[No.265-1]菜の花
No.265-1
登場人物=牽引役(女性)
=相手(女性)
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「・・・で、食べたの?」
「ううん、食べてはいない」
どう処分したか正直、覚えていない。
ただ、食べてないことは確かだ。
「じゃあ、捨てちゃったんだ?」
「・・・そうなるわね」
GW中、友人と久しぶりに遊ぶ約束をした。
昼間からカラオケ三昧・・・のはずだった。
それが、成り行きで土手沿いの道を歩くことになった。
「別に食べなくてもいいじゃない?」
「そうだけど・・・なら、どうして摘んだの?」
答えを知りながら質問しているように感じる。
「子供の頃って、そんなものでしょ?」
確かにそうなんだ。
どうするわけでもなく、草花を摘む。
その行動に、特別な意味はない。
「同じように、“つくし”も摘んでたよ」
どちらも身近な春の草花だ。
「“つくし”は食・・・」
「だから、食べてないってぇ」
「ジョークよ、ジョーク」
毎年、どこかで見ているはずの菜の花たち。
それがかえって当たり前過ぎて、話題にすることがない。
「・・・改めて見ると、綺麗ね」
「でしょう?」
陽の光を存分に浴びた菜の花たち。
鮮やかな黄色が目に痛いほど輝いている。
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