[No.273-2]傘の中
No.273-2
「それを期に、何となく距離ができてしまって」
「・・・そうなるわね」
今のように学生がケータイを持てる時代ではなかった。
だから、自然消滅なんて、いとも簡単だった。
「結局その時は、謝るでもなく、訂正するわけでもなくて」
「で・・・現在に至るってわけね?」
「それが、そうでもなくて」
実は、卒業してから彼と逢う機会があった。
「・・・というより、彼に手紙で謝ったんだ」
それから、何度か便りを重ねた。
それで逢う機会が生まれた。
「どんな話をしたの?気になるぅ~」
女同士なのに甘えた声で迫ってくる。
「改めて、照れ隠しだったことを口にしたわ」
「彼の反応は?」
彼は彼で照れ隠しに気付く余裕がなかったことを詫びた。
それは手紙にも書いてあった。
決して、彼が悪いわけじゃないのに・・・。
「・・・素敵な人ね」
「まぁね・・・」
友人の言葉通り、本当に素敵な男性になっていた。
「その後はどうなったの?」
正直、ヨリを戻すつもりはなかったし、それは彼も同じだった。
「えっ~、もったいない!」
「それより、自分のことはどうするのよ?」
話の本題はそこにあった。
「そうね・・・あの時のあなたと同じセリフ言ってみるよ」
「ただ、主語は変えるけどね」
(No.273完)
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