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2011年4月

ホタル通信 No.070

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.172 一瞬の未来   
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

とある1枚の写真からこの話は誕生しました。写真は物理的には静止画を撮る道具ですが、心情的にはみずみずしい動画が撮れる道具でしょう。

写真に写るひとりの女性
静寂と言うよりも緊張と不安・・・敷居の高そうな雰囲気にやや圧倒されながらも、抱く期待の大きさについ体が反応したようなそんな一枚でした。
この写真を見た瞬間に、「これをテーマに小説を作りたい」と思ったほどでした。
シャッターを切った瞬間に見えていた映像と実際に撮影されたものはわずかでも違っているはず・・・この写真はそれを大いに物語っていました。

未来・・・などのテーマは、大人よりも学生が牽引役の方がなんとなく爽やかに感じると考え、登場するふたりは設定上、高校生にしています。
最大の見せ場である“何を未来として写し込ませたか”は後半を作っている最中に、自然とアイデアがわいてきました。
実話度は高くはありませんが、お気に入りの話のひとつです。それほど、その写真に魅せられました
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[No.261-2]最高の誉め言葉

No.261-2

「・・・そうね、同じ会社だし・・・あるよね!」

聞こえは悪いが、彼に特別な感情は持っていない。
仲の良い同僚・・・信頼できる同士のような存在だ。

「派手な喧嘩も良い思い出だろ?」
「もぉ!話を戻さないの」

それだけお互い仕事に真剣だった証拠でもあった。

「でも、嬉しかったな・・・」
「何だよ、急に」

何度か彼が私の味方に付いてくれた。
時には自分の意見を曲げてでも・・・。

「その時は、君の意見の方が正しいと思ったからな」
「へぇ~、好きなら好きと素直に言えばいいじゃない」

わざと話を飛躍させた。

「それは君のほうだろ?」

多少、色気のあるジョークも今なら自然に言える。

「また一緒に仕事をしたら、味方になってくれる?」
「・・・いや、逆かもな」
「敵ってこと?」
「ライバルだよ、ラ・イ・バ・ル」

私のことを認めてくれた彼の最高の褒め言葉だった。
No261
(No.261完)

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[No.261-1]最高の誉め言葉

No.261-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
-------------------------------
「私もそんなタイプ!」

飲み会の席で、仕事談義に花が咲くことがある。
本来は最も敬遠しなければならない話題だ。

「・・・そうだっけ?」

そんな風には見えない、と言った顔だ。

「もう、何年になるのよ・・・私たち」

この瞬間だけを捉えれば、恋人同士の会話にも聞こえる。

「・・・5年か・・・な?」

新設された部署に私達は配属された。
彼とは歳が同じゆえ、しばらく仕事の衝突が続いた。

「覚えてるか、あの時?」
「言わないの!」

派手な喧嘩も今となっては、お互いの糧となっている。

「寂しくなるな・・・」
「・・・うん」

自分でも分かるほど、しおらしい返事だった。

「また、どこかの部署で一緒に仕事したいな」

4月の定期異動で彼の転勤が決まった。
もちろん、彼女でも何でもない私は見送るだけの存在だ。

(No.261-2へ続く)

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[No.260-2]眼鏡の理由

No.260-2


「今日も・・・忘れた・・・の?」

友人が解せない顔をしている。

「うっかり・・・」
「でも、今日で4回目よ?」

目が悪い人にとっては、コンタクトは重要な存在だ。
だから“うっかりはないんじゃない?”そんな顔をしている。

「わざと・・・?」

眼鏡は確かに“わざ”と掛けている・・・必要だから。
でも、“わざ”とコンタクトを忘れたわけではない。
そもそも、コンタクトは嘘なのだから。

「・・・理由がありそうね」

思案していたことが、よほど顔に出たらしい。
直球を投げ込まれた。

「えっ!あっ!う、うん・・・」

この返事だけで、今までの話が嘘だということがわかっただろう。

「で、理由はなにさ?」
「偶然に・・・出逢わないかな?って・・・探してるの・・・」

この辺りは、元カレがよく来ていた場所だった。

「眼鏡がないと見つけられないから」

(No.260完)

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[No.260-1]眼鏡の理由

No.260-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-------------------------------
嘘を付き通せるのは、3、4回が限度だろう。

「どうしたの・・・その眼鏡?」
「オシャレでしょ!」

友人の言いたいことは分かっていた。
だから、ワザと望まない答えを一度返した。

「・・・そうじゃなくて、コンタクト忘れたの?」

今の反応も想定内だ。
既に“嘘”の答えは用意してある。

「うん・・・うっかりしちゃって・・・」

ただ、“うっかり”にも程はある。
これが続けば、さすがに友人でも疑いの目を向けてくるだろう。

「でも・・・コンタクトだったんだぁ?」
「知らなかった?」

目が悪いにもかかわらず、普段、私は眼鏡を掛けない。
時と場合によって眼鏡を掛けるようにしている。

「改めて聞いたことはなかったわよ」

目が悪くて、普段眼鏡を掛けていない。
だから、コンタクトだと・・・。
自分で言うのも変だが、友人の思い込みは十分に納得できる。

「珍しくもないでしょ?」

言葉とは裏腹に、コンタクトというのは全くの嘘だ。

(No.260-2へ続く)

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ホタル通信 No.069

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.108 約束の時間   
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性

前半の中ほどの「あれ?もう・・・」から「お待たせ」の間は回想シーンになっています。この当時は現在の「@」を挿入していない時期であり、読みにくくてすみません

実話度は高めで、ほぼ100%と言っても過言ではありませんが重要となるラストシーンを創作した関係で、80%に留めました。
由香は待ち合わせに遅れたことはなく、私より遅く到着することもありませんでした。
小説の通りですが時間に厳しい人、気を使える人・・・そんな印象を持っていました。由香に、ことの真相を尋ねた時、思わぬ答えに驚いたことを覚えています
極端に言えば特定の人に対する自己防衛であり、その習慣が誰に対しても出るようになったと思います。
ただ、自己防衛と言っても、好きな人に嫌われたくない・・・と言うより、居候の身である自分の立ち位置を理解した上での行動だったと言えます。

この話に登場している“由香”は、他の小説にも度々登場している“菜緒”そのものです。
今でも彼女と待ち合わせしていた場所を思い出します。その場所のひとつが、ホタル通信No.052で紹介した京阪電車 京橋駅です。
No069
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[No.259-2]彼女の人生

No.259-2

「卑怯な手?」

自分でも分かるほど態度を一変させた。
どうにでもなれ・・・投げやりな態度で接することが多くなった。
僕が去るんじゃない・・・君が去れ・・・と。

「ひどい話だろ?」
「そうね・・・」

彼女から別れ話を切り出すことを望んだ。
そして、それは現実となった。

「後悔・・・してるのね?」

してないと言えば嘘になる。
けど、それでも良かったとも思っている。

「彼女の人生に触れたかっただけなのかな・・・」

改めて声に出して、自分に問い掛けた。
もちろん、多華子(たかこ)にも聞こえるように。

「違うんじゃない?」
「本当は彼女の人生までも変えようと思ったはずよ」

それには答えられなかった。
それが、逆に事実だったからだ。

「灯りになれなくても・・・暗闇のままでも、いいじゃない!」

そう言うと多華子が、そっと僕の手を握る。

「これなら暗闇だって前に進める、例え灯りがなくても」

(No.259完)

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[No.259-1]彼女の人生

No.259-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------
「・・・結局、僕は逃げたんだ」

事実であっても、どこかで慰めて欲しい気持ちもあった。

「話したら?」

きっかけは、多華子(たかこ)の一言だった。
サバサバした性格の彼女は、元カノの話をしても寛大だった。
見せかけだけじゃなくて。

「・・・灯りになりたかったんだ」
「あかり?」

色々と問題を抱えていた彼女と知り合った。
深くかかわるうちに、それを解決してやろうと思った。
それが、いつの間にか愛情に変わった。

「そう・・・行き先を照らす灯りに・・・」

彼女の問題はかなり深刻だった。
“それであっても”という気持ちに当時、嘘はなかった。

「あなたらしいわね」
「でもな・・・」
「“僕じゃだめ”だと・・・?」

いつしか、非力な自分がいることに気付き始めた。

「あぁ・・・そう思うようになった」
「元々、あなたには関係がないことばかりでしょ?」
「でも・・・結局、僕は逃げたんだ」

実際は、もっと卑怯な手を使った。

(No.259-2へ続く)

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[No.258-2]続・ハズレの景品

No.258-2

「ふぅ~、ようやく片付いたわね」

改めて部屋の広さに驚く。

「こんなに広かったの?」
「そうみたいね」

ビフォーを知る咲(さき)も同感のようだった。

「本当なら私じゃないほうが良かったでしょ?」
「・・・正直、そうかもしれない」

彼とふたりで部屋を出ることだって有り得た。
そう望まなかったわけでもない。

「でも、ひとりになっちゃったからねぇ~」

自分でも意識して明るく振舞った。

「無理しちゃって」
「分かるぅ?」

ただ、ここまでが限界だった。
明るく振舞えば振舞うほど、涙が出そうになる。

「・・・ひとりじゃないよ」
「うん、今日来てくれてありがとう、咲・・・」
「・・・バカね、私じゃないわよ」

咲の言葉に一瞬、ご本人登場・・・のテレビ番組を思い出した。

「さすがに、それはないよ」
「・・・そうよね」
「ほら、それそれ!」

咲がポインセチアの鉢を指差す。
そうだ・・・彼との想い出が詰まったポインセチアと部屋を出よう。

(No.258完)

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[No.258-1]続・ハズレの景品

No.258-1 ハズレの景品

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-------------------------------
引越しすることにした。
理由は特にない・・・ただ、そんな心境だった。

「・・・いつなの?」
「来週」
「えっ!」

引越しと言えるほど大袈裟なものではない。
数百メートル先に良い物件を見つけた。

「もぉ・・・びっくりしたじゃない」
「どこか遠くに行くなら事前に言うよ」

咲(さき)とは英会話スク-ルで知り合った。
お互い勤め先は違う。

「転勤かと思ったよ」
「・・・想い出を・・・断ち切るため?」
「・・・ううん、元彼のことは関係ない」

最近、彼と別れた。
確かにそれが引き金になったことは否定しない。
けど、それを部屋ごと消し去ろうとは考えていない。

「お互い納得して別れたから」
「ふ~ん」

そんなことどうでもいい・・・そんな表情だ。
多分、私も他人のことならそうなる。
男女の別れに“納得”という言葉は綺麗すぎるからだ。

「まぁ・・・ひとり寂しく引越し、ということね」
「・・・咲、来てくれないの?」
「いいけど、ランチぐらいは考えてよね」

引越し当日はあっと言う間にやってきた。

(No.258-2へ続く)

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ホタル通信 No.068

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.146 月を恐れぬ女   
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

晴れや雨、そして風、嵐・・・自然現象は小説の素材としては心情を代弁してくれる秀逸な存在です。

加えて、海、空、そして星。形としてハッキリ存在するもの達も時には主役であったり、脇役であったり・・・。
この話は、雨上がりの夜、水たまりに映った月を見たのがきっかけでした。時より、風に吹かれて、ユラユラと月が揺れる様が何とも印象的でした。

それもあって、最初はロマンティックな話で展開しようかと考え書き始めたのですが、“満月の夜は何かが起こる!”的なノリで自然に筆が進んだため、その流れに乗ることにしました。
水たまりが、氷った水たまりになったのには、これらの理由があったからです

いつものように、ラストは考えずに“何となく”の雰囲気で飲み会帰りのふたりを会話させてみました。
・・・で、後半を書き始めた時にラストの展開を思い付き、前半に“三日月”の話題を伏線として追加しました。
手前味噌になりますが、適当に話を作った割には上手く着地したと思っています。

最後に“月を恐れぬ女”のモデルになった人が実在するのかしないのか・・・想像してみてくださいね
No068
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[No.257-2]差し延べる手

No.257-2

「馴染んでないんだ・・・まだ」
「そうだと思うな」

元気がないと言うより、行動がどこかよそ行きだ。
彼女なりに気を遣っている・・・そんな風にも見える。

「そこまでよく観察してるわね」
「だって・・・私もそうだったから」

小学生の時に転校を経験した。
その時の私とよく似ている。

「でね・・そしたら、ひとりの女の子が戻ってきたの」

遠くからでも“一緒に行こ!”と言ってるのが分かる。
言葉は聞こえなくても、行動がそれを物語っている。

「彼女・・・嬉しかったと思うよ」

不安を抱えた毎日・・・だった。

「なんか、自分の話に摩り替わってるみたいよ」
「そ、そうね・・・気持ちが入りすぎちゃって」

そうなんだ・・・彼女は私自身でもある。

「きっと、一生の友達になれると思うな」
「そんなもんなのかな~?」

小学生だったかつての私に美月が手を差し延べてくれたように。

(No.257完)

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[No.257-1]差し延べる手

No.257-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-------------------------------
差し延べられるもの・・・それは行動でも言葉でもいい。

美月(みずき)に今朝の出来事を話した。
いつも見ている光景が、今日は少し違ったからだ。

毎朝、小学生の集団に出逢う。
彼らは信号が変わると同時に、学校に向かって走り出す。
いつもと変わらず・・・。

「でもね、ひとりだけ歩いていた女の子がいたの」
「他の子は走っていたのに・・・ということね?」

いつもならひとり残らず、私の目の前を走り去る。
それだから、余計に残された女の子が目立った。
それに、スク-ル帽の色がやや違う。

「見慣れない顔?」
「顔までは覚えてないけど・・・」

何となく、違和感を感じた。

「違和感?」
「うん、輪に入れていないというか・・・」
「イジメ?」
「・・・そうじゃない」

そう・・・イジメとかじゃない・・・そう言い切れる。
なぜなら、その違和感を経験したことがあるからだ。

「多分、転校生・・・だと思う」

(No.257-2へ続く)

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[No.256-2]どじょうがこいに

No.256-2

「・・・じゃぁ・・・ね・・・母性本能!」

沈黙に堪らず、友人が口火を切った。
ただ、いつの間にか私は“母親”になってしまっている。

「そこまでは・・・気が早いんじゃない?」
「けど、もう表現のしようがない」

ふたり共、ボギャブラリが少ないだけなんだろうか。
それとも・・・・。

「これだけは言えるわね!」
「何がよ?」
「お互い恋愛経験は少ないってこと!」
「な、な・・・」

反論したい気持ちをグッとおさえた。
これが“私だけ”なら、もっと噛み付いていただろう。

「ねぇ、提案があるんだけど」
「ついでだから“魚”で考えてみない?」

ついで、という言葉が引っ掛かかるが、一応提案に乗ることにした。

「どじょうが鯉に、鯉が鮎に、鮎が・・・鮎が・・・」

友人が念仏のように唱え始めた。

「・・・あったぁ!」

友人が何か閃いたようだった。

「鮎が幻の魚の“イトウ”に・・・はどう?」
「愛(いと)おしい・・・か・・・うん、そんな気持ちかもしれない」

(No.256完)

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[No.256-1]どじょうがこいに

No.256-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-------------------------------
どじょうが鯉(こい)になり、やがて鮎(あゆ)になる。
気持ちの移り変わりを比喩したものだ。

「・・・聞いたことがある」
「同情が恋に、やがて愛に変わる・・・だったよね?」

誰が言い出したのか、どこで聞いたのか分からない。
ただ、なぜか知っている。

「座布団一枚!って感じよね」
「まぁ・・・確かに上手いけど」

例え話としては、上手くまとまっているだろう。
魚のグレードも気持ちに応じて上がっているとも言える。

「それより、聞いて欲しいことがあるんじゃない?」
「う、うん・・・」

こんな話をすれば、鈍感な友人も気付くはずだと考えた。

「・・・で、どじょうが鯉に?それとも鯉が鮎に?」

あえて魚の話で聞いてきた。
聞いて欲しいのはやまやまだが、ややこしくなりそうでもある。

「それが・・・ね、どれとも違うの」

確かに最初は同情だった。
それがやがて恋になり愛になって、それから・・・。
そう・・・その先の気持ちが芽生えてきた。

「その気持ちがわからなくて・・・」
「でも・・・私に聞かないでよ」

しばらく、沈黙が続いた。

(No.256-2へ続く)

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ホタル通信 No.067

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.121 あなたを待つもの
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性

メールのやり取りを除けば、シチュエーション的には、ほぼ事実です。実際、夜遅い時間に彼女とバッタリ・・・

メールのやり取りは、ほぼ事実ではないのですが、『ご主人さま・・・』の下りだけは事実です。多少、表現は変えていますがこのようなメールが届きました。
実はこの時に“自転車が”主語になっており、現実にはそんな色気のある話ではありませんでした。
ただ、彼女の照れ隠しであったのかも・・・という図々しい考えも無かったとは言いません。

自転車というキーワードを隠すことで、色気のある話に変化することは作成当初からの狙いであり、オチもわりと綺麗に付けられたような気がしています。
冬のホタルでは、あくまでも日常からテーマを拾い、特に経験から生み出される話がほとんどです。

この話に登場する同僚の女性は、他の小説にも何度か登場しています。
案外、小説のネタになりそうな話題を提供・・・と言いますか、話題を共有することが多かったために、リアルに再現することが可能でした。

最後に余談ですが、その女性だけに書いた未発表の小説もあり、クリスマスに贈ったことがあります。
サンタクロースが登場する、ちょっとSFチックな超短編なので冬のホタル的にはNGです。
・・・が、それを除いては実話度が高いため、機会があれば発表することも考えています。
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[No.255-2]個性

No.255-2

「ちょっと、汚いよ・・・」

慌てて彼に声を掛けた。
好き嫌いと衛生面は違うからだ。

「俺は気にならないけど?」
「私は気になるの!」

余りこだわると猫に限らず動物嫌いと思われかねない。
でも、それとこれとは話が違う。

「そんな顔でにらむなって・・・ちゃんと手を洗うから」

(・・・ほら・・・服とかにも毛玉が・・・)

つい、言ってしまいたくなる。

「じゃあ、またな」

私を気遣ってか、早々にその場を立ち去った。

「なぁ、そんなにたいしたことじゃないだろ?」

ようやくドライブが再開しても何となく、気が晴れない。

「・・・好きならペットショップに行けばいいじゃない・・・」
「あの猫が汚かったからか?」

それには答えなかった。

「・・・個性って知ってるか?」
「もちろん、知ってるわよ」
「あの猫は、あれが個性なんだ・・・大袈裟だけど」

私をジッと見る。

「人ってね・・・案外、そんな所に惹かれるものだよ」

(No.255完)

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[No.255-1]個性

No.255-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
-------------------------------
「あれ・・・何してるのかな?」

ドライブ中に立ち寄ったパーキングエリアでの出逢いだった。

「どうした?」
「ほら、あの猫・・・」

食堂脇に一匹の猫が座っている。
シチュエーション的に、“出待ち”していると思われる。

「実家で飼っていた猫と同じだ」
「・・・そうなの?初めて聞いた・・・」

今まで猫の話題が出なかったとは思えない。
けど、そこまでの話はしていない可能性もある。

「何か問題でも?」
「そうじゃないけど・・・」

意外な場所、意外な出逢いで、意外な事実を知った。
そうこう話をしているうちに、猫にすり寄っていたからだ。

「好きだったの・・・猫?」
「嫌いか?」

好き嫌いじゃなくて、知らなかったことが心に引っ掛かった。

(言ってくれても・・・)

私の気持ちを察するわけでもなく、彼は猫とじゃれ付いている。

「かわいいぞ」

別にかわいくないとは思っていない。

(・・・ん?やだぁ・・・)

気付けば猫の顔は目やにで、やけに汚れていた。

(No.255-2へ続く)

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[No.254-2]できる男

No.254-2

「ふ~ん、まぁ・・・そんなこともあるんじゃない?」

貴代美(きよみ)が一応の同意を見せた。

「当時、若かったし・・・それに」
「それに?」
「どうしていいか、分からなかった」

当時、好きになった女性がいた。
一応、友達以上の関係はあった。

「でもな・・・彼女の気持ちがつかめなくて」

微妙な関係にその内、不安や焦りを感じ始めた。
そんな時、偶然そのサイトを見つけた。

「相手がしびれを切らしてもう一度メールが来たら・・・」
「・・・あなたの勝ち!みたいなことね」

貴代美の言う通りだった。
好きな人のことなら四六時中、考えている。
だから、メールの返事を待ち侘びている・・・と。

「それで・・・試したの?」
「・・・だから、今、貴代美と付き合ってるだろ?」

今思えば、返事を返さなかったのが別れた原因ではない。
言うなれば、その引き金を引いたようなものだった。

「僕に“できる男”は無理みたいだよ」
「そうみたいね」

言葉とは裏腹に、やけに貴代美の表情がやさしい。

「でも、“できる男”が“モテる男”って書いてなかったでしょ?」

(No.254完)

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