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2011年2月

[No.245-1]四次元の世界

No.245-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------
「なぁ、四次元の世界って信じる?」
「なによ、急に・・・」

小学生の時、あるテレビ番組をよく見ていた。
UFOや怪奇現象などの不思議現象を取り上げた番組だ。

「その番組は知らないけど・・・それがなに?」
「たまに四次元の世界の特集があるんだ」

今風に言えば“パラレルワールド”だろうか。
四次元と表現するだけで、なんとなく昭和の匂いがする。

「それで、トンネルとかに入って出たら・・・」

何らかの理由で四次元の世界に通じてしまう。
ただ、あくまでも番組上、そうなっていただけに過ぎない。
トンネルもそうなるきっかけのひとつだと・・・。

「初めて聞く話だけど、分からなくもないわね」
「だろ?」

トンネルを抜けると、そこは四次元の世界だった・・・。
有名な小説のワンフレーズのようでもある。
トンネルはある意味、そんな雰囲気を持っている。

「ねぇ、そもそも四次元の世界って?」
「僕もテレビの受け売りだけど・・・」

四次元とは言っても、今存在している世界と全く変わらない。
違うのは、四次元の世界に“僕”が存在しないことだ。

「だから、親も友達も“あなた誰?”ってなるんだ」
「パニくるわね・・・そうなると」

遠くに小さく明かりが見える。
トンネルを抜けるにはまだ時間が掛かりそうだった。

(No.245-2へ続く)

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[No.244-2]ニアミス

No.244-2

「ニアミス・・・だったね」

正しくは、ニアミスに成りかけた・・・と、いうべきだろう。
運よく、未遂で終ったのだから。
ただ、今回は妙にピタリと当てはまる言葉だ。

「でも、よく思い出したな」
「なんか嫌な予感がしてなぁ・・・場所を決めた後」

女の勘というべきだろうか。
それとも、動物的に危険を察知したとか・・・。

「とにかく、良かったよ」

いずれにせよ、事故は起こらなかった。
それで十分だ。

「・・・で、なんで待ち合わせ場所をここにしたの?」
「なんでって・・・」
「ほら、相当離れているだろ?家から」

自分で疑問を投げておきながら、自分で答え見つけた。

「・・・そっか、離れているほうが、出逢わないよな」

そう、単純なことだ。

「そうともいえへんやろ?」

珍しく僕の意見に反論する。

「どんなに離れていても、出逢うこともあるやん?」
「うちらのように」
「・・・だな」
「それじゃ、レッツ・ゴォー!」

待ち合わせ場所をなぜここにしたかは、すぐに分かった。

「ここにも、沢山売ってるんだな・・・リラックマが」
No244

(No.244完)

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[No.244-1]ニアミス

No.244-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------
『ごめん!場所変更できる?』

理紗(りさ)から、メールが入った。
さっき待ち合わせ場所を決めたばかりだった。

『いいよ、どこでも大丈夫だから』
『じゃ、明日・・・で』

待ち合わせ場所は、僕の家からはそう遠くない。
けど、理紗の家からは相当離れている。

「最初の場所でも良かったのに」
「うちも、そのほうがええんやけど・・・」

何か理由があるのは明白だった。

「理由でも?」
「うん・・・彼がその日、待ち合わせ付近にいるねん」
「だから・・・?」

理紗が小さくうなずいて、こう続けた。

「逢いたくないねん!」

他人が聞けば、彼氏と上手く行っていない話になる。
そして僕は、その相談に乗る男友達・・・。
あるいは浮気相手に見えるのだろうか。

「相変わらず、上手く行ってないね」
「そやかて、嫌いなんやもん」

それでも別れず付き合っているのには理由がある。
その理由は僕も知っている。
だから、これ以上、話を展開させる気はない。

「でも、ほんま、危なかったわ!」

彼と付き合うきっかけになったサークルの集まりがあるらしい。
その集合場所近くに、待ち合わせ場所もある。
それをスッカリ、忘れていたらしい。

(No.244-2へ続く)

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ホタル通信 No.061

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.157 いつものアレ 
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

星の表示上、実話度20%ですが、限りなく0%に近い話です。
ただ、いつものようにきっかけは存在しています。

前回の「ホタル通信No.060」と似ているのですが、ふたつの事実・・・というより、ふたつのキーワードが存在しています。
ひとつ目は、気合
小説上の彼女には実在のモデルが存在しており、その人がとある場面で「気合」という表現を使ったのが印象的でした。
「これから仕事なので気合入れます!」のようなメールが届きました。
加えて、彼女が気合を入れた場所が「No.152 偶然の再会」で登場した喫茶店です。気合と言っても、気持ちを新たにする意味があったようです。

ふたつ目は、靴ひも
これはひとつ目のキーワードである気合とは、全く無関係です。
自分のスニーカーの靴ひもがよくほどけていた事実のみを切り取りました。これについては、これ以上膨らむエピソードはありません。
なぜ、ふたつのキーワードで創作したのか、今となっては覚えていませんが、結び直すという行為に、何かしらの心境を重ね合わせようとしたのかもしれません。
その時に、“気合”というキーワードを持っていたので、それを組み合わせたのだと思っています。

そこそこ、終り方は気に入ってはいるものの、実話度が下がれば下がるほど、作り物感は上がっていきます。
極力、ショートショート風にならず、現実にも十分起きそうなことで話を締めくくれたら・・・それが作者の想いです
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[No.243-2]from H.F

No.243-2

「from H.F・・・って、縫い付けてあったろ?」
「そうよ」
「英語の文法がおかしいよ」

“僕へ”贈ったのだから、“from”じゃおかしい。

「“to”の間違いだろ?」

イニシャルが恥ずかしいと言うより、これを気にしていた。
もちろん、彼女のことを気遣って・・・の意味でだ。

「間違ってないわよ」
「僕だって、そこそこ英語はできるほうだぞ」

からかわれているのか、天然なのか・・・。
もしかしたら、意味を間違ったまま覚えている可能性もある。

「“to”は“~へ”で、“from”は・・・」
「もぉ!そんなの小学生でも分かってるわよ」

どうも話のつじつまが合わない。
明らかに間違っているのに、間違っていないと言う。

「だったら・・・」
「私のイニシャルは?」

(イニシャル・・・?今、どんな関係が・・・)

「えっ・・・と、永恵(ひさえ)、杉・・・だから、H.S・・・だろ?」
「今は違うけどね」
「今は永恵(ひさえ)、福・・・だから、H.Fよ」

改めて考えれば、結婚した後は僕のイニシャルと同じだ。
僕と同じ・・・まさか・・・。

「まぁ、私も幼かったしね」

ようやく“from”の意味が理解できた。
そう・・・彼女は間違っていない。

「あの時は、あなたのお嫁さんになるつもりで居たわ」

(No.243完)

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[No.243-1]from H.F

No.243-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------
「覚えてるか?黒い巾着・・・」

元カノの永恵(ひさえ)とは、今でも付き合いがある。
もちろん、今は単なる友人に過ぎない。

「覚えてるわよ・・・それが?」
「年末に大掃除してたら出てきたんだ」
「あっ!・・・も、もちろん、大切に保管してたよ」

押入れの片隅でホコリを被って・・・ともなれば機嫌を損ねる。
別れたとは言え、多少のウソは必要だ。

「えっ!まだ持ってたの?」

やや、軽蔑のまなざしで僕を見ている。
大切にしていたと言うウソが逆効果となった。

「いやぁ、そのぉ・・・写真とか手紙は捨てたから!」
「なんで、捨てちゃうのよ!」

だから女はめんどくさい。
しばらく、攻防が続いた。

「と・に・か・く・・・その巾着なんだけど」

付き合い始めて間もない頃、黒い巾着袋を貰った。
手作り感バッチリが微笑ましくも思えた。

「そう言えば・・・あなた一度も使ってくれなかったよね?」

僕が言う前に永恵が先に聞いてきた。
僕もそれについて話すつもりだった。

「イニシャルが恥かしかった?」

赤のフェルトで大きく“H.F”と、縫い付けられていた。
それは紛れも無く、僕のイニシャルだった。

「・・・確かにそうなんだけど・・・」

恥ずかしい理由は、やや別のところにあった。

(No.243-2へ続く)

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[No.242-2]自分のことより

No.242-2

「お待たせ!」

僕の心配をよそに、すぐに次の日曜日がやってきた。

「連れてきたかい?」

それには答えず、カバンの中から彼らを取り出した。
どうやら、それが答えの代わりらしい。

「・・・雰囲気違わない?」
「そりゃ、温泉に行くんやもん」

せいじゅうろうは、見たことがある風呂敷を担いでいる。
コリラックマは、何やらオシャレな耳飾りが印象的だ。
・・・で、キイロイトリ・・・。

「それって・・・」
「どう見ても、温泉風やろ?」

温泉風をどう定義付けるかは別にしても、確かにそんな風に見える。
頭の上に乗っているものが、それだとすれば・・・の話だ。

「タオル・・・それ?」
「当りぃ~!」

ベタだけど、それなりに雰囲気が出ている。
それに、手作りらしい苦労の跡も見える。

「そっか・・・じゃ、出発しよう!」

しばらくして、温泉に到着した時、あることに気付いた。
確かに、彼らの準備は万全だった。

ただ、菜緒自体の準備はイマイチだった。
  No242
(No.242完)

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[No.242-1]自分のことより

No.242-1  [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------
「次の日曜日、温泉に行かないか?」

特に深い意味はない。
寒さが続いている毎日に対する、ひとつの答えのつもりだ。

「ほんまにぃ!」
「ほんま、ほんま」

菜緒の余りの喜びように、つい俺も大阪弁で返してしまった。

「なぁ・・・」
「分かってるよ」

その一言と表情で、言いたいことが伝わってくる。
相変わらず、自分のことより、あいつらのことを考えている。

「ええの!?」
「ええよ」

短い言葉で会話が進む。
ただ、そろそろ確認しておかないと誤っていたら大変だ。

「せいじゅうろう達を、連れてくるんだろ?」
「うん!」

今回は果たしてどんな展開を見せてくれるのだろうか・・・。
あいつらが登場すると、嬉しいハプニングが起こる。

「そうと決まったら、準備、準備!」

(まぁ・・・そりゃそうだな・・・)

ただ、次の日曜日までまだ数日ある。
多少、気の早い準備に、いつもの予感が走った。

(No.242-2へ続く)

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ホタル通信 No.060

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.11 記憶と想い出と 
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性   

この話はふたつの実話から構成されています。それぞれの実話には本来、関連性はありません。

ひとつ目は、街に関係した話です。
札幌から大阪へ引越ししてから、ちょうど2年位が経過した頃の心境を話にしました。
住み慣れた街を懐かしむ、と言うのではなく、ふと・・・言い知れぬ寂しさに似た感覚が私を襲いました。
大阪の生活にも慣れ、心の余裕が逆にボンヤリする時間を作ってしまったせいなのかもしれません。

ふたつ目は、彼と別れた話です。
当時「宛先がないエラー」が返ってきませんでしたので、相手に届いていても無視されていたか、メールフォルターで即ごみ箱行きだったと思います
時間の経過は創作です。2年経過したことは事実であっても、1年ぶりのメール・・・4年が過ぎたことは未来を過去のように書いています。

初期の作品ですので、恥ずかしい限りです。
当時は心境を独り言のように語るパターンが多く、今読むと懐かしささえ覚えます。「当時、そう言えば○○で悩んでいたな」と
ふたつの話をひとつにしたのは、想い出と記憶・・・そこに何かを感じたからです。それぞれの言葉にはそれぞれの意味がある。単に言葉の違いだけじゃなくて。

どちらかの話が想い出で、残る片方の話は記憶なのかも知れません。でも、想い出が記憶になり、記憶が想い出になることもあるでしょう。あの日、私の出した答えです。
No060
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[No.241-2]糸

No.241-2

「こんなのもあるわよ」

意外と友人が話に乗ってくる。

「糸が切れた凧」

(糸が切れた途端・・・・でも・・・)

「それって・・・悪い意味かな?それとも良い意味?」
「悪いほうじゃないの?」

糸が切れてしまった凧の行く末はイメージ通りだと思う。
風に流され、いずれ人知れずどこかに落ちてしまう。

「でも、自由になれたと考える人もいるんじゃない?」

一見、優雅に泳いでいるけど、自由が効かない。
右へ左へ、高く低く・・・誰かにコントロールされているとも言える。

「だから糸の切れた凧は自由になれたと?」
「そりゃ、末路は悲惨かもしれないけど・・・」
「でも・・・必ず、そうなるとも言えない・・・か」

哲学者がもうひとり増えた格好になった。

「・・・なによ?ニヤニヤしちゃって」

私たちの関係を糸で言うなら・・・。

「ねぇ、私たちを糸で表すなら“切っても切れない糸”ってどう?」

正直、今まで何度か切れかけたことはあった。
でも、切れたことはなかった。
その見えない糸を、人は友情というのだろうか。

(No.241完)

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[No.241-1]糸

No.241-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-------------------------------
糸っておもしろい。

例えば、運命の赤い糸。
赤い糸につながれた二人が出逢うべくして出逢う。
見えない糸をまるで手繰り寄せるかのように・・・。

例えば、緊張の糸。
ひとつのミスも許されないピンと張り詰めた心。
でも、ひとたび切れてしまうと・・・。

例えば、絡み合った糸。
気づけば糸って案外、複雑に絡み合っている。
決して、そんな気はなかったのに・・・。

糸って、人との繋がりや心境をうまく代弁してくれる。

「蜘蛛の糸はどう?」

友人が私の話に付け加える。
あの有名な小説に出てくる、蜘蛛の糸のことだろう。

「そうね、一筋の希望・・・と言ったところね」
「でもさぁ、どうしたの急に?」

友人が言うのも無理はない。

「最近、色々あってね」

考えごとをしている内に、少し深みに入ってしまった。

「哲学者みたいよ」
「そう見える?」

たまにはそんな気分にもなる。

(No.241-2へ続く)

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[No.240-2]平行線

No.240-2

「かげでコソコソ動いてるんじゃない?」

(最近、休み時間に居ないのはそのせいね・・・)

隠れて勉強しているに違いない。
私を油断させておいて、一気に引き離すつもりだ。

「多分、2-Cに居ると思うよ」
「2-C?」

(なんでだろう・・・あっ!)

そう言えば、幼なじみが居ると聞いたことがある。
それも、こちらとは違い学年で1、2を争う秀才だ。

「・・・あの子に教えてもらってるのね!」
「教えてもらってる?変なこと言うわね」

若干、冷静さを失い、クラスメートの言葉に反応できずにいた。

「私にもその情報教えてよ!」

急にライバル心が芽生えてきた。
今までもなくはなかったが、こと勉強に対しては初めてだ。

「いいけど・・・」
「多分、勘違いしてるわよ」

友達のまま、平行線を長く保つ・・・。
告白し、交差する・・・でも、別れたら二度と交われない・・・。
亜矢(あや)が、そんなことを言っていたらしい。

「これで2-Cに居る理由が想像できない?」
「友達・・・告白・・・2-C・・・あぁ!」

大急ぎで、彼への告白を阻止しに向かった。

(No.240完)

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[No.240-1]平行線

No.240-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-------------------------------
「平行線・・・交差・・・」

休み時間にもかかわらず、勉強熱心なクラスメートだ。
数学らしき言葉が途切れ途切れに聞こえてくる。
そう言えば、もうすぐ試験も近い。

「ねぇ、ねぇ!それってどこからの情報?」
「情報?」
「だって、ほら、平行線とか・・・」

ただ、ひとつ気になるところがある。
そもそも試験に出るような範囲ではない気がする。

(まぁ・・・真剣に授業を受けてなかったけど)

自分が知らないだけかもしれない。
実際、そうだったことが何度もあるからだ。

「言うなれば、亜矢(あや)からの情報かな?」
「亜矢?珍しいわね」

なにせ、亜矢とはクラスでも1、2を争っている。
もちろん、悪い方で・・・だ。

「急にやる気出しちゃって・・・どうしたのかな?」
「やる気・・・?それより、まずいんじゃない?」

そうだ・・・まずい。
亜矢がその気になれば、クラスの最下位がいつも私になる。
それはなんとしても避けたい。
私にだって、それなりのプライドはある。
レベルの低いプライドかもしれないが・・・。

「それで、亜矢は今どこに居るの?」

授業の開始まで待てない。

(No.240-2へ続く)

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ホタル通信 No.059

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.168 鉄道員 
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性   

登場人物の設定やラストの展開以外は、ほぼ実話です。色々な想い出の中でも、結構印象に残るエピソードでした。

小学生の頃、悪意はなかったものの「悪ふざけ」は日常的でした。きっとその中で、人を傷付けてしまうこともあったでしょう。
この話が印象に残っているのは、後半に書いた「曲を聴くまでは・・・後ろめたいものまで感じた」の心境があったからです。
替え歌・・・とは言っても、たかが小学生レベルですから、歌詞になるほどでもなく、“て・っ・つ・どうい~ん!”のようにただ「鉄道員」を連呼するような程度でした。

鉄道からイメージされる列車、旅・・・
どこか楽しげでワクワクする感覚。そんなノリで“鉄道員”を連呼していたところに、実際の曲が届きました。
小説を書いた時にも、メロディは鮮明に覚えていましたが、改めてネットで探して聴いてみると、当時にも増してその物悲しさが伝わってきました。
多分、今になってその映画自体がどんな内容であったかを知ることになったのも影響していると思います。

冬のホタルでは、話が悲しいまま終ることはありません。そのために、このような終り方にしました
オルゴールにまつわる話・・・誰もが、とは言えませんが、そこそこあるんじゃないかと思っています。それを狙って佐江(さえ)が私から話を聞き出して曲を決めた・・・そんな背景です。

物悲しい曲なんですが、それだけでは片付けられない、そんな不思議なメロディです。
No059_2
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[No.239-2]似た人を好きになる

No.239-2

「最近ね、モノマネ番組見てて気づいたの」

(モノマネ番組?)

「潜在意識と何か関係が?」
「そうじゃないけど、見てて気づかない?」

そう言われても、積極的にモノマネ番組を見ていない。

「なによ・・・もったいぶっちゃって」
「モノマネする人ってさぁ・・・」

彩音(あやね)が、自前の理論を展開し始めた。
但し、お世辞にも論理的とは言えない。

「ちょ、ちょっと待って・・・」
「・・・で、結論を言えばこういうこと?」

自分なりに彩音の話を要約し、先に結論付けた。
間違っていたとしても、このまま話を続けられるよりはマシだ。

「・・・あ、うん・・・そうよ、その通り」

彩音が言うにはモノマネする人は、される人に顔がどこか似ている。
だから、声も似るのだと。
そう考えると、逆もまた真だ。

「顔が似てると声も似る」
「そう、だから声が似てると顔も似るの」

なんとなく、本当の結論が見えてきた気がする。
私が選んできた男性達。
彼らが選ばれた本当の理由・・・大急ぎで思い出す・・・。
あの時、あの瞬間の・・・。

「・・・きっと、同じ声の人に惹かれていたのかもしれないね」

(No.239完)

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[No.239-1]似た人を好きになる

No.239-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-------------------------------
過去、好きになった人達の顔は、どことなく似ている。

「そりゃ・・・ね、誰でもタイプはあるんじゃない?」

彩音(あやね)と男性アイドルの話になった。
それが、昔の彼氏の話に置き換わっていった。

「前の彼氏、確かにあのアイドルに似てるわね」

もちろん、顔の好みだけで人を好きになるわけではない。
結果的にそうなっている。

「それを世間では“顔で選んでいる”と言うのよ」
「あくまでも結果がそうなの!・・・何でかは分からないけど」

もしかしたら、本当に顔だけで選んでいるのかもしれない。

「だから・・・」
「・・・続かないとでも?」
「いやぁ~・・・そこまでは言ってない」
「顔は言ってる!」

強く否定はできない。
実際、一度も1年以上続いたことがない。
顔で選んでいると言われても仕方がない状況だ。

「そんなつもりはないんだけどなぁ・・・」

無意識・・・そう、無意識に何かがすり込まれている。
きっと、潜在意識の中で、選り好みしている可能性がある。

「潜在意識?大きく出たわね」
「違う?」
「違わなくはないけど・・・」

彩音が肯定しながらも、やんわり否定し始めた。

(No.239-2へ続く)

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[No.238-2]なんだよ・・・。

No.238-2

「そんなの、考えすぎ。疑心暗鬼よ」

(そうなのかなぁ・・・)

「以前、花見に誘われたことがあっただろ?」

誘われてはいたものの、体調不良で行けなくなった。

「そんなの仕方ないじゃん!」
「結果的に、雨が降らなくて済んだとも言える」
「あなたが参加しなかったから?」

それから何となく、屋外のイベントには参加しづらくなった。

「でも、誰も知らないわけでしょ?」

確かに僕が雨男だとすれば、そのことは知らない。
もちろん、積極的に言うはずもない。

「まぁ、今、一人にバレたけどな」

なぜ、彼女にだけ話したのか、自分でも分からない。
偶然、会社を出る時に一緒になり、こうして駅まで歩いている。

「この調子なら記録更新はないかもな」

いつも建物から出た途端、雨が降って来た。
でも、今日はそれがない。

「良かったじゃん、雨男じゃなくて・・・」
「・・・なんだよ、ちっとも嬉しそうに見えないけど」

さっきまで心配していた彼女とは雰囲気が違う。
なんだか、ガッカリしたような・・・そんな感じにも見える。

「今日なら相合傘で帰れると思ったのに」

僕が雨男だということを、いつ知ったのだろう・・・。

(No.238完)

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[No.238-1]なんだよ・・・。

No.238-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------
「なんだよ・・・」

通用口を一歩出た途端、静かな夜がざわめき始めた。
急いで中へ戻り、置き傘を取りに戻った。

俗に言われる雨男、雨女・・・。
そこには科学的な根拠はない、単なる偶然の産物だ。
でも、それが何度か続くとそう思いたくもなる。

「もともと降り出しそうな空なんでしょ?」

それは間違いない。
晴天時に雨雲を呼んでくるほどの力は持ち合せていない。

「でもなぁ・・・これで4回連続なんだよ」
「4回?それなら、まだまだ偶然の範囲よ」

そこに数学的な根拠があるとは思っていない。
ある意味、慰めも含めた発言と捉えている。

「それに、記録更新中なんだぜ」

昨日、雨を呼んだ・・・それで4回目だった。
予報では今日も天候は不順だ。
今の所、雨が降っていないから余計、心配になる。

「子供じゃないんだから・・・」
「別に、雨が嫌いとか、怖いとかじゃないよ」

ただ、外に出るのは怖い。
出た瞬間、ポツリポツリ・・・と雨に打たれでもしたら・・・。

「たかが雨でしょ?」
「それとも雨男、決定!が気に入らないわけ?」

「一般的には好かれないだろ?」

特に、屋外のイベントには呼ばれない。
いや・・・もう既に呼ばれていないような気がする。

(No.238-2へ続く)

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ホタル通信 No.058

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.140 誰をダマしたの? 
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性
   

この話のきっかけになったのは、1つの記事です。その記事は社内向け健康関連の冊子に掲載されていました。

ストレス解消のひとつに「涙を流す」方法があるようです。これについては、初めて聞く話ではありません。
例えば、失恋というストレスは、思いっきり泣くことで、スッキリする・・・良く聞く話ですし、実際そうだと思います。
その記事で興味深かったのは、その涙が自分の経験からくるものでなくても構わないことです。
自分の経験と重ならないような、シリアスなドラマで泣いても、コメディドラマで笑いすぎて泣いてしまったとしても、涙を流すという行為に違いはないとのこと
詳しい話は専門家に譲るとしても、涙と共にある種のストレス物質が流れだしている・・・と、考えられているようですね。

話としては私がよく使用する“謎解き風”の構成です。
その記事を見て、小説化しようと考えた時には、既に謎解き風をイメージしてました。
最初から脳の話が出てくると、どうしても話が固くなるうえ、説明調の展開になってしまいがちです。
それを避けるため、会話の中でそれらを遠回しに説明するような方法にしています。

この話にはちょっとした後日談があります。
No.229 止まった時間」に登場する相手の女性に、記事の内容を話すことになりました
その小説を読んで頂ければ理由を分かって頂けると思います。
No058
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[No.237-2]かごの中のネコ

No.237-2

「野良猫でしょ?」

姿を見ないのは当たり前・・・と言わんばかりの表情だ。

「そうなんだけど、驚かしちゃったかな・・・ってね」

普段なら、もっと早い時間で帰宅している。
たまたま、その時だけ、深夜近くの時間になってしまった。

「そんな遅くまで何してたのよ?」
「そこは関係ないぃ!」

単に「仕事の都合よ」・・・と正直に答えればすむことだ。
ただ、正直に答えるのには、それはそれで寂しいものがある。

「まぁ、その内、白状してもらうけどね」

(早めに誤解を解いたほうがよさそうね)

「と・に・か・く、お気に入りの場所から追い出したようで・・・」
「後味が悪い?」

あの日だけ、偶然そこに居たとは思えない。
いつもなら、既に安泰の時間帯だったはずだ。
それを私の帰宅が遅れたことで、壊してしまったような気がする。

「相変わらず、やさしいわね・・・でも、さぁ・・・」
「なによ」
「それって猫じゃなくて、“実は男でしたぁ!”って、オチは無しよ」
「バカなこと言わないの!」

あの夜以来、そっとかごの中を確認するのが習慣になった。
そして、ある日・・・。

(あっ・・・戻ってきてる!)

どうやら、お気に入りの場所は私の自転車の方だったようだ。

(No.237完)

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