[No.290-1]郵便番号
No.290-1
登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
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「え~っと・・・なんだっけ・・・」
キーボードを打つ手が止まる。
今、ネット通販で買い物をしているところだ
いつものように、商品を選んで、名前を入れて・・・。
(どうしても、ここでつまづいてしまうのよね)
住所を入力する欄に来ると、必ず一度手が止まる。
郵便番号を覚えていないからだ。
「亜津子(あつこ)って、そこまでバカだっけ?」
「ちょっとぉ!そこまで言わなくても・・・」
悪意がないのことは知っているものの、相変わらず口は悪い。
郵便番号が覚えられないのには、それなりに理由がある。
もちろん、覚えようとしない自分が一番の理由だけど・・・。
「引越しが多いと、なかなか定着しなくてね」
「今で何回目?」
今の時代、女性にだって転勤がある。
働いている部署の関係と、私が“独身”だってことも手伝って・・・。
「かれこれ、3回目かな」
それも、7年の間で・・・だ。
独身だからこそ、本当はもっと気を遣って欲しいところだ。
「なんでさ?」
「決まってるでしょ!彼氏がいるかもしれないし」
「・・・かも?でしょ」
「あ・・・う、うん・・・」
急に声のトーンが下がってしまった。
「その気にならないと覚えられない気持ちも分かるわ」
「ただ・・・ね、覚えられないことよりも・・・」
今の住所の郵便番号は覚えていない。
けど、実家の郵便番号は今でも覚えている。
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