[No.214-2]ワン切り
No.214-2
「あら?お帰り、早かったのね」
まだ、勘違いしたままらしい。
「あ・・・うん」
否定するには、理由を言う必要もある。
それはそれで面倒だ。
「帰りは随分と冷静になったじゃないの」
「そんなに、行く前はひどかった?」
「そりゃもう!なにかあったんでしょ?ト・イ・レじゃないことが」
友人は気付いていたようだ。
私がトイレを口実にこの場を離れたことを。
「それで、解決したの?」
「どうして分かるのよ!」
「言ったでしょ?行く前と随分違うって」
今までのいきさつを話した。
ある人・・・元彼と連絡が取れなくなった。
“現在、使われておりません・・・”
致命的と思えるメッセージしか聞くことができなくなっていた。
それでも、電話番号は残していた。
「なるほど・・・そりゃ、驚くわね」
「でも、よく考えたらね・・・1年ぐらい経過したんだし」
彼とは違う誰かに番号が与えられた結果だと思う。
そう考えるのが自然だ。
いまさら、何かを期待しようとかは思わない。
「それで冷静に戻れた・・・ってことね」
「・・・で、どうするの?」
「なんだが、ふっきれた感じがする」
夢見たことが現実になったお陰で、逆に長い夢から冷めた気分だ。
「誰だが分かんないけど感謝しなきゃね、電話の相手に」
(No.214完)
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