[No.211-2]あの空の向こうに
No.211-2
この地で、様々な出逢いがあり、別れもあった。
彼女との出逢いも別れもそのひとつだ。
「へぇ~、ひとつひとつ、深~く、聞きたいけど」
「また今度にしておくわ」
わざと言ってるのか、それとも気付いてないだけだろうか。
妙に冷静に考えている自分に気付く。
「出逢って得るものより、別れて失うほうが多いね」
さっきよりも、余計考えさせられる言葉だ。
(失う・・・僕を失う?ってこと)
うぬぼれた考えであることは分かっている。
でも、今はそう思いたい。
「じゃ・・・失ったものって、なに?」
「あたな・・・」
期待していた答えだったが、ストレートに言われるとたじろぐ。
「・・・じゃないことは確か!本気にした?」
「こらぁ!からかうなよぉ・・・」
湿った雰囲気より、よっぽど良い展開になってきた。
「僕は弱さを失った代わりに、強さを手に入れたな」
「・・・綺麗にまとめ過ぎじゃない?」
別れる度、何だか強くなっている。
それ自体は自信をもって言えることだ。
「根本的に、間違ってるよ」
「根本からぁ?」
思わず声が裏返る。
「私達ただの同僚でしょ?失うものは最初からないじゃない!」
「じゃ、また今度!」
まるで会社帰りと同じ感覚で、出発ゲートに消えて行った。
(No.211完)
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