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[No.289-1]社交辞令

No.289-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
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同僚の女性からハガキが届いた。
その同僚は1年前に転勤したが、今でもメール程度の交流がある。

“引越しました”

ハガキにはそう印刷されている。
それに、手書きのメッセージにも似たようなことが書いてあった。

(1ヶ月前に引越したんだ・・・)

引越したことに対しては、特に思うものはない。
ただ、ある部分がどうしても引っ掛かる。

「“近くにお寄りの際は是非遊びに”・・・・か」

何を期待するわけでもない。
引越しの社交辞令と百も承知だ。
ハガキに印刷されているわけだから、届いた全員が目にする。
自分だけに宛てられたメッセージではない。

「でも・・・なんだよな」

交流はあくまでもメール程度だ。
その実、今まで住んでいた住所さえ知らない。
だから、年賀状だって一度もやり取りしたこともない。

(新しい住所・・・知る必要がないんだよな)

引越した事実だけなら、メールで伝えれば十分だ。
だからと言って、その時に新しい住所を聞こうとは思っていない。

「本当に“遊びに来い”と、いうことかな?」

近況報告に、引越しのハガキを使ったと考えるのが妥当だ。
だけど、鈍感な男にもなりたくない。

(No.289-2へ続く)

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