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[No.237-1]かごの中のネコ

No.237-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
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「ワッ、うっぉ!」

夜の住宅街へ声がこだまする前に、反射的に口を押さえた。
そのため、うめき声にも似た、おかしな声になった。

「な、なによ・・・もぉ!」

仕事から帰宅し、マンションの駐輪場へ自転車を置いた。
その瞬間、隣の自転車のかごの中から、何かが飛び出した。
それが今、やや離れた場所に居る。

「おどかさないでよ、まったく・・・」

私の気持ちとは裏腹に、恨めしそうな目でこっちを見ている。
何となく、その理由は分かる。

「理由?・・・猫から聞いたの?」
「・・・な、わけないでしょ!」

昨日の出来事を友人に話した。

「かごの中で、寝てたと思うの」
「それがあなたに起こされた、と・・・・そんな展開ね」

自転車を止めた時、何となく、隣のかごの中に目がいった。
そして、そこで丸まっている何かを見つけた。

「・・・で、その瞬間、飛び出してきたわけよ!」
「向こうも相当、驚いたんじゃない?」

確かにそれは言える。
尋常ではないスピードで、かごから飛び出したからだ。
けど、そのままどこかへ逃げて行くことはなかった。

「よぽど、お気に入りの場所じゃないの?」
「うん、多分そうなんだろうけど・・・」

でも、あれ以来、その猫の姿を見ていない。

(No.237-2へ続く)

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