[No.243-1]from H.F
No.243-1
登場人物=牽引役(男性)
=相手(女性)
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「覚えてるか?黒い巾着・・・」
元カノの永恵(ひさえ)とは、今でも付き合いがある。
もちろん、今は単なる友人に過ぎない。
「覚えてるわよ・・・それが?」
「年末に大掃除してたら出てきたんだ」
「あっ!・・・も、もちろん、大切に保管してたよ」
押入れの片隅でホコリを被って・・・ともなれば機嫌を損ねる。
別れたとは言え、多少のウソは必要だ。
「えっ!まだ持ってたの?」
やや、軽蔑のまなざしで僕を見ている。
大切にしていたと言うウソが逆効果となった。
「いやぁ、そのぉ・・・写真とか手紙は捨てたから!」
「なんで、捨てちゃうのよ!」
だから女はめんどくさい。
しばらく、攻防が続いた。
「と・に・か・く・・・その巾着なんだけど」
付き合い始めて間もない頃、黒い巾着袋を貰った。
手作り感バッチリが微笑ましくも思えた。
「そう言えば・・・あなた一度も使ってくれなかったよね?」
僕が言う前に永恵が先に聞いてきた。
僕もそれについて話すつもりだった。
「イニシャルが恥かしかった?」
赤のフェルトで大きく“H.F”と、縫い付けられていた。
それは紛れも無く、僕のイニシャルだった。
「・・・確かにそうなんだけど・・・」
恥ずかしい理由は、やや別のところにあった。
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