[No.232-2]空のつながり
No.232-2
「空ってね、いろんなドラマを運んでくれるのよ」
今までとは打って変わって、ロマンチストになっている。
「例えば?」
あえて今での嘘や態度を責めなかった。
それより、今は素直に早百合(さゆり)の話を聞くことにした。
「白ワインがね、夕焼けでロゼに変わるのよ」
「あんた、夕方から飲んでるの?」
「そこ突っ込むぅ!!」
アンニュイでもロマンチストでもない、いつもの早百合に戻った。
「何もない空間なのに、どこかで繋がっている気がするの」
それは私もそう感じことがある。
同じ空の下・・・どこにいても、繋がっている。
それは空を通じて、心が繋がっているということと等しい。
「そうね・・・だけど」
「だけど?」
「まずは、飲みに行かない?白ワインを」
奇しくも、空が茜色に染まっている。
「その、ドラマってやつを聴かせてもらおうじゃない!」
ふたりで、グラスを傾けに向かった。
「ねっ!いい雰囲気でしょ?」
確かに白ワインが茜色に染まり、何ともいい雰囲気だ。
ただ、ひとつここに来て分かったことがある。
ドラマは空が運んで来るのではない。
空は舞台であり、主役は私たちなんだと。
(No.232完)
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