[No.233-2]360円の思い出
No.233-2
「母からね、特別におこづかいを貰えたの」
年に何度も出掛ける場所ではない。
それもあってのことだろう。
「で、いくらほど?」
「そこがポイントなんだ」
その思い出は、どちらかと言えば、ほろ苦い。
決して悲しくはないにせよ、楽しくもない。
「360円の人形買うんだから・・・」
「でも、1つ・・・ってこともないか」
そう・・・おこづかいの額と人形の数が問題だ。
そして、そこに複雑な思いが存在した。
「3つなら、いくらになる?」
「・・・1080円だよね」
「でね、おこづかいは、1000円なの」
別に人形を3つ欲しかったわけじゃない。
ただ、もう80円あれば・・・そんな思いを持っていた。
「言い出せなかった?」
「まぁ、子供なりに気を使ったのかもね」
お陰で、欲しいものを絞り込む目が養われた。
「へぇ・・・原点はここにあったんだ」
「どう言う意味よ?」
「合コンのあなたの目利きは大したものよ」
(No.233完)
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