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[No.246-2]大人な私

No.246-2

お世辞抜きに、同世代と比べて気遣いもできている。
それに、話す内容も的を得ている。
ただ、それが大人な対応であるかは別だ。

「無理してないか?」

それには答えず、僕をじっと見つめる。

「もう、無理するなよ」

彼女が見せる“大人”は、僕には強がりとしか見えない。
でも、見栄を張るためではない。
言うなれば、生きるために必要だった。

「無理なんかしてへん!」

そもそも周囲が彼女を大人にした。
けど、それと引き換えに多くのものを失った。
あるところは大人でも、あるところは子供のままだ。

「うちは、大人や!」
「みんなが子供でうちは大人や!」

そう言うと、大声で泣き出した。
・・・が、すぐに何かを思い出したように、ピタリと止まった。

「・・・うちも子供のときがあるわ」

ようやく冷静になってくれたらしい。

「だろ?今だって子供のように泣きじゃくってたもんな」
「まぁ、あんたの前だけやけどな」

それからは僕の前だけは子供に戻った。

(No.246完)

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