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2011年3月

[No.254-1]できる男

No.254-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------
昭和風に言えば、“How to”ものだ。
ただ、素直にそれを信じれば良いというものではない。

「・・・“すぐに返事は返さない”・・・か」

思い当たる節がある。
それも、その逆の事実に・・・だ。

携帯サイトを適当に開いているときだった。
何やら気になるサイトを見つけた。

“できる男はこうする!”

例えば、彼女からメールが来たとしよう。
僕の場合、可能な限りすぐに返信する。
早く返信することに、特に何の拘りも持ってはいない。
・・・と言うより、あえて遅くする理由がないからだ。

「そんなものなのかな?」

でも、確かにこんな経験があった。

以前、送ったメールにすぐ返信が来なかったことがあった。
返信を待つ間の何とも言えない不安・・・。
いや・・・不安と言うより、自分に興味がないように感じる。

(好きならメールを心待ちにしてるはずだし・・・)

そんな思い込みもあった。
意地悪言えば、相手をジラしている。
考えようによっては恋の駆け引きとも言えなくもない。
それが意図的であれば・・・。

「だから、それが“できる男”か・・・」

この時は、ワラにもすがりたい気持ちがあったのかもしれない。

(No.254-2へ続く)

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ホタル通信 No.066

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.014 ケーキの伝言 
実話度:☆☆☆☆☆(0%)
語り手:女性

まだ、小説の方向性が定まっていない初期の作品で、明らかに何かを狙った作りになっています。

実話度0%でも何らかのきっかけを持っていますが、この話についてはそれもよく覚えていません。
おそらく、ショートショート風の作品を作ろうとしていたとは思いますが、前半を“夢”にしたことで、現在のブログのテーマを偶然にも辛うじて保つことができています。

前述通り、きっかけは覚えていませんが、前半を流れに任せて作り進めた後、後半を作ったことは記憶しています。
私の小説の作り方は何度か紹介していますが、オチを先に考えることはまずありません。
この話の前半を、“それっぽく”作りましたが、これをどう展開させるかは考えていませんでした。
その状態で後半を作っていると食欲の秋のキーワードを思い付き、前半に手を加えました。
「なぜ、秋を当てることができたか」に主軸が置き、もう一度全体のバランスを整えた記憶があります。

今、改めて読み返してみると、現在のブログのテーマに通じるものが既に息づいています
後半、ストレスの話で一旦暗いムードになりますが、最後は明るく締めくくっています。この手法は今でも続けています。
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[No.253-2]後ろ姿

No.253-2

『どんなポーズがいいかなぁ~』

独り言のような問い掛けられているような・・・そんなメールが来た。

『そんな大袈裟じゃなくていいよ』

普通に写してくれるだけでいい。

『恥ずかしがり屋やし』

別に大胆なポーズを期待しているわけでもない。
でも・・・なぜか昨日と違って消極的だ。

『じゃ、後ろ姿でも』

後ろ姿だけなら、顔が写る心配もない。
それなら恥ずかしがる必要もないだろう。

『後ろ姿?・・・そやね!じゃ、ちょっと待ってな』

どんな写メが来るのか、つい期待してしまう。
イマドキ珍しい黒髪は後姿こそ栄えるだろう。
言うなれば見返り美人・・・まぁ、見返らなくても美人だが・・・。

『写したよ』

短い言葉と共に、写メが添付されてきた。

「どれどれ・・・」

そこには黒髪には程遠い茶髪のアイツが写っていた。
No253
(No.253完)

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[No.253-1]後ろ姿

No.253-1  [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------
親しき仲にも・・・言い出しにくいことがある。

「なぁ・・・プリクラとか興味ないの?」
「なんでなん?」

本当は俺が知らないだけかも知れない。
友達同士で行っている可能性もある。

「うん・・・なんとなく、そんな話も出ないし」
「そうかな~?」

別にプリクラを菜緒と撮りたいわけではない。
・・・いや、本当は撮りたい。
贅沢は言わない・・・せめて写メでも。

「そのぉ・・・なんだぁ・・・ふたりで・・・」
「ふたり?」
「い、いやぁ・・・ひとりでもいいけどぉ」

よく考えればふたりどころか、菜緒の写真さえ持っていない。
ふたりの前に、菜緒ひとりの写真も欲しいところだ。

「ひとりでええの?」
「あ、うん・・・まずは」

写されるのを嫌う人もいる。
イマドキの女の子でも人それぞれだし・・・。

「遠慮せんでもええのに」

今まで流れからすれば意外な反応だった。

(No.253-2へ続く)

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[No.252-2]ひざのぬくもり

No.252-2

「それにしても気持ち良さそうね」

股座の猫は、お構い無しに気持ちよく寝ている。
気のせいか、寝息さえ聞こえてくる。

「よっぽど気に入ったんじゃない?」
「おいおい・・・」

でも、この体勢を崩すことを“申し訳ない”と感じ始めた。
それだけ、気持ちよさそうな寝顔をしている。

「・・・もう少しだけ寝かせてやるか」
「そうしてあげて」

猫の体温・・・温もりが伝わってくる。
それに“ポワン”とした何とも言えない心地よい匂いも・・・。

「・・・やっぱり、どいてもらう」
「大丈夫だよ、迷惑じゃないから」

別に、ひっかかれる訳でもなく、単に寝ているだけだ。

「だめ!どいてもらう!」

眞理子(まりこ)の口調がいつになく強い。
・・・と同時に、猫を抱きかかえ、ソファーへ移動させた。

「どうしたんだよ?」
「余りにも気持ちよさそうだったから」

“だったらなぜ?”と言いたくもなる。

「今度は・・・私の番なの」
No252

(No.252完)

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[No.252-1]ひざのぬくもり

No.252-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------
「あっ!」
「あれ?ごめん、ごめん」

今回で何回目だろうか、こんなことが起こるのは・・・。

「こら!あっちに行ってなさい」

いくら飼い猫とは言え、犬ほど忠誠心はないだろう。
眞理子(まりこ)の命令も耳に入っていないようだった。

「い、いいよ・・・慣れてるから」
「あら、そう?」

男座りと言えばいいのだろうか。
足を崩して座っていると、そのくぼみに猫が入ってくる。
それも、上手に僕の足を避けて・・・。
だから、案外、気付くのが遅れる。

「好かれている証拠じゃない!」

確かに嫌われるよりはマシだ。

「うちの猫、他人には結構厳しいのよ」
「で、でもな・・・」
「不服?」

動物に好かれることは決してマイナスではない。
女性受けもいいはずだ。

「ほどほどじゃないと、逆にいい人ぶってる・・・って思われる」
「贅沢ね~」

出来れば動物ではなく、女性に好かれたいのが本音だ。

(No.252-2へ続く)

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ホタル通信 No.065

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.013 バナナ入れ 
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:?

かなり初期の作品で、今見ても恥ずかしい限りの出来栄えですが、がむしゃらな“勢い”だけでも感じて頂ければ幸いです。

話の主軸である、バナナ入れ
それをブログで公開していたこと・・・これらについてはほぼ実話です。
ただ、ラスト部分に“私が問い掛けられる”シーンがありますがこれは事実ではありません。

この話・・・変り種の話ではありますが、もうひとつ大きな特徴があります。
読んで頂けると分かりますが、当ブログの管理人“ホタル”が(多分)最初で最後の登場をしています
この小説を発表した頃、ホタル通信はまだスタートしていませんでした。
従って、実話度などを公表する予定もなかったわけですから、それを意識せず、事実を淡々と書いていました。小説に登場ホタルは管理人本人です。
でも、奇跡的に男性か女性か分かりません(笑)そもそもホタルという名は、それも意識して生まれました。

さて、小説に少し触れておきます。
今でも、“たかがバナナ入れ”の話で、とても盛り上がったことを覚えています
わざわざ色々な形のバナナを試しに入れてみる・・・ただそれだけなのに、幸せな気持ちになれました。
最後にですが、登場する愛子は、“せいじゅうろうシリーズ”に登場する“菜緒”と同一人物です。
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[No.251-2]恐怖の日曜日

No.251-2

「寝込んだ初日が日曜日だったの」
「数日間寝込んだ・・・だったよな?」

言う通りだ。
月曜日も、火曜日も同じ環境で寝込んでいた。
でも、あることが違った。

「ある・・・こと?」
「そう・・・それが怖かったの」

日曜日は朝から静かだった。
草木がこすれる音は、それが風の音だとわかるくらいだ。
でも、しばらくすると・・・。

「近所の友達とかの声が聞こえだしたの」

まどろみの中で、子供のはしゃぐ声が聞こえる。
近いような、遠いような・・・距離感がつかめない。

「・・・それが恐怖・・・?」
「そうよ」

彼がもう一度、キョトンとした顔をする。
恐らく誰もがこんな反応を示すだろう。

だからこそ、納得させられる説明も理由もない。

「今でも、時々似たようなシュツエーションがあるわ」

大人になっても、その感覚が残っている。
さすがに怖くはないものの、独特の違和感は感じる。

「ねっ、意味不明な話でしょ?」
「そうだな・・・でも、試してみる価値はあるな・・・隣に寝ていい?」
「となり?隣・・・!?」
「もぉ!知らない!」
No251
(No.251完)

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[No.251-1]恐怖の日曜日

No.251-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
-------------------------------
「どうして?」と言われても、納得させられる説明は無理だ。
世の中、そんなこともあると片付けて欲しい。

「恐怖の日曜日?」

彼がキョトンとした顔をする。

「夏に向けて最新のホラー映画か?」

予想していた通りの反応だった。
彼じゃなくても、そのあたりの答えが返ってくるだろう。

「私の日曜日の話なんだけど・・・」

子供の頃、ある感覚を持った。
なぜ、今更そんなことを話すのか、自分でもよく分からない。

「感覚・・・?」
「うん・・・感覚という言葉もシックリ来ないんだけど」

多分、小学1、2年生の頃だったと思う・・・。
風邪か何かの病気で数日寝込んだことがあった。

薄暗い室内・・・。
閉め切ったカーテンの隙間から、外の明かりが漏れていた。

「・・・全然、ホラーっぽくないけど?」
「だから・・・誰もホラーだって言ってない!」

その時、室内に違和感を感じた。
今ならそれが、まどろみだと分かる。
起きているような寝ているような・・・変な感覚だった。

「話はそれるけど、日曜日とはどんな関係が?」

それるどころか、それが話の要だ。

(No.251-2へ続く)

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[No.250-2]寂しげな雪だるま

No.250-2

「その彼とは?」
「雪だるまと同じように、春になったら溶けちゃったみたい」

はっきり、“別れた”と言っても何も問題はない。
それなのに、何となく綺麗にまとめてしまった。

「そうなることを予感してたのかな」
「どうして?」
「その雪だるま・・・どこか寂しげに見えたの」

私の心境がそう見させたのかどうかは分からない。
その時は、そう感じた。

「あの雪だるまと同じ」

さっきみつけた雪だるまも、どこか寂しげに見える。
理由は昔も今も分からない。

「・・・私は分かるわよ」

そう言うと、その雪だるまの所に走り出した。

「ちょ・・・ちょっと!・・・何するの?」
「まぁ、見てて!」

数分後には、その雪だるまの隣にもう一体雪だるまが並んだ。

「これなら、どうよ!」
「あの時は雪が少なかったからよ」

本来、並ぶべき雪だるまがあったはずだ。
仕方ない・・・そう結論付けるとしよう。

(No.250完)

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[No.250-1]寂しげな雪だるま

No.250-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-------------------------------
「どうしたの?ボケッとして・・・」
「・・・うん・・・ほら、あれ見て」

昨日から降り出した雪も朝にはすっかり止んでいた。
何年振りかのまとまった雪ともなると・・・。

「あっ、かわいぃ!」

辺りを見渡せば予想通り、いくつか雪だるまが立っている。
どれも子供たちが作ったのだろう。
思い思いの姿は、大人じゃそうはいかない。

「雪が降ると、どうしても作っちゃうよね!」
「・・・どうしたの、浮かない顔よ?」

友人のはしゃぎっぷりに、どう反応して良いか迷っていた。
さっき見つけた小さな雪だるま・・・。
昔、彼が作ってくれたのを思い出した。

「・・・そうなんだ」
「つらい思い出?」
「う、うん・・・そんなんじゃないけど」

当時付き合っていた彼が旅先の北海道からメールをくれた。
偶然にも初雪に遭遇したようだった。
でも、雪は気持ち程度しか振らなかったらしい。
写メで送られてきた雪だるまがそれを物語っていた。

「必死でかき集めたんじゃないかな」

決して純白・・・とは言いがたいものだった。
けど、その気持ちが嬉しかった。

(No.250-2へ続く)

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ホタル通信 No.064

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.054 デジャブ 
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性   

手前味噌で恐縮ですが、“冬のホタル”らしい作品です。初期の作品に見られた、ちょっと物悲しさが漂っています。

前半はほぼ事実ですが、後半に繋がる“実家跡に行くこと”については創作です。従って、後半はほぼ事実ではありません。
ですが、“行こう”としていたのは事実で、それが叶わなかったということになります。

由貴が小さい頃の話をする時、決まって出てくる実家。
でも、楽しかった想い出が語られることは決してありませんでした。
詳しくは書けませんが、それこそ今でいうワンルームに、親子3人、それも年頃の女子ともなれば、その心境は聞かずとも察することができます。
加えて例の大震災が発生。家を失い、両親こそ健在でしたが、大勢の尊い命が消えるのを目の当たりにした現実。
過ぎたこととは言え、掛ける言葉が見つからなかったことを今でも覚えています。

後半は前述通り創作です。
もし、彼女と出掛けていたら・・・との想いを形にしています。この話の雰囲気ほど、由貴は暗い過去とは思っていないようでした
小説に書いた通り、悲しむわけでもなく、笑い飛ばすこともなく冷静に振り返っていたことが印象的でした。

これらの経験が衣食住の特に“住”へ執着を持つようになって行きました。
その執着をヒントにした話も書いています。直接的ではないかもしれませが・・・探してみてください
No064
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[No.249-2]汽笛

No.249-2

「ある場所?駅の近くなら、どこでも聞こえそうだけど」
「そうだけど・・・」

駅の近くではなくても、聞こえると言えば聞こえる。

「その時の姿勢というか・・・」
「姿勢?」

多分、あることを考えているだろう。
私がどんなアクロバティックな姿勢で汽笛を聞いているかを。

「それじゃないわよ」
「ん?違うの?」
「どうせ、とんでもないこと考えてたんでしょ!」

どうやら図星のようだった。

「姿勢って言うから・・・」
「まぁ・・・言い方も良くなかったけど」

とにかく、汽笛を聞いた。
ある場所、ある姿勢で・・・。

「話からすれば・・・寮・・・で?」
「そう、場所は合ってる」

会社の独身寮は駅のすぐそばにある。
そして、私は汽笛を聞いた。
布団に包まりながら・・・。

「・・・なんとなく分かる気がする・・・」

あの汽笛は、私にとって不安や寂しさの象徴だった。

「私はね・・・トイレだったんだ」

(No.249完)

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[No.249-1]汽笛

No.249-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-------------------------------
3月になると思い出すことがある。

「汽笛・・・って、あの?」

つい、「どの?」と聞き返してしまいたい衝動に駆られる。

「多分、その汽笛」

但し、どの乗り物かは言っておく必要がある。

「・・・列車のね」

駅のホームで聞こえる独特の甲高い音。
ドラマや映画でも、よく効果音として使われている。
どちらかと言えば悲しい場面が多い。

別れのシーンを象徴するかのような音とも言える。

「貴子って、鉄ちゃんだった?」
「違うわよ!汽笛だけで随分、話を広げたわね」

今から10年前の3月・・・社会人生活をスタートさせた。
就職先が地元ではなかったため、同時に寮生活も始まった。
何もかも不安だらけの船出だった。

「船出?・・・さっき、列車って言ったよね?」
「それはことばのあや!」

そんな時、汽笛を聞いた。

「駅のホームで彼と別れた?」

さっきまでのボケぶりから、一変して鋭い質問を投げてきた。

「でも・・・違う、そんな色気のある話じゃないの」

確かに汽笛を聞いた・・・ある場所で。

(No.249-2へ続く)

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[No.248-2]未来日記

No.248-2

「未来日記は嫌い?」
「ううん、そうじゃなくてユニークだと思ってる」

一般的には、現実に起きたことの方が記事にしやすい。
それが“起こる前”だと、想像力も必要になる。
それにウソの記事になってしまうこともあるだろう。

「でも、すごいでしょ?」
「なにが?」
「的中率!」

予測可能とは言え、書いたことがそのまま現実になっている。
並みの預言者も真っ青の的中率だ。

「100%・・・と言っても過言じゃないだろうな」
「でしょ!」
「今日のデートも・・・ほら未来日記通りじゃない!」

麻衣(まい)の声のト-ンが一段上がる。
待ち合わせ場所、ランチの店、そして頼んだメニュー・・・・。
全て未来日記に書かれていたことだ。
麻衣だけでなく、僕の言動も・・・。

「映画、何見る?」
「そうだなぁ・・・ほら・・・話題のアクション映画なんてどう?」
「それも書いてあった通りぃ!」

それからも日記通りの展開が続いた。
日記によれば、そろそろデートが終了する。
そして、次の言葉で締めくくられていた。

    『彼がプロポーズしてくれる』

「ねぇ、この場所・・・」
「あぁ、日記上、プロポーズされる場所だろ?」

そう・・・僕は未来日記の彼、そのものだ。
だから、その通りに行動すれば100%的中するのは当たり前だ。

「結婚して欲しい」

僕は麻衣にプロポーズした・・・指輪を渡すと共に。
その時、初めて未来日記がハズれた。
No248
(No.248完)

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[No.248-1]未来日記

No.248-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------

タイムカプセルに託すほど未来の日記ではない。
数時間・・・数日後には現実がやってくる。

「最近、更新多くない?」
「だって・・・書きたいことがいっぱいあるの」

麻衣(まい)のブログが頻繁に更新されている。
それ自体は大歓迎だ。
ただ、たまにこんなことが起こる。

「コメント書いてたら、更新メールが来た」

ブログが更新されると、それを知らせるメールが届く。

だいたい僕は夜中に麻衣のブログにコメントを付ける。
そのせいか、その最中に午前0時を過ぎることも多い。

「迷惑?」
「迷惑になるなら届かないようにすればいいだろ?」

迷惑どころか、更新を心待ちにしている。

「昨日に夜、更新したろ?」
「そうだよ」
「その数時間後・・・今日になったら、メールが来た」
「あー!やっちゃったぁ~」

投稿する時間指定を間違ったらしい。
昼の1時と夜中の1時とを・・・。

「ごめん・・・」
「あっ!そうな意味じゃなくて」

更新も間違いも全然OKだ。

「ほら、内容が・・・未来日記って書いてあっただろ?」

時々、内容に“未来日記”という言葉が登場する。
予定していること、そうなるであろうことが書かれている。
記事が投稿された時点では、まだ未遂なのだ。
だから、未来日記だと・・・。

でも、この未来日記にはある秘密がある。

(No.248-2へ続く)

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ホタル通信 No.063

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.188 ブルーメの丘 
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性
   

全体的に小説風の脚色を施していますが、会話や流れについては、ほぼ実話です。
但し、実話度100%のお決まりで、人物像や性別は事実ではないかもしれません。

この話は、「No.089 遠い喫茶店」に出てきた一言から、生まれました
     「そやね!ブルーメの丘に行きたいんよぉ」
このセリフが事実であったからこそ、今回の話も生まれたのですが、印象深い場所だっただけに、「ブルーメの丘」で話を作ろうと考えました。
でも、印象深い・・・というのもおかしいですよね?
ラストに書いた通り、ふたりとも一度も行ったことがなく、そしてふたりで行くことも実現しなかったわけですから(笑)
ほぼ100%実話ですから、内容をそのまま感じていただければ幸いです。ですから、今回はその他の話との関係を少し書かせて頂きますね

まずは「No.244 ニアミス」。
この話で待ち合わせ場所が変更になることを書いていますが、その変更後の場所で、後半「No.188-2」がスタートします。
前述した「No.089 遠い喫茶店」。
この話の想いは「ホタル通信 No.031」で書いてある通りですが近場が駄目なら遠くの場所で・・・の象徴として「ブルーメの丘」を登場させました。

冬のホタルの登場人物は、人物設定等、基本的にバラバラでせいじゅうろうシリーズ以外、見た目上の同一人物は存在していません。
でも、実際は両手で数えられる牽引役の方々で成り立っているため、実は同じ牽引役・・・という話で溢れています。
関西弁ベースの話であっても、微妙に牽引役が違うのが分かりますか
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[No.247-2]BGM

No.247-2

「ふ~ん・・・ズバリ!失恋した・・・違う?」
「・・・違う」

やせ我慢でも何でもない。
今の私は、失恋のしようがないからだ。

「ただ、その曲を聴きたいと思っただけ」

なぜ、その曲を選んだのかは分からない。
心境なんてそんなものだ。

「だったら、やっぱり服と同じだよ」

さっき広がらなかった話にもう一度戻った。

「じゃあ、さぁ・・・今日、どうしてこの服を選んだの?」
「そ、それは・・・」

恋人も意中の男性も今は居ない。
だから、異性の目を気にすることもないが・・・。

「特に理由はないけど」

さすがに前の日と同じだと、あらぬウワサが広まる。

「あなたの場合は、広がったほうがいいけどね」
「言わないの!」

服の話と曲の話が入り乱れて混乱し始めた。

「私は意中の男性の目を気にしてるわよ」
「そう?じゃ、朋子(ともこ)にはこの曲を贈るわ」

もう一度、朋子の耳にヘッドホンを押し付ける。

「これ、さっきの曲じゃないの!」
No247

(No.247完)

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[No.247-1]BGM

No.247-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-------------------------------
自分の好きな曲のみセレクトしている。
そのせいか、バラエティに富んだ選曲とは言えない。
でも・・・。

「不思議なんだよね」
「なにがさ?」

好きな曲を集めても、日によって聴きたい曲が変わる。

「毎日、同じ服で通勤しないのと同じ」

朋子(ともこ)が、もっともらしいことをいった。
聞いた瞬間だけ・・・だが。

「同じ曲ばかり聞いてるから“飽きた”とかじゃなくて」

そう・・・聞き飽きたのではない。
自分のことなのに理由が上手く説明できない。

「日によって心境が違うでしょ?」

ようやく、マシな答えを聞いた。
確かに毎日何かしら起こる。
小さなことから大きなことまで・・・。

「その時々で自分に必要な曲があるんじゃない?」
「・・・言うなれば、BGMね!」

ドラマではシーンによって様々な曲が流れる。
それだけで、何でもないシーンが“らしく”見える。

「・・・で、今朝の曲は?」

朋子の耳にヘッドホンを押し付けた。

(No.247-2へ続く)

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[No.246-2]大人な私

No.246-2

お世辞抜きに、同世代と比べて気遣いもできている。
それに、話す内容も的を得ている。
ただ、それが大人な対応であるかは別だ。

「無理してないか?」

それには答えず、僕をじっと見つめる。

「もう、無理するなよ」

彼女が見せる“大人”は、僕には強がりとしか見えない。
でも、見栄を張るためではない。
言うなれば、生きるために必要だった。

「無理なんかしてへん!」

そもそも周囲が彼女を大人にした。
けど、それと引き換えに多くのものを失った。
あるところは大人でも、あるところは子供のままだ。

「うちは、大人や!」
「みんなが子供でうちは大人や!」

そう言うと、大声で泣き出した。
・・・が、すぐに何かを思い出したように、ピタリと止まった。

「・・・うちも子供のときがあるわ」

ようやく冷静になってくれたらしい。

「だろ?今だって子供のように泣きじゃくってたもんな」
「まぁ、あんたの前だけやけどな」

それからは僕の前だけは子供に戻った。

(No.246完)

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[No.246-1]大人な私

No.246-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------
彼女は多分、気づいていない。
“自分の方”が、そうだと言うことを・・・。

「普通、そうやろ?」

奈海(なみ)が怪訝そうな顔をする。

「・・・そうだな」

同意の返事ではなく、否定できなかったのが本音だ。

「“ありがとう”とか言うやん!」

奈海がいうことも分からなくもない。
感謝されることを目的としてなくても、礼儀は必要だ。
一言、ありがとうで済む。

「言いそびれたとか、照れもあるんじゃない?」
「せやかて、常識やろ?」

訳があり、奈海は高校生の時にひとり暮らしを始めた。

その経験が彼女を大人にした。
礼儀とかに拘る理由は、そんな所にあるのだろう。

ただ、それがクラスで孤立する原因のひとつでもあった。

「とにかく、そんな人、嫌いやねん!」
「まぁ、そんな人も居るって・・・あまり気にするなよ」

社会人とは言え、二十歳そこそこには難しいのも現実だ。
まだまだ学生気分が抜けきっていないだろうし・・・。

「でも、もう子供とちがうやろ?」

ある意味、一番返事に困る問い掛けだった。

(No.246-2へ続く)

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ホタル通信 No.062

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.152 偶然の再会 
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

前回の「ホタル通信No.061」に登場した喫茶店が話の主軸になっています。

大阪のとある地下街で小説と同じように、ちょっと迷子になったことがありました。・・・で、そんな時、有りがちな「さっきもここを通った」が、現実にも起きました。
実は、この迷子の一件に喫茶店は無関係なんですが、その地下街のどこかにあることは知っていました。
迷子の事実から、迷いというキーワードが生まれ、その結論付けに、喫茶店の話を取り入れました。

喫茶店に居た彼からメールが来る・・・と言う話は、ほぼ実話です。ただ、人物設定は性別も含めて内緒です。
この時に、松ぼっくりの写メも来ましたが、話の流れには全く関係はありません。喫茶店が印象に残っている理由付けをする小道具に使いました

ラストの展開は、わりと早い段階で決めていました。
前述したように迷子から迷いのキーワードを生み、悲しい結末で終らないためにも“迷わない”というキーワードが生まれました。
ただ、創作から生まれたものであっても、当時の心境を代弁していたようにも思えます。

偶然の再会・・・もしかしたら、その喫茶店は実在しないのかもしれません。あなたは喫茶店に誰の面影を映しますか?
No062
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[No.245-2]四次元の世界

No.245-2

「トンネルを抜けたら、怖いじゃない!」
「あくまでも、テレビの中の話だよ」

怖がる朋美(ともみ)をなだめる。
でも・・・。

「なんだよ・・・その疑わしい顔?」
「・・・ようやく分かったの、あの時の行動が」
「あの時?」
「トンネルは“きっかけのひとつ”なんだよね?」

朋美が“あの時”を話し始めた。

「ゲートとか・・・避けてたよね?明らかに」
「そ、そうだっけ?」

とぼけてみても、多分バレているだろう。
確かに、何らかをくぐる必要がある場合、それを避けていた。

「何度も・・・タバコ買いに行くって言うから、変だと思ってた」
「ビビッてたんでしょ?」

「い、いうなよ・・・」

当時、子供心に四次元の世界は恐怖の対象であった。
もし、迷い込んでしまったら・・・。
僕のことを知らない人達の世界に入ってしまったら・・・。

「そう思うだろ?」
「さっきまでは怖かったけど、今はそうでもない」
「このままふたりで、四次元の世界に入ってもいいと思うくらいよ」

朋美の発言をどう捉えてよいのか迷った。
そうなると本心を聞かないわけには行かない。

「誰も僕達を知らないんだよ?」
「だ・か・ら、いいの」

(No.245完)

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