[No.243-2]from H.F
No.243-2
「from H.F・・・って、縫い付けてあったろ?」
「そうよ」
「英語の文法がおかしいよ」
“僕へ”贈ったのだから、“from”じゃおかしい。
「“to”の間違いだろ?」
イニシャルが恥ずかしいと言うより、これを気にしていた。
もちろん、彼女のことを気遣って・・・の意味でだ。
「間違ってないわよ」
「僕だって、そこそこ英語はできるほうだぞ」
からかわれているのか、天然なのか・・・。
もしかしたら、意味を間違ったまま覚えている可能性もある。
「“to”は“~へ”で、“from”は・・・」
「もぉ!そんなの小学生でも分かってるわよ」
どうも話のつじつまが合わない。
明らかに間違っているのに、間違っていないと言う。
「だったら・・・」
「私のイニシャルは?」
(イニシャル・・・?今、どんな関係が・・・)
「えっ・・・と、永恵(ひさえ)、杉・・・だから、H.S・・・だろ?」
「今は違うけどね」
「今は永恵(ひさえ)、福・・・だから、H.Fよ」
改めて考えれば、結婚した後は僕のイニシャルと同じだ。
僕と同じ・・・まさか・・・。
「まぁ、私も幼かったしね」
ようやく“from”の意味が理解できた。
そう・・・彼女は間違っていない。
「あの時は、あなたのお嫁さんになるつもりで居たわ」
(No.243完)
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