[No.207-2]長靴の想い出
No.207-2
想い出はないこともない。
ただ、想い出は決して楽しいことばかりじゃない。
「へぇー・・・・それは、可愛そう」
水たまりを車が勢いよく通り過ぎた時だった。
「雨なら濡れてもいいけど、水たまりだろ?」
「何だが、コントみたい」
現実はコント以上に、悲惨だった。
「私もあるわよ」
「おっ!泥水コンビ結成か?」
「そっちじゃなくて!」
景子(けいこ)にも、水たまりの想い出があると言う。
新しい長靴を買った時のワンシーンらしい。
「それって、わざと水たまりに入りたい!ってやつ?」
(長靴を買った・・・雨が待ち遠しい・・・か)
「そう!それ!」
アニメとかで、出てきそうなシーンだ。
真新しい長靴を履いて、水たまりの中ではしゃぐ子供達。
「・・・でね、今もそんな気分なんだ」
「水たまりに入りたい?」
「バカ!違うわよ」
晴れ間が見え始めた空を見上げ、景子がこっち向いて言った。
「雨が待ち遠しいな・・・そしたら、また話せるかもしれないね」
(No.207完)
| 固定リンク | 0
「(009)小説No.201~225」カテゴリの記事
- [No.225-2]前にススメ!(2010.12.16)
- [No.225-1]前にススメ!(2010.12.15)
- [No.224-2]落としたメモリー(2010.12.14)
- [No.224-1]落としたメモリー(2010.12.12)
- [No.223-2]ブラジル(2010.12.09)
コメント