[No.293-1]小さな命
No.293-1
登場人物=牽引役(女性)
=相手(女性)
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「・・・だったのよ」
「・・・」
私の話に言葉が出ないくらい、友人は感動したらしい。
もちろん、そのつもりで話をした。
「・・・でしょう?」
「ある意味、感動した」
「なによ、引っかかる言い方じゃない?」
「だって、そうでしょ?」
どうやら、さっきの無言は感動ではなく、あきれた無言のようだった。
「それにしても、よく触れたわね」
今朝、エレベータ横の壁に何かを見つけた。
「最初は何だか分からなくて・・・」
目の悪い私は、恐る恐るその壁に顔を近づけた。
「そしたら・・・」
元気のないセミが壁に張り付いていた。
「そう言えば、なんで元気がないって分かったの?」
「結果的に・・・ね」
昔を思い出して、慎重に手を伸ばした。
刺激すれば例のアレが飛んで来て、セミ自体も逃げてしまう。
それがいとも簡単に手に中に納まったからだ。
「それに・・・その瞬間、感じたんだ!」
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