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2010年12月

[No.229-1]止まった時間

No.229-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------
『カゼでもひいたの?』

昨日送ったメールを改めて確認してみた。

ここ数日、仲が良い同僚の女性の姿が見えない。
それに、まだ返事が来ていないからだ。

(相当、大変なんだろうか・・・)

カゼが流行っていることもあり、まずはそこからを話を切り出した。
本来は周りに聞けば済むことかもしれない。
ただ、正直聞きづらい面もある。
会社では他人のふりでも、プライベートでは仲が良いからだ。

『今、実家に居るの』

書き出しには、そう書かれてあった。
ようやく、彼女から返信のメールが届いた。
その瞬間、あることが頭をよぎる。

(めでたい席の話じゃ・・・なさそうだな・・・)

案の定、メールの続きには悲しい出来事が書かれてあった。

「落ち着いた?」
「うん・・・でも、まだ信じられない・・・突然だったから」

彼女の母親が亡くなった。
まさしく、言う通り、突然・・・だったようだ。

「だってね、夕食の仕度中のままなんだもん」

突然という言葉が、恐ろしいほどリアルに感じられた。

(No.229-2へ続く)

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[No.228-2]塩おにぎり

No.228-2

「コンビニのおにぎりなんだけど」

優衣(ゆい)が、そのおにぎりの説明を始めた。
聞けば聞くほど、確信して行った。

「それって、2個入りでおかずがちょっと入ってるやつ?」
「そうそう!ゴマがまぶしてあって」

やはりそうだった。
それは単なる塩おにぎりで、具は入っていない。
言った通り、おかずが申し訳ない程度に添えられている。

「お米が美味しいよな!」

もともと、それを口にしたのには理由があった。

「理由?」
「本当は具が焼肉とかのおにぎりが好きなんだけど・・・」
「・・・ダイエット?」

当時、太り気味だったため、仕方なく・・・が、本音だった。

「だからビックリした!美味しくて」
「私もそうよ、そんなに期待してなかったもん」

それにしても、話が合う。
それも、かなり限定的な部分で・・・。

「なんか、食べたくなってきたな」
「そうね、でもまだ売ってるの?」

二人で塩おにぎりを求めて、コンビニを探索することになった。

「それにしても、食の好みは人の好みにも通ずる・・・かもな」

(No.228完)

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[No.228-1]塩おにぎり

No.228-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------
優衣(ゆい)とは前から食の好みが合う、と感じていた。

「・・・でも、店によってソフトクリームなんだよな」

話の発端は、マズイたこ焼きを食べた経験談だった。
それが、どんどんと話が狭く、深くなって行った。

「そうなの?どこも黄色いシャーベット状のアイスだと思ってた」
「その黄色い方が好きなんだけどな」

なぜか、クリームソーダの“具”の話になっていた。

「でね・・・中に氷った部分があって、シャリシャリ・・・」

優衣が今食べているかのごとく、具体的に話しを始めた。
逆に細かすぎると、知らない人には伝わらない場合もあるが・・・。

「伝わるかな~?」
「俺もそこが好きだぞ!」

話を適当に合わせているわけではない。
たまたまピンポイントで、好きな部分が合致しているだけだ。

「だよね!あのシャリシャリ感がたまらないのよね!」

しばらく、好きな食べ物の話で盛り上がった。
話せば話すほど、食の好みが似ている。

「そう言えば、美味しいおにぎり屋さんがあってな・・・」

帰省した時に必ず立ち寄る店の話をした。
おにぎりは冷えた方が美味しい・・・それが二人の結論でもあった。

「やっぱり、そうだよね!じゃ、あれ知ってる?」

(No.228-2へ続く)

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ホタル通信 No.053

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.077 ヒーローの格言 
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性 

自分でも、上手くオチを付けられたと思っていますが、冬のホタル的にはまとまり過ぎで逆に不満な所があります。

冬のホタルでは、格言がテーマになっている話がいくつかあります。・・・とは言え、格言から話を作るのではなく、事実から話を作った時、たまたま格言に辿り着く・・・ようなものです。
ただ、この話においては、格言を目にする所から物語が始まります
システム手帳、1ページに1つの格言・・・これらは事実で、今でも愛用しています。システム手帳のバインダーは、かつて職場の仲間から贈られた物で、とても思い出深い一品でもあります。

さて、話を進めましょう
話の展開はいつもの通り何も考えず、格言に励まされる・・・と言う設定のみ頭の中に入れて、後はひたすらキーボードを叩いた結果です。
話によっては、何度も書き直したり、時には陽の目を見ないこともありますが、この話は非常にスムースに書けました。
ただ、冒頭の通り、クセがない話だけに、普通っぽく仕上がっているのは、冬のホタルらしからぬ・・・ですね。

友子流の格言「ヒーローってね、守る人がいないと力が出ないのよ」は、オリジナルで考えたものです。
・・・が、ホタル通信を書くにあたって、ちょっと気になったので、検索してみた結果、合致するものはありませんでした。でも、世の中広し・・・です。
私よりも先に、このセリフを使った方々・・・決してパクリではございませんので、ご了承ください。

最後に今でも手帳に目を向ける度、格言が飛び込んで来ます。さて、さて今日の格言は・・・

『まず、熟慮し、それから勇気をだしなさい』
ヘルムート・フォン・モルトケ
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[No.227-2]いたずら

No.227-2

「可愛い子から、電話きたらラッキーやん!」
「それも、そうだなぁ」

思わず翔子(しょうこ)の口車に乗ってしまう。
否定できない理由があるからだ。

「せやろ!でも、ホンマにきたらくやしいから、ボツ!」

そう言うと、コースターをカバンの中に入れた。

「おい、おい!僕の出会いの場を奪うなよな!」

会話のノリで多少ふざけてみた。
お互い本気じゃないから、冗談も通じる。
それに、あの時と似てなくもないからだ。

「なぁ、あの時はどうだったんだよ?」

翔子とはコースターを通じて、知り合ったようなものだ。
今と同じように、メッセージを見たからだ。

「どうって・・・あのメッセージ通りやけどな」

真夏の昼間ということもあり、カフェの店内は混み入っていた。
それもあって、僕は彼女と入れ替わるように席に着いた。

「本気だった?」
「・・・せやね・・・あの時は」

コースターに書かれたメッセージを見て、反射的に彼女を追った。
自分でも信じられないくらいの行動力だった。

「誰でもよかったねん、誰でも・・・けどな」
「あんたで良かったわ」

今でも考えることがある。
あの時、彼女がメッセージを残さなかったら・・・と。

「せやろ!だから、せっせとメッセージ書いてんねん」

それとこれでは全く意味が違う。
でも・・・それでもいい。
あの日、ひとつの灯が消えなくて済んだからだ。
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(No.227完)

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[No.227-1]いたずら

No.227-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-------------------------------
「なに、書き込んでるの?」

翔子(しょうこ)が、何かを書き始めた。

「ん?メッセージだよ」

これが便箋とか手帳とかの部類なら、そこそこ理解できる。
それが、なんで・・・。

「濡れてて書きにくいわ」
「そりゃ、そうだろ・・・」

小休止を兼ねて、翔子とカフェに入った。
お互いアイスティーを注文した後のできごとだった。

「でも、何とか書けたわ」

翔子がコースターの裏に何かを書き込んだ。

「書けたのはいいけど、コースターだろ?」

これ以上、その理由について掘り下げるつもりはない。
それより、何を書いたかが気になる。

「・・・で、メッセージって?」

翔子がコースターを僕に渡す。

「なんだよ・・・『電話してね』・・・って!?」

それに言葉に続いて電話番号が書いてある。
所々は伏せられてはいるが、見覚えのある番号だ。

「これ、僕の番号?」
「あっ・たぁ・り~!」

本気ではないことは承知しているつもりだ。
翔子は、たまにこんなイタズラをする。
けど、いつも未遂で終っている。
と言うより、わざとネタをばらしているようにも見える。

「あっ・たぁ・り~!って・・・まったく・・・」

僕のあきらめ顔は、余計に翔子を喜ばせるだけだった。

(No.227-2へ続く)

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[No.226-2]振り返る

No.226-2

「そうだったわね・・・で?」
「懐かしい・・・」
「みなまで言うな!」

友人が話をさえぎる。
こんな調子だから、話が前に進まない。
目の前で必死に考え込んでいる。

「イケメンでもない・・・元彼でもない・・・う~ん・・・」
「クイズじゃないんだから、話させてくれない?」

だんだんと、ホットだった話が冷めていく感じだ。
話にはタイミングも重要だ。

「じゃ、どうぞぉ!」

真顔で構えられると、それはそれで困る。

(だから、タイミングが大切なの!)

「もぉ!話しづらいじゃない」
「わがままね!それなら、歩きながら話そうよ」

前半のセリフは無視するとして、後半は納得だ。

「さっき、誰かとすれ違った時、感じたの」
「なにを?」

すれ違いざまに、懐かしい匂いを感じた。

「それ、元彼の匂いでしょ!」

昔付き合っていた彼と同じ匂いがした。
ただ、どんな匂いなのか・・・表現することが難しい。

「難しい?そりゃそうよ、想い出の匂いだもん!」
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(No.226完)

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[No.226-1]振り返る

No.226-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-------------------------------
「・・・どうかしたの?」

友人が間髪入れず、話し掛けてきた。

「ううん、なんでもない・・・」
「元彼とでも、すれ違ったような顔してるわよ」

当たらずといえど遠からずだ。
確かに言う通り、すれ違った人を振り返り、目で追った。
ただ、似ている人とすれ違ったわけではない。

「じゃ、単なるイケメンが居たの?」

友人にとっては、イケメンも“単なる・・・“という冠が付く。
どれだけ、高飛車なんだろうか。

「私好みなら、追いかけてるわよ!」

まじめに答えるのもバカバカしい。
そのため、多少嘘っぽく、ユーモラスに答えた。

「それなら追いかけてみようか?」
「私の場合なら、向こうが振り返って、追いかけてくるね」

話が友人中心に進んで行く。
話だけでなく、世の中も自分中心・・・と言わんばかりだ。

「世の中?そんな大それたこと考えてないよ」
「私の場合、男性の・・・」

「ちょっとぉ、私の話の続きしてよ」
「なんだっけ?」

高飛車に加え、少し天然が入っている。
だからこそ、憎めない性格なのかも知れない。

「まったく、もぉ・・・私が振り返ったわけよ」

(No.226-2へ続く)

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ホタル通信 No.052

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.058 揺れるミニスカート 
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性
 

彼女の一部分の行動以外は、ほぼ事実と言えるでしょう。但し語り手が作者とは限りません。

この話は彼女との別れ際のワンシーンを切り取ったものです。
別れ際・・・とは言っても、永遠の別れではなく、「それじゃ、またね」的な別れです。

登場する彼女・・・せいじゅうろうシリーズにも登場する、“菜緒”そのものです。
私は彼女が振り返ることを前提に、姿が見えなくなるまで見送る。彼女も私が居ることを前提に振り返る・・・これが、ふたりのスタイルでした。

一般的にも、背中で寂しさを感じたりしますよね?もしかしたら背中って顔以上に、表情を持っているのかもしれません。
それに表情だけでなく、人が背負っているもの・・・そんなものまで見える時があります。
私は彼女の背中を見るたび、そんな想いを抱かずにはいられませんでした。

超短編の冬のホタルの中にあっても、ひときわ短編です。

現実の時間としても、長くて数十秒のシーンです。だからというわけでもありませんが、サクッとまとめたかったのは事実です。
状況を想像しながら、テンポ良く読んでいただけたら・・・そんな想いがありました
最後に・・・舞台となったのは大阪市内の京阪電車 京橋駅です。
もう少し特定すると、1F中央改札口なんですよ。
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[No.225-2]前にススメ!

No.225-2

「そうね・・・考え出すと前に進めないかも」

重い存在になるのではなく、逆に距離が離れて行く。

「それなら軽い存在とか?」
「アハハ!その表現いいかも」

決して、石橋を叩いて・・・というわけではない。
けど、慎重だから・・・というのとも大きく異なる。

「本当に、軽い存在なのかもしれないね」
「どうして?」
「フワフワ、一人で飛んで行っちゃうから」

考え出すと前に進めない。
すると、ひとりの世界に、フワフワと飛んでいってしまう。
その結果・・・。

「自然消滅・・・が、私のパターンね」
「だね」

友人が非常に短い言葉で締めくくる。
それにしても、随分と話が脱線した。

「・・・で、合格しそう?」

友人が一気に話を戻す。

「もちろん!理解は遅いけど、展開は早いわよ」
「でも、恋愛は・・・」
「だから、何でも恋愛に結び付けないの!」

とは言え、友人の言う通りだ。
時には、後先を考えず、まず走り出すことも大切だ。

「必勝法はね・・・まず、ザッと読んで全体を把握してから・・・」

恋愛のこと言ってるのか、試験のことを言ってるのか・・・。

(No.225完)

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[No.225-1]前にススメ!

No.225-1

登場人物
=牽引役(女性) =相手(女性)
-------------------------------
振り返れば、確かにそんなことが多い。

「わぁー!分かったかも!」

おもわず部屋中に響き渡る声で、叫んでしまった。
辛うじて、自分だけしか居ないことが救いだ。
白い目で見られることはない。

(なるほど・・・ようやく謎が解けたよ)

とある資格を取得するために猛勉強中だ。
ただ、勉強の量に対して理解はあまり進んでいない。
理解が遅いせいだ・・・が、私の特長でもある。

「・・・でね、急にバァーって、視界が広がった感じ」

翌日、同じ資格にチャレンジしている友人に、そのことを話した。

「美弥子(みやこ)って、そんなこと多いよね?」

確かにそうだ。

「なかなか納得しないタイプだからだと思う」

ひとつひとつ納得して進みたい。
分かった振りをして先に進めない・・・そんなタイプと分析する。

「それって、今回とか仕事だけにしといた方がいいよ」
「どういうこと?」

聞くまでもないが、つい返事を返してしまう。

「分かってると思うけど・・・恋愛のこと」

男性からすれば、決して重い存在には成り得ない。
・・・が、非常に面倒な女ではあるだろう。

(No.225-2へ続く)

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[No.224-2]落としたメモリー

No.224-2

「僕のは取引先の記念品としてもらったんだ」

市販品に取引先のロゴを入れた、言わば特注品だ。

「でも、すごい偶然ね!」

それこそUSBメモリーなんて、掃いて捨てるほど種類がある。
ロゴこそ入っているが、ベースは全く同じものだ。

「・・・だから、見つけた時、びっくりしちゃって」
「いつ、落としたんだろう?って・・・あわてて確認したよ」

大したデータは入っていなけど、落とせばさすがに焦るだろう。

「勘違いして持ち帰らなくて良かったよ」
「うん・・・本当に良かったぁ・・・」

胸を撫で下ろすかのような、安堵の表情だった。
よほど大切なデータが入っているらしい。

「今なら、個人情報が・・・って、時代だからな」

当たり障りがないことを、独り言のようにしゃべった。
悪趣味だけど、実は少し中身に興味がある。

「そうね、確かに個人情報が満載かも」

住所録とか、そんなものだろうか。

(でも、まぁ・・・詮索はやめよう・・・)

「気になる?」

見透かされていたようで、何だか恥ずかしくなった。

「見せてあげるよ」

実由(みゆ)がUSBメモリーのファイルを開く。
そこには実由が写してくれた、僕との写真が満載だった。

「メモリーを落としたら大変だもんね!」

(No.224完)

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[No.224-1]落としたメモリー

No.224-1

登場人物
=牽引役(男性) =相手(女性)
-------------------------------
(これは・・・?)

予期せぬ落し物を拾った。
ただ、他人の家に落ちていたものだ。
単純に、散らかっているだけかもしれない。

「どうしたの?」

きっと僕が、不思議そうな顔をしたせいだろう。
実由(みゆ)が声を掛けてきた。
でも、それには答えず、大急ぎでカバンの中を確認した。

「・・・だよな!」
「ひとりで納得しないでよね」

実由の家に遊びにきた。
それから、数時間経過した時だった。

「これ、実由のか?」
「あっ!それ・・・」

今度は実由が自分のカバンの中を確認する。

「・・・やっぱり・・・それ、わたしの」

ようやく結論が出た。

「ごそごそしてた時、落としたみたい」

そう言えば、少し前にケータイをカバンから取り出していた。
その時だろうか。

「でも、なんで自分のカバンの中を確認したの?」
「これだよ、これ」

拾った物と、自分のカバンに入っていたものを並べて見せた。

「同じ・・・よね?」
「正確に言えば、ほら・・・僕のはロゴが入っている」

偶然とはこんなことを言うのであろう。
僕が持っているUSBメモリーが、拾った物と同じだった。

(No.224-2へ続く)

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ホタル通信 No.051

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.09 リグレット
実話度:☆☆☆☆☆(0%)
語り手:女性 

初期の作品に見られがちな「明らかに何かを狙っている」作りであり、今振り返れば群を抜いて読みにくい話です。

読みにくさの原因は数名の登場自分が一人称で書かれていることです。加えて、場所や時間などの背景の描写をしていないために、読みにくさが倍増しています・・・すみません。
ただ、今でも背景の描写は積極的ではありません。話のテーマや進行に影響しない限り、書かないことがほとんどです。

さて、話を小説の内容に戻しましょう。時間と場所を順を追って説明します
まず、そもそもこの歌詞は、ラストに登場する「私の言葉が、まだ生きているのね」とつぶやいた人が作ったものです。それが、露天商の手に渡り、その後、ミュージシャンへ渡る・・・。それを、女性が耳にする所から話はスタートします。

その女性はその歌詞がきっかけで、絵本作家として成功し、例のミュージシャンも同様です。
その絵本を、何となく手にした誰かさんが「なんだろう・・・この感覚・・・」と心を揺らす。そして、その歌詞を考えた人も、その絵本を手にして「私の言葉が、まだ生きているのね」と・・・。

実話度は限りなくゼロに等しいのですが、歌詞にこめられた想いは、当時の私の心境そのものなんです
悲しい出来事から立ち直ろうとしている自分が、まさにその歌詞の通りでした。歌詞の意味は想像していただくとしても、決して、暗い意味ではありませんよ。
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[No.223-2]ブラジル

No.223-2

店に入ると、最後に由里(ゆり)と向き合った席を探した。

「ほら、あそこ、あそこ!」

人通りが見える、奥の窓際の席に向かった。
どちらからと言うわけでもなく、自分のポジションに座る。

「最後に座ったのは、別れた後、だった?」
「自然消滅だったから、微妙よね」

お互い、わだかまりもなく、素直に話せた。

「なかなか逢えなかったよな」
「意識して、外してたわけじゃないのよ」

何度か同窓会は開かれたが、すれ違いが続いた。
でも、それ以外の理由で二人だけで逢うのは違うと感じていた。
それは、由里も同じだった。

「もう一度この場所に、由里と一緒に来たかったんだ」
「私もよ」

何も発展しない・・・発展させようとも思っていない。
お互いはそれは分かっている。

「さすがに、向こうの店は変わったな」
「通りの向こう?靴屋さんだったよね」
「いいや、花屋だっただろ?」

懸命にふたりの記憶をたどる。

「なんだよ!誰と来たんだよ」
「そっちこそ、誰とよ!」
「一人に決まってるだろ!」

結局、ふたり共、ひとりではここを訪れていたようだった。

「まぁ、確かに・・・一緒に来たのはあの時、以来だから・・・」

嘘は付いていない・・・そう言いたげなのは僕も同じだった。

(No.223完)

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[No.223-1]ブラジル

No.223-1

登場人物
=牽引役(男性) =相手(女性)
-------------------------------
「へぇ・・・まだ、あったんだ」

由里(ゆり)が懐かしそうに、その喫茶店を見上げる。

「だよな・・・あれから何年だっけ?」
「何年じゃなくて、十何年よ」

あれこれ話ながら、2階に続く階段を上る。

「この名前・・・」

喫茶店の入り口には当然のごとく、店の名前が書いてある。

「覚えてるか?」
「もちろんよ!」

単に店の名前を覚えているかを、聞いたのではない。
それは由里も分かっているだろう。

「なぜだか、あの時、笑えたよな」
「あなたが笑うから、つい私も・・・」

由里と付き合うことになって、初めてのデートだった。
当時、高校生のデートと言えばたかが知れている。

「2階に向かったら・・・」
「ブラジル・・・だんもね」

冷静に考えなくても、別に笑える話ではない。

「あの時、すごく緊張してたからな」

初デートは、喫茶店デビューでもあった。
そんな緊張感の前に、店名が飛び込んで来た。

「・・・喫茶店・・・コーヒー・・・で、ブラジルだろ?」

妙にピッタリなネーミングに、思わず肩の力が抜けた。

(No.223-2へ続く)

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[No.222-2]微笑

No.222-2

「意外・・・誰だろう?」

ゆいは極端に、誰か一人に似ているわけではない。
それだからこそ、その系統の人、全てに似ていると感じる。

「ほら、ちょっとこうして、あぁして・・・」

ゆいがわざとそれらしい表情を作る。

「・・・あぁ!辻ちゃん!?」
「えっ!初めて言われた」

どうやら違うらしい。

「小雪よ・・・女優の」

何となくピンと来るものがない。

「う、ううん・・・かな?」

確かに似てないわけではない。
ゆいは、イマドキにしては珍しく、黒髪にストレートロングだ。

「不服そうね」
「い、いや、その・・・」

見透かされて、口ごもる。

「冗談よ、じょ・う・だ・ん!小雪もたまに似てるって言われるけど」
「私が額縁の中に居るって、想像してみて」

「額縁・・・?」

左手の親指と人差し指で、L型を作る。
さらに右手でも同じものを作り、四角い枠をかたちどる。
そして、テレビのディレクター風に、枠越しに彼女を見た。

「何が見える?」
「なるほど・・・世界で一番有名な微笑が見えたよ!」A0022_000043_4
(No.222完)

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[No.222-1]微笑

No.222-1

登場人物
=牽引役(男性) =相手(女性)
-------------------------------
友人から一人の女性を紹介され、逢うことになった。
当初は友人を含めて、三人で逢う予定だったが・・・。

「分かりました?」
「すぐに!だって、メールに書いてあった通りの雰囲気だったし」

友人の都合で、結局、二人きりで逢うことになった。
もしかすると、友人が気を遣った可能性もある。
ただ、初対面同士で、いきなり二人きりと言うのも考えものだ。

「雰囲気?」
「中島美嘉に似てるって、メールくれただろ?」

顔も似てるが、それに加えて・・・。

「ほら、その服装」
「・・・やっぱり、引いた?」

ダサイとかセンスがない・・・と言うことではない。
逆にミステリアスな雰囲気が漂い過ぎるほど、似合っている。

「初対面で黒系は・・・だよね?」
「そんなことないよ、だから中島美嘉なのかも!」

初対面にもかかわらず、会話が盛り上がる。
それもごく自然に。

「他にも居るんだよ、似てる人」
「・・・誰だろう?」

俗に言う、“ここまで出掛かっている”状態だ。

「上村愛子が一番言われるけど、真央ちゃんも」
「・・・似てる、似てる!」

思わず二回繰り返してしまった。
モヤモヤ感が急に晴れた感じだ。

「意外なところで・・・あの人にも似てるって!」

(No.222-2へ続く)

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ホタル通信 No.050

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.050 オレンジ色の明日へ
実話度:☆☆☆☆☆(0%)
語り手:女性 

冬のホタルが50話目に突入した時の区切りとして書かせてもらいました。

実話度0%ですが、もちろんヒントとなるものがあり、多くはありませんが、そこそこ事実が含まれています。
今でこそ冬のホタルは超短編小説しか掲載しないブログですが以前、開設していたブログでは、ひとつのコーナーとしての存在でした。
その時のコーナーサブタイトルが「オレンジ色の明日へ」でした。

小説に書かれている、ミドリ色に関係する数々の下りは、ほぼ事実です。ミドリ色が好きなわけじゃない・・・良くも悪くも無難だからです。そんな時、一台のケータイに出会いました。
当時としては、とても斬新な色で、それがオレンジ色との出会いでした
比較的、大人しい薄めのオレンジ色でしたが、ケータイ自体のデザイン性も相まって、即購入したのを覚えています。

その頃から、妙にオレンジ色が好きになり、気付けば、その色に囲まれることが多くなりました。
オレンジ色が持つ意味については、その手の雑誌やネット上の情報に譲りますが、私自身この色に、ある想いを持っています。
それは、男性的な色とは言えないが、また女性的な色とも言えない・・・つまり、中性的な色だと感じています。

実は「中性」と言う言葉、冬のホタルではキーワード的な存在です。作者がホタルという名前になった経緯もあるかもしれませんが、読んでくださる方々に対しては、ニュートラルな存在としたかったため、一応、今でもホタルの性別はとしています。

そう考えると、タイトルに対する想いと小説の内容は、大きくかけ離れています。
でも、明日の色は、赤でも黒でも、そしてミドリでもない・・・そこには、どうしてもオレンジ色しか、ピッタリこなかったのです。
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[No.221-2]同居

No.221-2

しばらくして今でも同居は上手く行っている・・・そう聞かされた。

「良かったな」
「うん、“習うより慣れよ”だね」

微妙に違う気もするが、それっぽくも聞こえる。
親子関係を“慣れる”と表現したのは、春(はる)だからこそだ。

「時の流れって、不思議ね」

当時、あれだけ衝突していたことが遠い過去に感じる・・・。
春がしんみりと、そう話し始めた。

「・・・どうした?」
「ううん・・・ちょっと後悔しただけ」

当時の自分を振り返っているような表情だ。

「過ぎたことだよ」
「許してくれるかなぁ・・・?」
「もちろんだよ」

誰が誰を許すのか、短い会話だけでは分からない。
彼女が彼女自身を許す・・・そんな風に聞こえなくもない。

「でもね、困ったことがあるの」
「多少は・・・やっぱり、あるんじゃない?」
「それが大問題なの!」

思わず、つばをゴクリと飲み込む。

(ここに来て・・・大問題って・・・・)

「門限が出来たから、あなたと遅くまで遊べないの」

(No.221完)

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[No.221-1]同居

No.221-1

登場人物
=牽引役(男性) =相手(女性)
-------------------------------
「そろそろだろ?」
「うん、来週だよ」

春(はる)が一人暮らしを解消して自宅に戻る。
・・・とは言っても、もともとお互いの距離は目と鼻の先らしい。

「気分はどう?」
「正直・・・やや不安かな?」

春が一人暮らしをしていることは、初めから知っていた。
ただ、一人暮らしを始めた理由は後から知った。

「そうだね・・・気まずさもあるだろうし」

不仲までとは行かないものの、それに近い関係があった。
そう春が話してくれたことがあった。。

「まぁ、緊急避難だったからね」

無断で家を飛び出したわけでない。
ある意味、母親と合意の上の一人暮らしだ。
だからこそ、お互い手の届く範囲に居たとも言える。

「成長したし・・・私も」

一人暮らしを始めたのは高校の時だと聞いた。
春に限らず、親子の衝突があっても不思議ではない年頃だ。
その結果が少し極端に出ただけだ。

「色々、あっただろ?」
「そうね・・・だから戻ろうと思ったの」

人は成長するに連れ、わだかまりが取れて行く。
短い会話の中に、色々な想いが詰まっているように感じた。

(No.221-2へ続く)

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