[No.199-2]環境が人を変える
No.199-2
今でもその気持ちに変わりはない。
でも、実際に仕事が変わって初めて気付いたこともあった。
「例えば、仕事を押し付けられたり・・・」
その部署では“新人”扱いされ、軽い洗礼を受けた。
逆に、それが様々な仕事を覚えるきっかけにもなった。
今までにしたことがない仕事。
仕事を変わらなければ、出逢うことがなかった経験だ。
「今までになく、視野が広がったわ」
「それが“井の中の蛙”・・・ってわけね」
くどいようだけど、今でも自信はある。
けどそれは、自分の目の届く範囲での話になる。
仕事が変わり環境が変わると、見たこともない世界に気付く。
それが結果的に、自分を変えてくれる。
「今の自分があるのは、井戸から飛び出したのではなくて・・・」
「井戸が無くなったため・・・とでも言ったらいいのかな?」
千恵美が私の変わりに答えた。
確かに当たっている。
実は仕事が変わること自体は消極的であった。
「そうね、環境が私を井戸から連れ出したとも言える」
いずれにせよ、自力で井戸から這い出たわけではない。
「大海を知った気分はどう?」
「悪くないわね」
「そう言えば、そのことわざの続き知ってる?」
「・・・続き・・・?続きがあるの!?」
千恵美がその続きをしゃべった。
「ひとつの場所にとどまることも、またひとつの生き方よ」
「・・・かもね」
人の生き方なんて、それこそ無限にある。
(No.199完)
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