[No.230-2]多くても少なくても
No.230-2
そろそろキーワードを整理しないとマズい。
彼の話を上の空で聞いていたのが原因だ。
つい、ケータイのゲームに夢中になっていたからだ。
「佳代子(かよこ)は、どっちだろうな?」
「私・・・?自分じゃ、よく分からないよ」
「それもそうだな」
何とか会話が成立している。
今の所は・・・。
「佳代子は若干、多い方かな?」
「じゃ、あなたは?」
「俺は、少ない方だろ?」
返事に困る。
素直に「そうね」と言えば良いのか、否定すれば良いのか・・・。
「そんなことないよ」
曖昧だけど、この瞬間はベストと思える返事だろう。
これなら、否定しながらも、強く肯定もしていない。
「まぁ、難しいよな」
「そうね」
予想に反して、テーマが分からないまま話が終了ムードだ。
(ふぅ~・・・なんとか切り抜けたようね)
緊張の時間が過ぎ、反動で気が抜けて口数が減った。
「いつもと違って静かじゃない?」
「そう?そんな時もあるのよ、私だって」
嘘っぽいことを、もっともらしく、しゃべった。
「でも、言ったろ?多くても少なくてもダメだと」
「“一言”は多くても、少なくてもダメ」
(No.230完)
| 固定リンク | 0
「(010)小説No.226~250」カテゴリの記事
- [No.250-2]寂しげな雪だるま(2011.03.19)
- [No.250-1]寂しげな雪だるま(2011.03.18)
- [No.249-2]汽笛(2011.03.15)
- [No.249-1]汽笛(2011.03.13)
- [No.248-2]未来日記(2011.03.12)
コメント