[No.285-2]誰も居ない助手席
No.285-2
「そこの角をみぎ、右やで!」
「曲がったらなぁ、公園が見えるから・・・」
美紀(みき)に言われなくても、カーナビが教えてくれる。
けど、あえて美紀の指示に従った。
随分と楽しそうだからだ。
「公園だね・・・で、次は?」
「・・・」
今までのハシャギっぷりが嘘のように、静寂の時が流れた。
その時間がどれだけあったか分からない。
でも、静寂の理由はほどなくして分かった。
~目的地周辺です~
「もうすぐ・・・到着やね」
「・・・みたいだね」
ちょっとしたドライブがもうすぐ終ろうとしている。
(このまま、どこかへ行っちゃおうか?)
何度も口から出掛かった言葉を、もう一度深く飲み込む。
「うまくやって行けそう?」
「・・・わから・・・あっ!ここでええわ」
答えを聞く前に、目的地に到着した。
「ありがとう・・・」
「じゃぁ」
なぜだか二人共、やけにあっさりした会話だった。
彼女の背中・・・追いかけて行くべきか迷った。
(あれから2年か・・・)
誰も居ない助手席を見ていると、ふとあの夜を思い出す。
彼女の涙、笑顔、そして決意・・・。
(幸せなら、それでいい・・・)
その時、助手席から誰かが降りて行くような気がした。
ようやく、本当に誰も居なくなった。
(No.285完)
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