[No.265-2]菜の花
No.265-2
「今思えば、意味も無く摘んだことに罪悪感を感じるわね」
「大袈裟だけど・・・そうかもしれない」
いずれ花は枯れる。
けど、それを早めてしまった事実は残る。
「なんとなく、しんみりしちゃうわね」
「今度は、ちゃんと食べようね」
「しつこい!」
笑顔で友人を怒った。
でも、騒ぎながら歩く土手沿いの道がなぜか無性に楽しい。
春の陽気のせいか、それとも私たちの陽気のせいだろうか。
「食べる話しをするからお腹が空いてきたじゃない!」
「話をしなくても・・・でしょ?」
気付けば陽も大分、傾いている。
「軽く飲みに行かない?」
「珍しいわね」
何となく、今日は一杯行きたい気分だった。
しゃべり過ぎて喉が渇いたこともあるのだろうか。
「軽くと言わずに・・・行きますかぁ!」
居酒屋に到着した後も菜の花の話題は続いた。
「そもそも何で食べたとか、の話になったんだっけ?」
「さぁ・・・覚えてない」
・・・と言うより、思い出すのことが面倒に感じた。
「それより、食べるわよ!」
まずは目の前のお通しに口を付ける。
「美味しい!これ何のお浸しなのかな?」
(No.265完)
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