[No.255-2]個性
No.255-2
「ちょっと、汚いよ・・・」
慌てて彼に声を掛けた。
好き嫌いと衛生面は違うからだ。
「俺は気にならないけど?」
「私は気になるの!」
余りこだわると猫に限らず動物嫌いと思われかねない。
でも、それとこれとは話が違う。
「そんな顔でにらむなって・・・ちゃんと手を洗うから」
(・・・ほら・・・服とかにも毛玉が・・・)
つい、言ってしまいたくなる。
「じゃあ、またな」
私を気遣ってか、早々にその場を立ち去った。
「なぁ、そんなにたいしたことじゃないだろ?」
ようやくドライブが再開しても何となく、気が晴れない。
「・・・好きならペットショップに行けばいいじゃない・・・」
「あの猫が汚かったからか?」
それには答えなかった。
「・・・個性って知ってるか?」
「もちろん、知ってるわよ」
「あの猫は、あれが個性なんだ・・・大袈裟だけど」
私をジッと見る。
「人ってね・・・案外、そんな所に惹かれるものだよ」
(No.255完)
| 固定リンク | 0
「(011)小説No.251~275」カテゴリの記事
- [No.275-2]何が見えるの?(2011.06.22)
- [No.275-1]何が見えるの?(2011.06.19)
- [No.274-2]気になる写真(2011.06.17)
- [No.274-1]気になる写真(2011.06.16)
- [No.273-2]傘の中(2011.06.14)
コメント