[No.210-1]記事を読む理由
No.210-1
登場人物
=牽引役(男性 ) =相手(女性)
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今まで、ひとりだけに話したことがある。
なぜ、僕が新聞の市内記事を熱心に読み続けているかを・・・。
「やさしいのね」
「ありがとう・・・でも、そう思われたいからじゃない」
そう・・・やさしいとか、人から評価されたいわけじゃない。
単に気掛かりなだけだ。
「気を悪くしないでね」
晴菜(はるな)が気遣いながら、聞いてきた。
「分かってるよ、記事があったか、なかったか、だろ?」
「あっ・・・うん・・・聞くのもどうかと思ったんだけど・・・」
晴菜が興味本位で聞いていないことは分かっている。
それに、聞かれたくないなら、僕から理由を話したりしない。
「・・・記事はないよ、今は」
今はそうかもしれない。
でも、明日には記事が出ているかもしれない。
「毎日、心配でしょ?」
「そうとも言えるし、違うとも言える」
毎朝、市内記事を見るのが怖い。
けど、見終わった後、ホッとする。
「心配した後、記事がなければ安心できるからね」
「毎日、大変ね」
「それに関しては、当ってるな」
決して明るい話題ではないのに、場の空気は穏やかだった。
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