かぁ・・・」

単に難易度が上がるわけではない。
二面にはある“力”が必要になる。

「あれ・・・これじゃ、せっかく揃ったのに、ずれちゃうから・・・」

(そう、そう!それそれ!)

私もかつて、先輩から試されたことがある。

(No.298-2へ続く)

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ホタル通信 No.088

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.151 ケース・バイ・ケース
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

小説のシチュエーション的には、ひとつも事実が含まれていない作品です。

この小説のきっかけは、タイトルである“ケース・バイ・ケース”という言葉に“ある想い”があったからです。
この言葉は私生活よりも仕事上で、よく使われる言葉だと感じていました。それに小説の通り、“聞こえが悪い”言葉ではなく、むしろ、柔軟に対応すること・・・そんな積極性さえも感じられます。

ところが、ある瞬間・・・その瞬間の“具体的な答え”がないのも事実でしょう。今は答えがないから、そうなった時に、もっとも確からしい答えを選択すること・・・それがケース・バイ・ケースであったとしても、その瞬間が来るまで何も解決しません。
もしかしたら、答えを出すことを恐れ、逃げてるんじゃないのかと思うことも少なくありません。
そんな“想い”から、この言葉を使った小説を作ろうと考えました。

さて小説の内容ですが、設定は複雑ではありませんから、割と素直に読める仕上がりになっています。
ケース・バイ・ケースという言葉を、彼も私も都合よく使っていたために、結局、旅立ちの日まで何の結論も出なかった・・・という展開が最後の最後まで続きます。

後半、最後の5行の展開・・・分かりますか
恥ずかしながら、自分で読み返しても、すぐには意味が分かりませんでした。
彼は本来乗るべき列車には乗らず、その場の状況に応じた行動を取りました。
「いいんだ・・・こんな時こそ、使わなきゃいけないんだ」
・・・と、この後、彼はケース・バイ・ケースと言う言葉を口にします。
そしてこれを最後に彼がこの言葉を二度と使うことはなかった・・・が最後の5行の真相です。
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[No.297-2]だららん!の順番

No.297-2

「もしかして・・・」
「もしかすると・・・」

絶妙のタイミングで菜緒(なお)が合いの手を入れてきた。
間違いない・・・菜緒のイタズラだ。

「菜緒のしわざか!?」
「正解!」

ただ、イタズラにしては、かなりスケールが小さい。
場合によっては気付かないことさえあるだろう。

「地味じゃない?今回のイタズラ」

今までもイタズラされたことがある。
もちろん、全て笑い飛ばせる程度の内容だ。

「今回はちょっとイタズラとちがうねん!」
「イタズラじゃ、ない!?」

(・・・じゃなきゃ、嫌がらせか?)

「こないだまで、うちのが伸びててん」

そう言うと、俺の目の前でせいじゅうろうをぶら下げて見せた。
確かに、今は伸びていない。

「どういうこと?」
「うちの伸びてる“ひも”と、コッソリ交換したんや」
「なんでかと言うと・・・」

菜緒が理由をしゃべり始めた。

「順番?だららん?」
「だららん!はリラックマのキャッチフレーズみたいなもんやろ?」

どうやら、自分のストラップのひもをわざと伸ばしていたらしい。
だららん風を演出するために。
そして、今度は俺がそれを体験する順番らしい。
No297
(No.297完)

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[No.297-1]だららん!の順番

No.297-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
少し前から不思議に思っていたことがある。

「どうしたん?」
「ん?いや・・・何でもない」
「せやかて、せいじゅうろう、じっとみてたやろ?」

ケータイのストラップとしてぶら下げているリラックマ。
菜緒はそれを、せいじゅうろうと名付けている。
そのせいじゅうろうに、気になることが起こっている。

「気になること?」
「うん、ほら、これ見て」

ストラップの“ひも”の部分を指差してみせる。
ケータイにくくり付ける部分のひもだ。

「それがどないしたん?」
「・・・伸びてない?」
「それゴムやろ?もとから伸びるやん」

確かに材質がゴムなので、引っ張ると伸びる。
でも、今、俺が言ってる意味とは異なる。

「・・・じゃなくて、伸びきってない?だらしなく」

輪ゴムが伸びきってしまい、伸縮性を失ったのと同じ状態だ。
引っ張っても伸びないし、逆に縮みもしない。

「時間がたったら、そうなるんやないの?」
「けどな、ある日、急に・・・だよ」

徐々にと言うなら、まだ分かる。
それがある日を境に、ひもが伸びきってしまった。

「不思議というか、なんというか・・・」
「ほんま、不思議やね~」

なぜか菜緒の嬉しそうな表情が気になる。

(No.297-2へ続く)

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[No.296-2]別れの予感

No.296-2

「前、付き合っていた人とはね・・・」

カミングアウトする必要もないのに、つい雰囲気に流された。

「その、どちらでもなかったのよ」
「どういうこと?」

何の前触れもなく、メールも電話も通じなくなった。

「最後のメールが“じゃあ、また明日!”なんだよ」

自然消滅のように徐々にフェードアウトしたわけでもない。
ましてや、最後の最後まで修羅場があったわけでもない。
ある日突然、ふたりを繋ぐ糸が切れた。

「その糸を手繰り寄せても、何も引き寄せられなかった」

それまでの自分の言動を振り返った。
別れの原因がそこにあったかもしれないからだ。

「・・・で、見つかった?」
「う、うん・・・かれこれ2年になるけどね」

原因は今でも分かっていない。

「分かってたなら、逆に別れなくて済んだかも」

気付かない所で、すれ違いは始まる。

「案外、彼が別れのサイン・・・出してたかもよ~」
「もぉ!それって私が鈍感ってこと?」

恋の予感だけじゃなく、別れの予感も感じた方が幸せな時もある。

(No.296完)

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[No.296-1]別れの予感

No.296-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「自然消滅・・・って、減ったと思わない?」

恋人同士の別れの定番“自然消滅”
言われる通り、最近は減ってきたように思える・・・経験を含めて。

「ほら、一昔前なら・・・」
「連絡手段が限られていたからね」

携帯電話がまだ一般的ではない頃、連絡手段は限られていた。
お互い、家にある電話を使うことがほとんどだった。
親の目もあり、頻繁に連絡を取り合える環境にはなかった。

「だから、心が離れたりすると」
「途端に連絡が途絶える・・・か」

今なら、メールも電話も直接相手に届く。
もちろん、拒否されていないことが条件になるが・・・。

「最後の最後まで喧嘩したり、泣きごと言ったり・・・」
「本当の別れの瞬間まで、繋がっていられるのかもしれない」

決して表現は良くないが、修羅場は少なからずあるだろう。
そんな状態を誰しも自然消滅とは表現しない。
そう考えれば、自然消滅は綺麗に別れていると言える。
ただ・・・。

(まぁ、言いたいことがあっても言えないし・・・)

簡単に連絡を取り合えない以上、喧嘩さえ成立しない。

「どっちが幸せなのかな?」
「自然消滅か修羅場ってこと?」

(No.296-2へ続く)

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ホタル通信 No.087

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.20 恋愛を重ねて   
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

最初にお断りをさせて頂きますが、初期の作品だけに登場人物等の設定が不明確であり、完成度は群を抜いて低いです

まずは内容以前に、話の展開に補足させて頂きますね。

まず、登場人物は、女2人、男2人の計4人の設定です。性別は別にしても、4人居ることに気付いた人は、まず居ないでしょう。
“ひとりよがり”が特長でもある当ブログにおいても、これはかなりの反則です。
前半は、とある女性の心境です。この女性は後半冒頭に登場する“シリウス奈央さん”とイコールです。
まとめれば前半の心境をハガキに綴って、ラジオ局に投書した、という設定です。 

・・・で、後半冒頭からは、そのハガキを読むラジオ局のパーソナリティ。冒頭から“語りかけた”までが、パーソナリティのパートです。
当時、パーソナリティの性別は考えていなかったため、男性とも女性ともとれる文章になっています。あえて今、考えるとすれば“男性”として設定させて頂きます。
ここまでで、登場人物が男女、それぞれひとりづつになります。
後半の中盤、「どう思う、ナオ?」からラストまでは車中の男女の会話です。ここで男女がそれぞれひとりづつなので、合計すると女2人、男2人の計4人が登場します。

内容ですが、「内容は無いよう!」と、ダジャレでも言いたいほど中身がありません。
確かに前半の心境は、当時の私の気持ちを、素直に述べたものです。・・・で、ラジオでその心境を聞いた、とある車中のカップル。
奇しくも同じ「なお」ですが、同一人物ではありません。

最後に、超分かりにくい、ラストの4行に触れておきます。
どうしてこんな展開になったのか、正直覚えていません。色々な“含み”があるように思えますが・・・。
なにせ、心境にあるように、チョット苦しい時期があったので当時はただ、それを吐き出したかったのかもしれません。
No087
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[No.295-2]ボブカットの攻撃

No.295-2

「今とは流行が逆ね」

確かに葵(あおい)の言う通りだ。
今なら、ボブカットの方が圧倒的に多いはずだ。

「でも、今も昔も流行って、ひとつの基準だろ?」

黒髪のボブカットは、流行に反して単調な髪型に見えてしまう。
・・・とは言っても、髪を染めたりすることもできない。

「だから、耳をよく出してたな」

前とサイドの髪を耳に乗せるかのように、後ろへ流す。
これだけでも、髪型にアクセントが付いた。

「やっぱり、流行を意識してたと思う」

見ようによっては、ウェーブのようにも見えなくもない。

「彼女・・・可愛いね、乙女心じゃない!」
「乙女心?単に流行を追ってたんだろ?」
「これだから男って・・・」

僕には単に流行を追っているようにしか感じられなかった。
そこに違う理由があることなんて、考えもしなかった。

「少しでもおしゃれに、そして見た目をよく・・・」
「それが“流行を追う”ってことだろ?」
「バカね!彼女、あなたの前でしか耳、出さなかったでしょ?」

耳を出してはいけないことが校則にあったどうかは知らない。
けど、言われて見ればデートの時だけだったような気がする。

「“あなたのためだけ”に、そうしたはずよ」
「なんでそう言えるんだよ?」

そう言い放った瞬間、その答えに気付いた。
方法こそ違えども、“攻撃”を繰り返す葵と彼女が重なったからだ。

(No.295完)

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[No.295-1]ボブカットの攻撃

No.295-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「似合ってる?」

葵(あおい)が、ここぞとばかりに頭を僕の目の前に突き出す。

「そんなに近付けなくても見えてるよ」

髪型を変えた時は、いつもこの調子だ。
それに、ちゃんと答えるまで、この“攻撃”が続く。

「似合ってるから」
「・・・から、なに?」

自分が満足するまで、言葉を拾って返してくる。

「夏らしくていいね」
「・・・夏っぽいかな?・・・ま、いっか!」

ようやくひと段落つけそうだ。
それにしても、葵の髪型を見ていると思い出すことがある。

「へぇ~、それは初耳」
「髪型だけに・・・女性関係よね?」

高校時代に付き合っていた彼女が、今の葵と同じ髪型をしていた。

「あら、おしゃれじゃない!」
「今は・・・だけど」

その昔、髪型の流行は、時のアイドル歌手を真似たものだった。
きつめのウェーブとボリュームのあるふんわり感が特長だ。

「彼女は女子高に通っていたんだけどな・・・」

そこの校則によって、髪型が決められていた。

「ボブカット?」
「そう」

流行から外れているその髪型を、彼女も気にするひとりだった。

(No.295-2へ続く)

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[No.294-2]白い時

No.294-2

「・・・真っ白・・・」
「ね!でしょ~!」

まるでこうなることが分かっていたかのような発言だ。

「頭の中が真っ白って、言うじゃない?」
「あまりイメージは良くないよね」

夕菜(ゆうな)がいうことにも一理ある。
邪念を入れず、頭の中をリセットする意味もあろう。
でも、大概、さっきの私のような状態をいう。

「まぁ、黒よりはいいんじゃない?」

“腹黒い”しかり、“黒幕”しかり・・・だ。
とかく文字としての黒は、それこそダークな存在だ。

「それより、白が不思議ってどういうこと?」

ことの発端は、夕菜の発言だ。
そもそも、なぜ、白が不思議な色かの答えを聞いていない。

「さっき、ちょっと答えが出てた」
「・・・ま、まさか・・・」
「・・・うん、そのまさか」

白は確かに不思議な色だ。
あんな夕菜でさえ、それなりに見えてしまう。
かつての発言は、そんな自分を想像してのことだったのだろう。

「おめでとう!」

純白の花嫁は笑顔で私の前を通り過ぎた。
No294
(No.294完)

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[No.294-1]白い時

No.294-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「“白”って、不思議な色よね」
「白より夕菜(ゆうな)の方が、もっと不思議よ」
「え~!どんなところが!?」

つい「そんなところ」と答えたくもなる。
それに、はっきり言ってしまえば、うっとうしい・・・。

「・・・で、今日は何なの?白がどうしたって?」

多少、キレ気味に反応してしまう。

「白ってどんなイメージかな~?と、思って」

夕菜ワールド全開・・・そんなオーラが漂っている。

「もちろん、良いイメージよ!だって・・・」

純白を基調とする、汚れなき高潔な色だと思う。
それからイメージされるのは、もちろん花嫁だ。

「それに白紙に戻したり・・・」
「新たにスタートを切ったり・・・原点に帰る色なのかも知れないね」
「ふ~ん」

(・・・い、いけない!)

うっとうしく感じる割には気付けば、ひとりで盛り上がってしまう。
そんなことが度々起きる。

「・・・だから!ほら、とにかく、悪いイメージじゃないわ」

考えがまとまらず、一瞬頭の中が・・・。

(No.294-2へ続く)

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