[No.288-2]幻の花屋さん
No.288-2
「ねぇ、知ってる?」
次の日、まずは“倉庫”から話を切り出してみた。
「ん?あの倉庫みたいなとこ?」
「そうだよ」
「その倉庫がどうかしたの?」
この口調では、どうやら知らない。
同じ総務部の同僚は私以上に帰りが遅い。
だから、知らなくて当然と言えば当然だ。
「その倉庫、花屋さんなのよ?」
自分だけが知る秘密を暴露している気分だった。
「・・・そんなのみんな知ってるわよ」
「え!うそ・・・帰りは私よりも遅いでしょ?」
「“遅さ”と“知らない”は関係ないよ」
どうやら、知らないのは自分だけのようだった。
「まぁ、別に知らなくても、大したことじゃないし」
つい強がってしまった。
・・・というより、すっぱいブドウの原理かもしれない。
(特ダネだと思ったのにぃ!)
「何、言ってるのよぉ!大したこと、大ありよ」
同僚から、衝撃の事実を聞かされた。
「うそ!・・・」
「ほんとよ、あなたがいつも花束を注文してる店よ」
事務的だった今までの仕事っぷりを反省する1日になった。
(No.288完)
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