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[No.212-2]片付かないもの

No.212-2

「・・・以外に片付いてるじゃん」

彼の話とは裏腹に、荷造りがほとんど済んでいた。

「は・は~ん・・・」
「何だよ・・・」

これだから男は素直じゃない。
荷造りを口実に、私を家に呼んだのだろう。

「素直に言えばいいじゃない」

お互い、そんな性格だから発展しそうな関係も発展しない。

「素直に言ったよ、荷物の整理が大変って」
「うそ!片付いてるじゃないの」

ほとんどの物はダンボール箱に入れられている。

「ここだよ、ここ!」

彼が自分の胸を指差した。

「・・・胸・・・?・・・“心”って言うこと?」
「そうだよ、心の整理はまだなんだ」

彼の表情がいつになく真剣だった。
永遠の別れではないにせよ、頻繁には逢えなくなる。
その心の整理がついていないと言う。

「ありがとう・・・嬉しいけど・・・」
「けど?」
「私って、荷物なの?」

ある意味正解とも言える表現に、ふたりして大笑いした。

(No.212完)

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