[No.272-1]夏の微笑み
No.272-1
登場人物=牽引役(女性)
=相手(男性)
=相手(女性)
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(ねぇ・・・何か、しゃべってよ)
さっきから、ずっと無言が続いている。
理由は・・・分かっている。
「近くだと思うから、歩いて行こうよ」
30分前にそう言われた。
ただ、今は歩き始めた頃と状況が違う。
「おかしいなぁ・・・」
彼が小さな声でつぶやいた。
どちらかと言えば困っているというより、焦っている。
近くだと思っていた場所が、遠いどころか見つからない。
「無理しなくていいよ」
歩き疲れたことより、彼の気持ちの方が気になる。
「もうすぐなんだ、もうすぐだから」
無言の時も、そんな表情をしていた。
デートプランを立てた責任感もあるのだろう。
単純に男の意地だけなのかもしれないけど。
「あっ・・・あったぁ!」
彼の心中を考えていた時、歓喜の声で現実に引き戻された。
「ようやくたどり着きそうだよ!」
まだ、相当距離はあるものの、彼の言葉通りだ。
遠くからでも観覧車が見え始めた。
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