[No.287-2]おしゃれな演出
No.287-2
「それから、9割沈黙、1割会話だったわ」
普段とは違う雰囲気にお互い飲み込まれていた。
何かあるんじゃないかと思う、期待と不安の私。
そして、何かしなきゃならない・・・そんな風に見える彼。
そんなギクシャクした空気に包まれていた。
「今、思えば笑っちゃうけどね」
「それは、そうとして・・・ポッキーの話はこれだけ?」
ポッキーの想い出は、実はここからがメインだ。
「う、うん、沈黙が続く中・・・」
「気付いて見たら、ポッキーがね・・・」
グラスには薄紫色のジュースが入っていたと記憶している。
当時、そんな色のジュースが珍しかったからだ。
「どうなってたの?」
「溶けてドロドロに・・・」
グラスの中は、いつしか得体の知れない物質に支配されていた。
それが何であるか、当時も説明は要らなかった。
「ますます、気まずくなった・・とか?」
「それが逆に・・・」
緊張の糸が切れて、場の空気が和んだ。
それからは、今までがウソのように会話が弾んだ。
「ほんと、ポッキーに助けられたわ」
「彼がそれを狙って、仕掛けてたとしたら?」
「・・・そうなの?」
当時も今も、そんなことを微塵も考えたことがなかった。
(おしゃれな演出ではなく、そうなった時のために?)
「もし、自分なら、そうしていたかも知れないってこと」
「・・・そう言えば、パフェ・・・」
男性にしては珍しい注文に、随分会話が弾んだことを思い出した。
(No.287完)
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