[No.227-2]いたずら
No.227-2
「可愛い子から、電話きたらラッキーやん!」
「それも、そうだなぁ」
思わず翔子(しょうこ)の口車に乗ってしまう。
否定できない理由があるからだ。
「せやろ!でも、ホンマにきたらくやしいから、ボツ!」
そう言うと、コースターをカバンの中に入れた。
「おい、おい!僕の出会いの場を奪うなよな!」
会話のノリで多少ふざけてみた。
お互い本気じゃないから、冗談も通じる。
それに、あの時と似てなくもないからだ。
「なぁ、あの時はどうだったんだよ?」
翔子とはコースターを通じて、知り合ったようなものだ。
今と同じように、メッセージを見たからだ。
「どうって・・・あのメッセージ通りやけどな」
真夏の昼間ということもあり、カフェの店内は混み入っていた。
それもあって、僕は彼女と入れ替わるように席に着いた。
「本気だった?」
「・・・せやね・・・あの時は」
コースターに書かれたメッセージを見て、反射的に彼女を追った。
自分でも信じられないくらいの行動力だった。
「誰でもよかったねん、誰でも・・・けどな」
「あんたで良かったわ」
今でも考えることがある。
あの時、彼女がメッセージを残さなかったら・・・と。
「せやろ!だから、せっせとメッセージ書いてんねん」
それとこれでは全く意味が違う。
でも・・・それでもいい。
あの日、ひとつの灯が消えなくて済んだからだ。
(No.227完)
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