« [No.292-2]決意の花火 | トップページ | [No.293-2]小さな命 »

[No.293-1]小さな命

No.293-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「・・・だったのよ」
「・・・」

私の話に言葉が出ないくらい、友人は感動したらしい。
もちろん、そのつもりで話をした。

「・・・でしょう?」
「ある意味、感動した」
「なによ、引っかかる言い方じゃない?」
「だって、そうでしょ?」

どうやら、さっきの無言は感動ではなく、あきれた無言のようだった。

「それにしても、よく触れたわね」

今朝、エレベータ横の壁に何かを見つけた。

「最初は何だか分からなくて・・・」

目の悪い私は、恐る恐るその壁に顔を近づけた。

「そしたら・・・」

元気のないセミが壁に張り付いていた。

「そう言えば、なんで元気がないって分かったの?」
「結果的に・・・ね」

昔を思い出して、慎重に手を伸ばした。
刺激すれば例のアレが飛んで来て、セミ自体も逃げてしまう。
それがいとも簡単に手に中に納まったからだ。

「それに・・・その瞬間、感じたんだ!」

(No.293-2へ続く)

| |

« [No.292-2]決意の花火 | トップページ | [No.293-2]小さな命 »

(012)小説No.276~300」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: [No.293-1]小さな命:

« [No.292-2]決意の花火 | トップページ | [No.293-2]小さな命 »