[No.245-2]四次元の世界
No.245-2
「トンネルを抜けたら、怖いじゃない!」
「あくまでも、テレビの中の話だよ」
怖がる朋美(ともみ)をなだめる。
でも・・・。
「なんだよ・・・その疑わしい顔?」
「・・・ようやく分かったの、あの時の行動が」
「あの時?」
「トンネルは“きっかけのひとつ”なんだよね?」
朋美が“あの時”を話し始めた。
「ゲートとか・・・避けてたよね?明らかに」
「そ、そうだっけ?」
とぼけてみても、多分バレているだろう。
確かに、何らかをくぐる必要がある場合、それを避けていた。
「何度も・・・タバコ買いに行くって言うから、変だと思ってた」
「ビビッてたんでしょ?」
「い、いうなよ・・・」
当時、子供心に四次元の世界は恐怖の対象であった。
もし、迷い込んでしまったら・・・。
僕のことを知らない人達の世界に入ってしまったら・・・。
「そう思うだろ?」
「さっきまでは怖かったけど、今はそうでもない」
「このままふたりで、四次元の世界に入ってもいいと思うくらいよ」
朋美の発言をどう捉えてよいのか迷った。
そうなると本心を聞かないわけには行かない。
「誰も僕達を知らないんだよ?」
「だ・か・ら、いいの」
(No.245完)
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