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2011年6月

ホタル通信 No.078

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.25 受信フォルダ8   
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

この話は「ホタル通信 No.006」で、関連性のある小説として文末に登場しています。まずは時系列に整理してみますね。

公開の順番は「No.28 女の子へ聞け」の方が遅いのですが、現実のエピソードとしては、No.028が先です。
尚、No.25とNo.26は、登場人物含め状況設定等、あくまでも別の話として当時作りました。

現実のエピソードを要約すれば、ちょっとしたケンカから連絡が途絶えてしまった、とある男女
そのことを友人の女性に話した・・・ことから、No.28がスタートします。そして、その女性が一言。
「また、メールでも入るんとちがう?」
その言葉通りメールが届き、それからNo.25がスタートします。
尚、作者者が男性の立場か女性の立場かは秘密です。

さて、この話をもう少し掘り下げてみます。
小説上はメールが2件届いて“驚き度”はそんなに強調していませんが、現実はかなり驚いたのを覚えています。
受信フォルダ8には、彼からのメールのみが振り分けられるようになっていたのは事実です。
ですが、それ以前に「メールの到着を知らせるランプ」が、赤く点滅していたのを強烈に覚えています。
そうなんです・・・彼からメールが届いた時だけ、赤点滅するように設定していたからです

最後に関係あるような、ないような話をひとつ。
今、持っているケータイは当時と同じものではありません。同じメーカーのものなんですが、お知らせランプの機能は若干、異なります。
受信の最中は、確かに特定の人を設定したランプの色で受信してくれるのですが、受信が終ると通常の色で点滅します。
もし当時の機種もそうだったなら、小説が生まれていなかったかもしれません。
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[No.277-2]異人館

No.277-2

「随分とおとなしくないか?」

今日一日は、彼の言葉を素直に聞けそうにない。
ある疑念を持つ以上、何を言われても悪意と捉えてしまう。

「別に・・・いつもの通りよ」

今はこれが精一杯の返事だった。
強がっていても、今にも泣き出しそうなのが本音だ。

「・・・あはは」
「な、なにがおかしいのよ!」
「ここのジンクス、気にしてるんだろ?」

私から言い出せなかったことを、あっさり言われた。

「そうじゃないけど」
「・・・けど?」
「もぉ!知らない!」

彼は異人館のジンクスを知っていた。

「そんなの迷信、迷信!ただの都市伝説だよ」
「それでも心中穏やかじゃないよ」

幸せの絶頂なら逆にジンクスにチャレンジしたかもしれない。
ただ、今はジンクスを抜きにしても関係は危機的だ。

「だから来たんだよ」
「別れを決定付けるため?」
「ある意味、当ってるけどな」

そう言うと彼が歩いて来た道を振り返り、一言言った。

「これからの僕らのために、今までの僕らに別れを告げたくてね」

(No.277完)

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[No.277-1]異人館

No.277-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
-----------------------------
「異人館に行ってみない?」

彼のその一言に複雑な想いが交錯した。

「う、うん・・・いいけど・・・」
「気乗りしない?」
「そうじゃないけど」

彼は知ってるのだろうか?
神戸の異人館には、あるジンクスが存在する。

「うみ・・・」
「そうだ!砂浜を歩きたい!」

とりあえず、反対方向へ逃げておこう。

「構わないけど」
「じゃ、その後に行くか?」
「えっ!」

どうやら逃げられそうにない。

(知ってて誘ってるのかな?)

そうだとすれば大問題だ。
ただ、今は素直に聞く勇気がない。
正直、この所、彼とは上手く行ってないからだ。

(別れのサイン・・・?)

「・・・どうした?」
「あ・・・なんでもない」

いつになく爽やかな表情が逆に怪しい。
何か・・・ふっきれたようにも感じるからだ。

(No.277-2へ続く)

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[No.276-2]好きになってよかった

No.276-2

「まぁ・・・そんな時もあるのかもね」

友人が助け舟を出してくれた。
特別、何か想い出があるわけでもない。
なのに他人事として聞けない。

「一種のデジャブみたいなものじゃない?」

それが正しいかどうかは別にして、雰囲気は理解できる。
他人の経験を、自分の経験と置き換えているのかもしれない。

「それと恋愛ドラマ!」

友人の言葉に納得できるものを感じた。
確かに恋愛ドラマを良く見る。
その影響かも・・・。

「いずれにしろ、解決できてよかったじゃない!」
「そうね、じゃ、一曲行く?」

サラリーマンの“1杯行く?”と変わらないノリでカラオケに誘った。

「好きになってよかったぁ~♪」

何時になく、友人が張り切って何度も歌った。
そんな曲じゃないのに・・・。

(ん・・・あ・・・れ・・・?)

「過去形じゃ・・・ないんだ!」
「な、なによ急に!」

好きになってよかった・・・今でもそう想っている。

(No.276完)

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[No.276-1]好きになってよかった

No.276-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
懐かしさと共に、ふと疑問がわいてきた。

(現在進行形・・・それとも過去形?)

テレビで懐かしい歌を聞いたからだ。

  『好きになってよかった♪』

当時はただせつない歌・・・そんな認識しか持っていなかった。
それなのに改めて聞いた途端・・・。

「当時、良くカラオケで歌ったよ」
「歌詞、覚えてる?」
「う~ん・・・サビしか・・・」

昨日、久しぶり聞いた後、大急ぎで歌詞を調べた。
ある疑問に対する答えを確認するためだった。

「疑問?・・・答え?」
「うん、現在進行形の歌ならいいな!ってね」

彼に対する彼女の想い。
今の幸せを噛み締めるかのように“好きになってよかった”と。
・・・そんな歌詞を期待していた。
けど、それに反するような歌詞だった。

「過去形・・・だったのね?」
「そうみたい」

何となく予想はできていた・・・歌詞を見るまでもなく。
ただ改めて歌詞を見ると過去形がより鮮明になった。

「何か想い出でも?」
「どうなんだろう・・・自分でもよく分からない」

(No.276-2へ続く)

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ホタル通信 No.077

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.137 熱いコーヒー 
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性 

当ブログは「日常」の中で起こる出来事をテーマにしています。
この話もその典型であり、話をかなり膨らませています。

きっかけは、単純です。
小説に書いた通り、フタ付きのコーヒーを飲んだ時に、思わぬ熱さビックリしたことがことの始まりです。
普通のカップに入ったコーヒーなら、これも小説に書きましたが唇に触れた瞬間に、何らかの予防線が張れます。でも、フタ付きは、口の中に入ってからなので、何とも回避ができません。

フタ付きの熱いコーヒー・・・ヤケド・・・から「恋のヤケド」に辿り着くにはあまり時間は掛かりませんでした
ひとつ言えるのは、フタ付きが大きなポイントになったと考えています。ただ熱い物を食べたり、飲んだりしただけなら話は生まれていなかったでしょう。
単に熱い物に注意するのではなく、熱いと気付いた時にはもう手遅れ・・・的なこと、恋愛でもあると思いませんか?

この話はオチが見えていたことに加えて、コーヒーによるヤケドの話を「恋のヤケド」に置き換えても違和感なく、話が進んだことから、非常に短時間で書き上げることができました。
執筆は昼の休憩時間(1時間)の中で行い、1作できるかできないか程度ですが、これについては20分程度で完成しました。
“書く”と言うより“会話を進める”方式でいつも執筆しますので会話がテンポ良くと進むと、それだけ完成が早まります。

恋のヤケド・・・表現、テーマとしては一般的でしょう。
でも言葉から話を作るのではなく、実際に何かが起こり・・・それもハプニングではなく、見過ごしてしまいそうな、小さな出来事から作るのが当ブログの真髄です。
風でカーテンがそよいだだけでも、読みかけの本が積み上げられていても、私にとってはどれも宝石のような輝きとして感じられます。
No077
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[No.275-2]何が見えるの?

No.275-2

「コホン」

漫画に出てきそうな、ベタな咳だった。
改まって何かを言おうとしている。
でも、僕にはその必要はない。

「それ、それ」

菜緒(なお)より先に、彼女の胸を指差す。

「気付いた?」
「気付かないほうがおかしいだろ?」

2日前の俺と同じように、ポッケにせいじゅうろうを入れている。

「何が見えるんやろ?」
「・・・何が・・・?」

最初は意味が分からなかった。
聞けば胸ポケットから見える風景のことらしい。

「せいじゅうろうが見てる風景ってこと?」
「そうやで」

言うなれば巨人のポケットに居る人間。
確かに、どんな世界が見えるのだろうか・・・。

「せいじゅうろうに聞いてみたら?」
「せやな・・・なぁ何が見える?」

菜緒がせいじゅうろうに語りかける。
それにタイミングを合わせ俺が答える。

「空が青いですな」

胸が大きな菜緒のポッケ・・・。
せいじゅうろうは、窮屈そうに大空を見上げていた。
No275
(No.275完)

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[No.275-1]何が見えるの?

No.275-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「それ、ええやん!」

最初、何を誉められているのか分からなかった。
別にそれを意識していなかったからだ。

「えっ!なに?なに?」
「ポッケのせいじゅうろう!」

ケータイをズボンのポケットに入れようとした。
けど、小銭がじゃらついていた。
ケータイが傷付くのを恐れて、どこかないかと・・・。

「・・・で、胸ポケットに・・・」

だから、何かを狙ったわけでもない。
その時は、そこがベターだった。

「だからぁ~あ?」

声が思わず裏返ってしまった。
結論を言う前に、菜緒(なお)がゴソゴソし始めたからだ。
理由は・・・想像が付く。

「別にマネしなくても・・・」

男性の場合は、Yシャツを含め、胸ポケットは自然だ。
でも、女性の場合・・・そうはいかない。

「・・・ポッケないわ」
「服にもよるけど、女性用はあまりないんじゃない?」

菜緒が不服そうな顔をする。

「ポッケ付きの服を探す!」

菜緒と再会したのは、それから2日後だった。

(No.275-2へ続く)

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[No.274-2]気になる写真

No.274-2

昨日、撮った写真をパソコンに保存した。

「どれどれ・・・」

改めて、大きな画面で見るためだ。

「あっ・・・」

画面に映し出された写真に、思わず声を発してしまった。

(光量不足・・・それに)

確かに撮影場所は、多少薄暗かった。
でも、フラッシュはAUTOでも光らなかったほどだ。

「なんだよ・・・」

大きな画面で見ると、全体的に荒さが目立つ。
デジカメの小さな画面では、さほど気にはならなかったのに。
けど、それより、もっと気になることがあった。

(微妙な・・・表情・・・だよな)

那央(なお)の表情は少なくとも笑顔ではない。
でも、自分もそうだが満足行く表情なんてそれほどできない。
だからこそ、逆に大切な一枚が欲しくもなる。

『写真、撮り直さないか?』

那央(なお)にメールを送った。

『どうして?』
『光量不足で、ちょっと暗く写ってるんだ』

本心は隠した。

『ええよ!でも、また結婚式を想像したら緊張するやん』
No274
(No.274完)

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[No.274-1]気になる写真

No.274-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
デジカメで写した、ある一枚の写真を見ている。
パソコンの画面で見て、初めてそれに気付いた。
撮った時は気付いていなかった。

「なぁ・・・写真撮らない?」
「写真?いっつも撮ってるやん」

デジカメが主流になってから、写真は気軽な存在になった。
つい意味も無く撮ってしまうことさえある。

「ごめん、主語が抜けてた」
「一緒に撮らない?」

よく考えなくても、那央(なお)ひとりの写真しか持っていない。
僕が写真嫌い・・・というのも理由のひとつだった。

「撮ったこと、無かった?」

那央とは友人とも恋人とも言いがたい、不思議な関係だ。
近すぎず、遠すぎず・・・の答えのつもりでいた。
一緒に写真を撮らないことが。

「だめか?」
「別に、かまへんよ」

ただ、関係が長くなるにつれ、多少気持ちに変化があった。
だから、その答えとして写真を選んだ。

「じゃ、ケータイも一緒に」
「・・・どうして?」
「同じストラップ、ついてるやん!」

確かに、お互い那央が好きなキャラクターをぶら下げている。

「まぁ・・・いいか」

携帯を手に、デジカメのシャッターが切られるのを待った。

(No.274-2へ続く)

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ホタル通信 No.076

小説名:No.95 マイノリティ   
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

実話度は本来20%にも満たない程度です。亜希子がこんにゃく好きという事実をかなり膨らませて書いた話です。

冬のホタル的には、こんにゃくがテーマでも“あり”なんですが、この話においてはテーマは別に存在しています。
タイトルのマイノリティ・・・の意味はご存知でしょうか?少数派という意味があります。
少数派を英語に直したら・・・の観点ではなく、トム・クルーズ主演「マイノリティ・リポート」から頂いたマイノリティです。
映画を見た当時、聞きなれない“マイノリティ”という言葉を調べたことがあり、そこで初めて意味を知りました。

この話はおでんの具としては少なくとも主役ではないこんにゃくが好きな亜希子をマイノリティ・・・少数派ではなく個性的という感覚で話を作りました。
こんにゃくを話の中心にすること、タイトルにマイノリティを使うことは早い段階で決まっていました
それから、おでんだけに少しコミカルに話を進めて行ったところタイトルとマッチするようなオチに自然にたどり着きました。

事実としては冒頭に書いた通り、20%にも満たないのですが、亜希子のモデルになった人の雰囲気、性格を小説に盛り込んでいます。それらを含めて40%としています。

最後に、この話に出てくるこんにゃく・・・
「No.42-1 わたしの説明書」に登場するこんにゃくと同じなんで
すよ。
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[No.273-2]傘の中

No.273-2

「それを期に、何となく距離ができてしまって」
「・・・そうなるわね」

今のように学生がケータイを持てる時代ではなかった。
だから、自然消滅なんて、いとも簡単だった。

「結局その時は、謝るでもなく、訂正するわけでもなくて」
「で・・・現在に至るってわけね?」
「それが、そうでもなくて」

実は、卒業してから彼と逢う機会があった。

「・・・というより、彼に手紙で謝ったんだ」

それから、何度か便りを重ねた。
それで逢う機会が生まれた。

「どんな話をしたの?気になるぅ~」

女同士なのに甘えた声で迫ってくる。

「改めて、照れ隠しだったことを口にしたわ」
「彼の反応は?」

彼は彼で照れ隠しに気付く余裕がなかったことを詫びた。
それは手紙にも書いてあった。
決して、彼が悪いわけじゃないのに・・・。

「・・・素敵な人ね」
「まぁね・・・」

友人の言葉通り、本当に素敵な男性になっていた。

「その後はどうなったの?」

正直、ヨリを戻すつもりはなかったし、それは彼も同じだった。

「えっ~、もったいない!」
「それより、自分のことはどうするのよ?」

話の本題はそこにあった。

「そうね・・・あの時のあなたと同じセリフ言ってみるよ」
「ただ、主語は変えるけどね」

No273
(No.273完)

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[No.273-1]傘の中

No.273-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
私にとっては、軽い照れ隠しのつもりだった。

「照れ隠し?」
「うん・・・本当に深い意味はなかったんだけどね」

最近、彼氏とすれ違いが続く、友人の相談に乗っていた。
その流れで、高校の時の苦い経験を思い出した。

「場の空気が変わったから、つい・・・言っちゃって 」

ある雨の日、私たちはひとつの傘の中に居た。
ふいに会話が途切れ、雨音だけがやたら耳についた。

「・・・で、彼が、その・・・」
「キスを迫られたんでしょ!」
「まぁ・・・そんな感じ」

“未遂の未遂”・・・と言えば良いのだろうか?
実際に迫られたわけでもないし、それに似た行動もなかった。
直感的に、そんな感じがしただけだ。

「それで・・・」
「なんて言ったの?」
「“友達と居るほうが楽しい!”って」

何の脈略もなかった。
なのに、あのタイミングでなぜ、そんなことを言ったのか・・・。
その答えは今でも分からない。

「また・・・すごい一言を言ったものね」

本音でもなく、日頃から思っていたことでもない。
それなのに・・・。

「今で言う、テンパッてたんじゃない?」
「そうだと思う・・・」
「もちろん、彼もよ」

友人が言うには彼もそうだったと言う。

「彼に余裕があれば、笑い話で済んでたかもしれない」

私の照れ隠しに気付いてさえくれていたら・・・。
つい、自分に都合の良いように考えてしまう。

(No.273-2へ続く)

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[No.272-2]夏の微笑み

No.272-2

「観覧車は特に密室感があったな」

わざわざ苦い想い出が残る遊園地へ友人と出掛けた。
気乗りはしなかったものの、無料チケットに負けた。
今と同じように、昔、彼とこのゴンドラで外を眺めた。
結局、遊園地でのデートは終始、盛り上がることはなかった。

「到着前に、そんな感じだったもんね」
「お互い緊張もあったしね」

彼だけのせいじゃない。

「あら、やさしいのね?」

私だけでも、もっと感情を表した方が良かった。
そうすれば、笑い飛ばすことだってできたかもしれない。

「デート後、つきあいは自然消滅したわ」
「別れの言葉も無し?」

デート後、私は彼からの連絡を待った。
彼は、きっと私からの連絡を待っていたと思う。

「まぁ、幼い恋ということで・・・あっ、それより!」
「な、なに、急に変な顔するのよ!」

できる限りの変顔を作った。

「ほら・・・見てよ」

隣のゴンドラのカップルがキョトンした顔でこちらを見ている。

「あの時の私たちのようだったから」

それから、ゴンドラを降りた2人は楽しそうに人ごみに消えていった。

(No.272完)

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[No.272-1]夏の微笑み

No.272-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)=相手(女性)
------------------------------------------
(ねぇ・・・何か、しゃべってよ)

さっきから、ずっと無言が続いている。
理由は・・・分かっている。

「近くだと思うから、歩いて行こうよ」

30分前にそう言われた。
ただ、今は歩き始めた頃と状況が違う。

「おかしいなぁ・・・」

彼が小さな声でつぶやいた。
どちらかと言えば困っているというより、焦っている。
近くだと思っていた場所が、遠いどころか見つからない。

「無理しなくていいよ」

歩き疲れたことより、彼の気持ちの方が気になる。

「もうすぐなんだ、もうすぐだから」

無言の時も、そんな表情をしていた。
デートプランを立てた責任感もあるのだろう。
単純に男の意地だけなのかもしれないけど。

「あっ・・・あったぁ!」

彼の心中を考えていた時、歓喜の声で現実に引き戻された。

「ようやくたどり着きそうだよ!」

まだ、相当距離はあるものの、彼の言葉通りだ。
遠くからでも観覧車が見え始めた。

(No.272-2へ続く)

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ホタル通信 No.075

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.66 奇跡の星   
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

自分(作者:ホタル)で作った小説を自分で否定するような形式の小説です

「No.17-1 出逢いの歯車」は、出逢いは偶然の積み重ねであり、それは奇跡に近い・・・そんな話です。
この話に共感したからこそ、次の恋を諦めている私・・・そして、その私を一喝してくれた友人。それが今回紹介する「奇跡の星」の冒頭です。
ただ、最初から、このふたつの小説を関連付ける予定で作ったわけではありません。それは小説の番号、No.17とNo.66を見て頂ければ分かると思います。

この小説のきっかけは、俗に言う“運命の人”とまでは行かなくても、人って案外、素晴らしい人達と出逢っている・・・と、感じていたからです。
冒頭の「短編のブログ小説=出逢いの歯車」のことであり、これを否定する友人、裏を返せば作者が自分の小説を否定していることになる、なんとも風変わりな話です。

さて、いつもの通り、テーマが決まると、雰囲気で前半を作り進め、結末はもちろん、後半はノーアイデアでした。
でも、奇跡という言葉から早い段階で宇宙、地球などのイメージができており、少し軽いタッチを入れるために、あえて地球外生命体を後半の切り口にしました。

宇宙にはいわゆる地球と同じような星は、地球以外ないのかも知れないし、それこそ無限にあるのかもしれませんね。
No075
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[No.271-2]笑顔

No.271-2

「それにしても、着眼点がすごいわね」

そもそもどうしてこんな展開になったのか気になる。
笑顔を作らなければならない理由でもあるのだろうか。
そうであれば、当然・・・。

「近々、泣く予定でもあるわけ?」
「まぁ・・・ね、展開次第では」

その言葉だけでも、全体像は見えてくる。

「でも、泣きたい時には泣けば?」

多少、ドライな言い方をした。
私なら、きっとそうする・・・というより、そうなる。

「ありがとう、でも・・・」
「彼に負担を掛けたくない?」
「そんな感じ」

作り笑顔にならないことを祈るだけだった。

「どうだった?」

後日、その結果を聞いた。
極力、さりげなく・・・そしてストレートに。

「練習が無駄に終ったみたい」

それが全てを物語った。

「そんなことはないわよ」
「今度の合コン、セッティングするから」

そう、その時に練習の成果を披露すればいい。
No271
(No.271完)

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[No.271-1]笑顔

No.271-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-------------------------------
友人の動きがさっきから変だ。
動きと言っても、顔の動きだが・・・。

「何してるの?さっきから」

しきりに表情を変化させている。
口角を上げたり、目を細めてみたり・・・。
とにかく、顔のパーツを慌しく動かしている。

「ん?見ての通りよ?」
「それで分かんないから聞いてるの!」

聞けば要領の得ない話をしてきた。

「・・・要約すれば、笑顔を作る練習ね?」

話の前段は抜きにしても、確かに笑顔は“作る”という。
泣き顔や怒った顔を“作る”と聞いたことはない。

「だから、それを確かめていたの」

一見、馬鹿げた話のようにも思える。
でも、笑顔は無意識でも意識的でも顔のパーツが動く。
と言うより、動かないと笑顔にならない。

「ほら、怒った顔は・・・」

そうなんだ。
目が釣り上がる・・・実際にあるのかもしれない。
けど、どちらかと言えばそれはイメージの世界だ。
怒った顔は表情ではなく、態度や言葉がそれを代弁する。

「なんていうか・・・作る・・・となるとね」
「そうね、無理やり・・・っぽく、印象は良くないね」

それこそ、作り笑い、作り笑顔・・・だ。

(No.271-2へ続く)

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[No.270-2]成長

No.270-2

「そんな目で見てたの?」

同僚の女性から予想された返事が返ってきた。
それでも話したい朝のワンシーンであった。

「そういうことじゃなくて!」
「じゃあ、どういうことよ?」
「ほら、親心というか・・・」

親子と言うより、年の離れた兄弟のような感じだろう。
ただ、今は親心という言葉を使いたい。

「まぁ、4月だし、そんな時期ね」

赤の他人でも、妙に“成長”を感じる。 
制服ひとつでこうも印象が変わるものだろうか?

「何言ってんのよ!女子は色々成長するの!」

確かに男子より、色々な面で成長が早い。

「それと、逢わなくなった人も居るはずよ?」
「えっ!?」

誰もがひとつ歳を重ねる。
学校を卒業して、全く別の生活を始めた人もいるだろう。

「・・・確かに逢わなくなった人も・・・」
「それはそれで、喜ばしいことじゃない!」

そんな同僚もひとつ歳を重ねた。

(No.270完)

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[No.270-1]成長

No.270-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------
(ん?・・・あれ?)

制服姿の女の子とすれ違った。

(見覚えがある顔なんだけど・・・)

見覚えがあるはずなのに、何だか違和感を感じる。

「・・・自転車!?」

今まですれ違う時は、その女の子も僕と同じ徒歩だった。
それが自転車に乗っていた。

(でも、それだけじゃないんだよな)

まだ、違和感が残っている。
自転車以外にも視覚的に何かが違うような気がしている。

「・・・あっ!そうか」

別の女の子とすれ違った瞬間、その違和感の理由が分かった。

(制服が違うんだ!)

その子の顔には見覚えがなくても、制服には見覚えがある。
さっきすれ違った女の子は、その逆だ。
顔に見覚えがあっても、制服には見覚えがない。

「・・・ということは・・・」

どうやら彼女は高校生になったようだ。

(No.270-2へ続く)

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