[No.272-2]夏の微笑み
No.272-2![]()
「観覧車は特に密室感があったな」
わざわざ苦い想い出が残る遊園地へ友人と出掛けた。
気乗りはしなかったものの、無料チケットに負けた。
今と同じように、昔、彼とこのゴンドラで外を眺めた。
結局、遊園地でのデートは終始、盛り上がることはなかった。
「到着前に、そんな感じだったもんね」
「お互い緊張もあったしね」
彼だけのせいじゃない。
「あら、やさしいのね?」
私だけでも、もっと感情を表した方が良かった。
そうすれば、笑い飛ばすことだってできたかもしれない。
「デート後、つきあいは自然消滅したわ」
「別れの言葉も無し?」
デート後、私は彼からの連絡を待った。
彼は、きっと私からの連絡を待っていたと思う。
「まぁ、幼い恋ということで・・・あっ、それより!」
「な、なに、急に変な顔するのよ!」
できる限りの変顔を作った。
「ほら・・・見てよ」
隣のゴンドラのカップルがキョトンした顔でこちらを見ている。
「あの時の私たちのようだったから」
それから、ゴンドラを降りた2人は楽しそうに人ごみに消えていった。
(No.272完)
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