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[No.207-1]長靴の想い出

No.207-1

登場人物
=牽引役(男性) =相手(女性)
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「あれ?何してるの」
「見ての通りだよ」

会社帰り、駐輪場で同僚の景子(けいこ)とバッタリ会った。

「雨が止むのを待ってるの?」
「正解・・・だけど、ちょっと無理そうだな」

夕方から降り出した雨は、衰える所か勢いを増している。
無駄だと思いながらも、多少期待をせずには居られない。

「こんな雨じゃ、傘も役に立たないし」

いっそのこと、雨の中、自転車を飛ばした方が良いかもしれない。
どうせ、歩こうが走ろうが、ずぶ濡れ決定だ。

「待てばいいじゃない」
「それとも、私じゃ役不足?」

景子と積極的に会話することはない。
同僚と言えども、働いているフロアは異なる。
それでも、年齢が近かったり、何かと接点は多い。

「まとまって話すの、前の飲み会以来じゃない?」
「そうだっけ?」

あえて、覚えていない振りをした。

「仕事は順調?」
「ちょっと!仕事の話は無しにしない?」

珍しく景子が強い口調になった。

「それより、雨にまつわる想い出ってある?」

想い出と言う言葉に合わせるかのように、雨は弱まり始めた。A0006_000479
(No.207-2へ続く)

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