[No.257-2]差し延べる手
No.257-2
「馴染んでないんだ・・・まだ」
「そうだと思うな」
元気がないと言うより、行動がどこかよそ行きだ。
彼女なりに気を遣っている・・・そんな風にも見える。
「そこまでよく観察してるわね」
「だって・・・私もそうだったから」
小学生の時に転校を経験した。
その時の私とよく似ている。
「でね・・そしたら、ひとりの女の子が戻ってきたの」
遠くからでも“一緒に行こ!”と言ってるのが分かる。
言葉は聞こえなくても、行動がそれを物語っている。
「彼女・・・嬉しかったと思うよ」
不安を抱えた毎日・・・だった。
「なんか、自分の話に摩り替わってるみたいよ」
「そ、そうね・・・気持ちが入りすぎちゃって」
そうなんだ・・・彼女は私自身でもある。
「きっと、一生の友達になれると思うな」
「そんなもんなのかな~?」
小学生だったかつての私に美月が手を差し延べてくれたように。
(No.257完)
| 固定リンク | 0
「(011)小説No.251~275」カテゴリの記事
- [No.275-2]何が見えるの?(2011.06.22)
- [No.275-1]何が見えるの?(2011.06.19)
- [No.274-2]気になる写真(2011.06.17)
- [No.274-1]気になる写真(2011.06.16)
- [No.273-2]傘の中(2011.06.14)
コメント