[No.262-2]解けた氷
No.262-2
彼女がそうなったのは歴代の上司に問題があった。
問題と言っても、具体的に何かをしたわけではない。
もしろ、その逆だった。
「任されるのと、押し付けられるのは違う」
面倒な仕事は彼女に押し付ける。
・・・で、その成果はもちろん上司のものだ。
「組織だからそれが当たり前だけど、でも・・・」
「信頼関係だろ?」
優実(ゆうみ)が小さくうなづいた。
それに気付いてからは、彼女の仕事を理解しようと努めた。
同じ目線に立ち、時には指摘することもあった。
「誉められるより、嬉しかったのよ」
それから、彼女は変わった。
「辛かったろ?」
「・・・まあね」
さりげない返事が逆に重みを感じる。
「今はどんな風に見える?」
改めて言われると緊張する。
その笑顔が眩しすぎるからだ。
(No.262完)
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