[No.201-2]特等席
No.201-2
「来年こそは!・・・と言い続けて早・・・何年?」
「4年よ!よ・ね・ん」
別の意味で会話が弾む。
これが仕事中に見る花火でなければ、もちろん素直に見れる。
けど、今はどうしてもそんな気持ちになれない。
「来年もまたこのコンビだったらどうする?」
「その前に、寿退社してやるわよ!」
これにはあえて突っ込みを入れなかった。
寿退社には、相手が必要だと言うことを分かっていない。
「ちょっと窓、開けてくれる?」
夜になればさすがに暑さも引いているだろう。
せめて、外と同じ空気を吸ってみたい。
「匂いはする?」
「匂い?うん、焼き鳥の匂いがするよ」
「・・・じゃなくて!」
花火の火薬の匂いのことを言ったつもりだった。
打ち上げ場所から近くても、さすがに匂いは届かないのだろうか?
確かに開けた窓からは、香ばしい匂いしか届かない。
「分かってるわよ、火薬の匂いでしょ?」
「あっ!」
「きゅ、急に何よ・・・」
4年目にして初めて気付いたことがあった。
「いつも私が運転手じゃないの!」
「そうだった?・・・いいじゃない、何か問題でも?」
助手席は、気楽な特等席でもある。
(No.201完)
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