[No.281-1]神隠し
No.281-1
登場人物=牽引役(女性)
=相手(女性)
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さっきから、友人が何やらゴソゴソしている。
それに・・・青ざめた表情だ。
「どうしたの?」
「どうしよう・・・ないの!」
さっき、何気なく耳を触ったらしい。
その時に、片方のピアスがないことに気付いたらしい。
「落としたんじゃない?」
私の言葉でようやく周辺を探し始めた。
ただ、私達はちょっと気取った店の中に居る。
あまり派手に探すのも見苦しい。
「そんなこと言ったって、大事なものなんだから!」
言われなくても分かっている。
彼から貰った・・・と、散々自慢されたピアスだ。
でも、結局見つけることはできなかった。
「・・・そう落ち込まないで」
友人の落胆ぶりが痛々しい。
「・・・か・・・くし・・・ね」
「ん?なに?」
友人がボソッと何かをつぶやいた。
「神隠しよ、きっとこれは!」
今度は逆に声を張り上げてしゃべった。
「神隠し?」
随分、久しぶりに聞いた言葉だ。
「久しぶり?」
「うん・・・私も小さい頃、よくそんなこと言ってたの」
何か物がなくなれば“神隠し”が小さい頃の定番だった。
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