[No.219-2]雲が赤い
No.219-2
それにしても夕焼け空は、何とも心が落ち着く。
その空の下では、誰もが詩人でもある。
「詩人?でも、今、語り出したらなぐるわよ」
「元気を出してくれるなら、構わないぞ」
どれくらいだろうか、沈黙が続いた。
でも、僕からそれを破ろうとはしなかった。
「・・・ありがとう・・・もう大丈夫だよ」
「次、頑張れはいいさ」
いい雰囲気で話が進む。
(夕焼けの効果かもしれないな)
これが雨空や、まして雷雨なら僕も立ち直れないかもしれない。
「夕焼け空って、ほんと不思議ね・・・だって・・・」
彼女が僕と同じようなことをしゃべり始めた。
「あなたが言う通り、詩人になれそうね」
「なってみたら?」
半分冗談で、半分本気だ。
「じゃ、詩人風に・・・茜色に染まるうろこ雲を見ていると想い出す」
(・・・で、なにを?)
「確か、そんな感じのスイーツが美味しい店を」
彼女が完全に立ち直ったのは、その店を出た後だった。
(No.219完)
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