[No.224-2]落としたメモリー
No.224-2
「僕のは取引先の記念品としてもらったんだ」
市販品に取引先のロゴを入れた、言わば特注品だ。
「でも、すごい偶然ね!」
それこそUSBメモリーなんて、掃いて捨てるほど種類がある。
ロゴこそ入っているが、ベースは全く同じものだ。
「・・・だから、見つけた時、びっくりしちゃって」
「いつ、落としたんだろう?って・・・あわてて確認したよ」
大したデータは入っていなけど、落とせばさすがに焦るだろう。
「勘違いして持ち帰らなくて良かったよ」
「うん・・・本当に良かったぁ・・・」
胸を撫で下ろすかのような、安堵の表情だった。
よほど大切なデータが入っているらしい。
「今なら、個人情報が・・・って、時代だからな」
当たり障りがないことを、独り言のようにしゃべった。
悪趣味だけど、実は少し中身に興味がある。
「そうね、確かに個人情報が満載かも」
住所録とか、そんなものだろうか。
(でも、まぁ・・・詮索はやめよう・・・)
「気になる?」
見透かされていたようで、何だか恥ずかしくなった。
「見せてあげるよ」
実由(みゆ)がUSBメモリーのファイルを開く。
そこには実由が写してくれた、僕との写真が満載だった。
「メモリーを落としたら大変だもんね!」
(No.224完)
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