[No.281-2]神隠し
No.281-2
「机の上から筆箱を床に落としてしまって」
「・・・消しゴムだけが見つからなかったの」
たかが教室内だ。
しかも、どこかへ入り込んでしまうようなスキマはなかった。
「手提げカバンの中とかは?」
「隣近所はもちろん、色んな所を探したわ」
結局、今回と一緒で見つけることはできなかった。
「けど、その逆みたいなこともあるんだよね」
正しくは、消しゴムは“その時”見つからなかった。
数日後、その消しゴムが見つかった。
「どこにあったと思う?」
「・・・想像できない・・・」
「家にあったの」
「ええっー!これぞ神・・・」
「・・・隠しじゃなくて!」
真相は簡単だ。
消しゴムはその時、筆箱の中には入っていなかった。
「持って行くのを忘れてたみたい」
必ず筆箱に入っている・・・そんな思い込みが生んだ騒動だった。
「教室で“神隠し!”って言った人がいたので、それから・・・」
それから神隠しが定番になった。
少なくとも私の消しゴムは神隠しではない、それは確かだ。
でも「家にあった」とは言えなかった。
「・・・まぁ、騒動になったくらいだからね」
それもあって神隠しで終ったほうが、都合が良かった。
「だから、ピアスが見つかっても神隠しのままの方がいいのかもね」
「・・・そ、そうかもね」
明らかに表情に焦りが見える。
「まさか、片方・・・最初からしてなかったとか?」
(No.281完)
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