[No.237-2]かごの中のネコ
No.237-2
「野良猫でしょ?」
姿を見ないのは当たり前・・・と言わんばかりの表情だ。
「そうなんだけど、驚かしちゃったかな・・・ってね」
普段なら、もっと早い時間で帰宅している。
たまたま、その時だけ、深夜近くの時間になってしまった。
「そんな遅くまで何してたのよ?」
「そこは関係ないぃ!」
単に「仕事の都合よ」・・・と正直に答えればすむことだ。
ただ、正直に答えるのには、それはそれで寂しいものがある。
「まぁ、その内、白状してもらうけどね」
(早めに誤解を解いたほうがよさそうね)
「と・に・か・く、お気に入りの場所から追い出したようで・・・」
「後味が悪い?」
あの日だけ、偶然そこに居たとは思えない。
いつもなら、既に安泰の時間帯だったはずだ。
それを私の帰宅が遅れたことで、壊してしまったような気がする。
「相変わらず、やさしいわね・・・でも、さぁ・・・」
「なによ」
「それって猫じゃなくて、“実は男でしたぁ!”って、オチは無しよ」
「バカなこと言わないの!」
あの夜以来、そっとかごの中を確認するのが習慣になった。
そして、ある日・・・。
(あっ・・・戻ってきてる!)
どうやら、お気に入りの場所は私の自転車の方だったようだ。
(No.237完)
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