[No.249-1]汽笛
No.249-1
登場人物=牽引役(女性)
=相手(女性)
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3月になると思い出すことがある。
「汽笛・・・って、あの?」
つい、「どの?」と聞き返してしまいたい衝動に駆られる。
「多分、その汽笛」
但し、どの乗り物かは言っておく必要がある。
「・・・列車のね」
駅のホームで聞こえる独特の甲高い音。
ドラマや映画でも、よく効果音として使われている。
どちらかと言えば悲しい場面が多い。
別れのシーンを象徴するかのような音とも言える。
「貴子って、鉄ちゃんだった?」
「違うわよ!汽笛だけで随分、話を広げたわね」
今から10年前の3月・・・社会人生活をスタートさせた。
就職先が地元ではなかったため、同時に寮生活も始まった。
何もかも不安だらけの船出だった。
「船出?・・・さっき、列車って言ったよね?」
「それはことばのあや!」
そんな時、汽笛を聞いた。
「駅のホームで彼と別れた?」
さっきまでのボケぶりから、一変して鋭い質問を投げてきた。
「でも・・・違う、そんな色気のある話じゃないの」
確かに汽笛を聞いた・・・ある場所で。
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