[No.283-2]パープル・レイン
No.283-2
「それにしてもよく知ってたな?一般受けする映画じゃないのに」
「ま、まぁ・・・ね」
パープル・レイン・・・映画というより自叙伝だ。
ある世界的に有名なロック歌手のサクセスストーリーと言える。
「帰り道の、あの気まずさと言ったら・・・」
当時は純情な高校生だ。
映画の内容を冗談交じりで話せるわけでもない。
「逆に今は・・・ほら、こうして」
「苦い思い出として笑える・・・と?」
「・・・だね」
それから、数ヵ月後に僕達は別れた。
その映画が引き金になったかどうかは定かではない。
「・・・どう思う?」
「映画が原因かどうかってこと?」
少し考えていたものの、答えは簡単だった。
「・・・関係ないよ」
「でも、あんな映画見せられたら・・・」
「少なくとも私は気にしなかったよ」
「・・・美崎(みさき)も見た・・・の?」
聞けば美崎も僕と同じ経験をしたらしい。
考えてみれば、当時僕らは全く逆の立場を経験していたようだ。
「・・・ねぇ、映画行くのを止めて・・・」
「僕もそう考えていたよ」
今なら・・・語り合えそうだった。
(No.283完)
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