[No.223-1]ブラジル
No.223-1
登場人物=牽引役(男性)
=相手(女性)
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「へぇ・・・まだ、あったんだ」
由里(ゆり)が懐かしそうに、その喫茶店を見上げる。
「だよな・・・あれから何年だっけ?」
「何年じゃなくて、十何年よ」
あれこれ話ながら、2階に続く階段を上る。
「この名前・・・」
喫茶店の入り口には当然のごとく、店の名前が書いてある。
「覚えてるか?」
「もちろんよ!」
単に店の名前を覚えているかを、聞いたのではない。
それは由里も分かっているだろう。
「なぜだか、あの時、笑えたよな」
「あなたが笑うから、つい私も・・・」
由里と付き合うことになって、初めてのデートだった。
当時、高校生のデートと言えばたかが知れている。
「2階に向かったら・・・」
「ブラジル・・・だんもね」
冷静に考えなくても、別に笑える話ではない。
「あの時、すごく緊張してたからな」
初デートは、喫茶店デビューでもあった。
そんな緊張感の前に、店名が飛び込んで来た。
「・・・喫茶店・・・コーヒー・・・で、ブラジルだろ?」
妙にピッタリなネーミングに、思わず肩の力が抜けた。
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