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2010年9月

[No.203-1]夕焼けの秘密

No.203-1

登場人物
=牽引役(女性 ) =相手(女性)
-------------------------------
「聞いてくれる?」

夏海(なつみ)がおもむろに問い掛けてきた。
なにやら、手にしたカタログらしき冊子が怪しい。

「何も買わないわよ」
「違うって!」

私の一言にすぐに気付き、その冊子らしきものを広げて見せた。

「エコに興味があったんだぁ」

どうやらそれはソーラー発電のカタログらしい。
確かに、今注目を浴びている。

「えっ?あっ、違うの!」
「自分から広げて見せておいて、それはないでしょ?」
「ごめん、興味あるのは間違いないけど」

どうも言ってることのつじつまが合わない。
でも、こちらから色々と質問するのもめんどうだ。
それに、そもそも夏海から問い掛けてきたこともある。

「そんなに、にらまないでよぉ・・・」

言葉ではなく、“表情”で今の心情を伝えた。

「説明するからさぁ」

予想通り、この方が話が進展する。

「ソーラーのこと、調べてたらね・・・」

夏海が説明を始めた。
ソーラーパネル・・・発電効率・・・日照時間・・・。
エコとは縁遠い私には、難解な言葉が続いた。

「・・・でね、夕焼け空なんだけど」

急に聞きなれた言葉が飛び込んできた。

(No.203-2へ続く)

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[No.202-2]第一印象

No.202-2

「覚悟はいい?」
「おっ、おどかすなよ・・・」

僕の緊張が無意味に思えるほど、大歓迎を受けた。
それからも、和やかな時間が過ぎた。

「あぁ・・・良かった」

千夏(ちか)の家を後にした瞬間、無意識に口に出た。

「ほんとね!珍しいくらい歓迎されたわよ」
「珍しい?」
「以前ね・・・」

家に入る前に聞かなくて良かった話が続く。

「『また来てね!』って言ってたわよ」
「ほんと?」
「表情を見れば分かるわよ」

直接聞いた訳でもないが、確かにそんな雰囲気は感じた。
最後は名残惜しいのか、見送りまでしてくれた。

「気に入られた証拠よ」
「そうかなぁ・・・」

大喜びしたい気持ちを隠して冷静に返事をした。
なにせ、一番気に入られたい相手に気に入られたからだ。

「そうね、見た目じゃなくて、中身を見てるだろうしね!」

善人を気取るわけじゃないけど、少なくともそう判断してくれた。
だからこそ、素直に嬉しい。

「でも、じゃれつかれたせいで、毛だらけだよ」

(No.202完)

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[No.202-1]第一印象

No.202-1

登場人物
=牽引役(男性) =相手(女性)
-------------------------------
何はともあれ、まずは第一印象が肝心だ。

(いや・・・“まず”ではなく・・・)

多分、これで全てが決まると言っても過言ではない。

「ドキドキするな・・・」
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」

そう言われても、千夏(ちか)の家に初めてお邪魔する。

「受け入れてもらえるかな・・・」
「そんなに、おっかなくないよ」

以前、初対面の人とは馬が合わないと千夏から聞かされた。
自分では第一印象は悪くないと思っている。
事実、今までは上手く行っていた。

「今までは?そうなんだぁ・・・」

千夏がニヤリと笑う。

「そりゃ・・・過去には・・・あるだろ?」
「大丈夫よ、別に責めてないから」

まずは、怪しい雰囲気を出さないようにしたい。
そんな“独特の匂い”を嗅ぎ付けられる恐れがある。
人を見る目は、言うまでもなく確かだろう。
今までの会話からでも容易にそれを想像できる。

「とにかく、誠意を見せたらいいんじゃない?」
「でも、上っ面だけだと、見破られるわよ」

そうこう話しているうちに、千夏の家に到着した。
そして恐る恐る玄関の扉を開けた。

(No.202-2へ続く)

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ホタル通信 No.040

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.148 初恋
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

ラストの友人との会話以外は、ほぼ実話になります。時々ありますよね?一度聞いただけなのに、気になって仕方がない歌・・・。

電気街を歩いていた時でした。店頭からは売り込みの声やそれこそBGMなのか、有線なのか・・・とにかく色んな音が溢れていました。
その間を縫うかのように、この歌が私の耳に届いたのです。
断片的にしか聞こえて来なかったのですが、それだけでも私の心が震えたのを覚えています。

それにしても自分の執念が凄いのか、ネット社会の成せる技なのかとにかく、案外簡単にその歌を突き止めることができました。
小説に書いた通り、歌詞検索する以前に、直感的にそう感じる曲名とアーティストを見つけました。
それから、それを確かめるように歌詞を探して、断片的に覚えているメロディと重ね合わせました。

この歌は失恋ソングなんでしょうか・・・?
数ある失恋ソングとは、全く違うところがありますよね。こんなに歌詞に共感できることも初めてでした。
関係に白黒を付けたり、未練を残している・・・そんな失恋ソングが多い中、「友達でもいいから関係を続けたい」という歌詞です。
でも、それは自分がそう思っているだけ、そう自分に言い聞かせているだけなんですよね。シンプルな言葉とシーンだからこそ、せつない思いが伝わってきます。
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[No.201-2]特等席

No.201-2

「来年こそは!・・・と言い続けて早・・・何年?」
「4年よ!よ・ね・ん」

別の意味で会話が弾む。
これが仕事中に見る花火でなければ、もちろん素直に見れる。
けど、今はどうしてもそんな気持ちになれない。

「来年もまたこのコンビだったらどうする?」
「その前に、寿退社してやるわよ!」

これにはあえて突っ込みを入れなかった。
寿退社には、相手が必要だと言うことを分かっていない。

「ちょっと窓、開けてくれる?」

夜になればさすがに暑さも引いているだろう。
せめて、外と同じ空気を吸ってみたい。

「匂いはする?」
「匂い?うん、焼き鳥の匂いがするよ」
「・・・じゃなくて!」

花火の火薬の匂いのことを言ったつもりだった。
打ち上げ場所から近くても、さすがに匂いは届かないのだろうか?
確かに開けた窓からは、香ばしい匂いしか届かない。

「分かってるわよ、火薬の匂いでしょ?」
「あっ!」
「きゅ、急に何よ・・・」

4年目にして初めて気付いたことがあった。

「いつも私が運転手じゃないの!」
「そうだった?・・・いいじゃない、何か問題でも?」

助手席は、気楽な特等席でもある。

(No.201完)

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[No.201-1]特等席

No.201-1

登場人物
=牽引役(女性) =相手(女性)
-------------------------------
「また、あなたと一緒だね」

車中から見える花火を、昨年と同じ人と見ることになった。

「そうだね」

何とも幸せな時間が続く・・・はずもない!

「なに雰囲気出してんのよ!気持ち悪い」
「あなたものって来たでしょ!」

打合せもなく、幸せそうなカップルをお互い演じた。
それも女同士で・・・。

「また、今年も仕事中に見てるよね」

誰かに対する・・・と言うわけではないが、皮肉が入っている。
花火のシーズンになると、営業の応援で駆り出される。
加えて、なぜか茉希(まき)とペアになる。

「まさか、指名してるんじゃないよね?」
「それはこっちのセリフよ!」

別に仲が悪い訳ではない。
車外では空に花火、地上にカップルが花を咲かせている。
それに浴衣姿の女性達が何とも涼しげだ。
それらが妙に私たちをイライラさせる。

「それに引き換え・・・ねぇ・・・」

黒いスーツが何とも暑苦しく見える。
見えるだけでなく、実際、暑苦しい。

「それもあるけど、まずは目の前の渋滞、なんとかしてよ!」

花火渋滞が更にイライラ度を増して行く。

(No.201-2へ続く)

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[No.200-2]ホタルノヒカリ

No.200-2

「スイッチ?」
「うん、この前は深呼吸しようと思ったら・・・」

息を吸い込もうとした瞬間、フライング気味に変な音が出たと言う。

「でも、スイッチとどんな関係があるの?」
「上手く説明できないけど・・・」

気持ちを切り替えようとしたタイミングで音が出る、と友人は言った。
偶然と言えばそれまでだが、確かにそんな気もする。

(なるほど・・・自分を切り替えるスイッチか・・・)

「スイッチって表現、いいよ、それ!」

タメ息にせよ、深呼吸や気合も分岐点を知らせてくれる合図なんだ。
そして変な音が、気持ちを切り替えてくれる。

「あんな音が出たら、笑うしかないもんね」
「悩み事も吹っ飛んじゃうくらいよ」

それから、私達はその変な音を、こう呼ぶようになった。
“自分スイッチ”と・・・。
それに、メールや合うたびの合言葉のようにもなった。

『最近、自分スイッチ入ってる?』

裏を返せば、何か気持ちを切り替えるような出来事を聞いている。
直接的ではない表現の方が、逆に素直に聞きやすい。

「仕事も順調よ!プロジェクトチームの一員に選らばれたくらい」
「多分、輝いてるからよ」

意識して発言したつもりはなかった。
けど、ふたりして気付いたことがあった。

「スイッチの先には電球が付いてるのかもね!」

(No.200完)

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[No.200-1]ホタルノヒカリ

No.200-1

登場人物
=牽引役(女性) =相手(女性)
-------------------------------
“ピュゥゥ~♪”

「やだぁ・・・変な音」

それはトイレの便座に座った時だった。
スラックスし過ぎたせいだろうか、鼻歌ならず鼻音が出てしまった。
口笛に似た音だったが、一言で言えば“なさけない音”だった。

「ピュゥゥ~って、なんなのよ!」

自分で自分にツッコミを入れた。
そう言えば、たまに似たようなことが起きる。
タメ息のつもりが、なんとも気の抜けた音が出たことがあった。
今回もそれに負けずとも劣らない変な音だ。

(・・・そういえば)

もうひとつ思い出したことがあった。

「ねぇ、ねぇ、聞いてくれる?」

翌日、友達と逢ったときに、あの話をした。

「ある、ある!それ私もあるぅ!」

予想に反して、友人が話にのって来た。
しかも、経験があると言う・・・。

「気合を入れた時に、出たこともあったよ」
「でも、なんだろうね」
「そうだよね!自分で自分を笑っちゃうような・・・」

人に笑われるのではなく、自分で自分を笑わしている感じだ。
それだけなのに、気持ちが明るくなる。

「この音って、スイッチみたい」

(No.200-2へ続く)

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ホタル通信 No.039

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.165 望郷の影
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

登場人物の設定、後半は事実とは大きく異なりますが、前半及び全体的な雰囲気は実話です。

冬のホタルは心をテーマにしていることに加えて、超短編なものですから、場所の描写を殆どしていないのも特長です。
この小説も、“どこの場所であるか”は、あえて描写していません。
色々とヒントは書いてありますから、当ててみてくださいね。

この話を書くきっかけは、とある場所へ行った時、初めて見るはずなのに、見慣れた風景がそこに広がっていました。これはいわゆるデジャブではありません。
 『赤レンガ・・・道庁ぉー!』
このふたりの声で分かるように、札幌の旧道庁や大通り公園周辺を連想させるには十分でした。
札幌を離れてから、すでに3年が経過していますが、タイムトラベルならぬ“瞬間移動”したような気分になりました。

それぞれの街のシンボルでもあるテレビ塔は、ますます結び付きを強くするものがありました。ただ、都合よく、夕陽で赤く染まってはくれませんでしたが、そう思わせてくれるほど、心の中は望郷の想い出一杯でした。
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[No.199-2]環境が人を変える

No.199-2

今でもその気持ちに変わりはない。
でも、実際に仕事が変わって初めて気付いたこともあった。

「例えば、仕事を押し付けられたり・・・」

その部署では“新人”扱いされ、軽い洗礼を受けた。
逆に、それが様々な仕事を覚えるきっかけにもなった。
今までにしたことがない仕事。
仕事を変わらなければ、出逢うことがなかった経験だ。

「今までになく、視野が広がったわ」
「それが“井の中の蛙”・・・ってわけね」

くどいようだけど、今でも自信はある。
けどそれは、自分の目の届く範囲での話になる。
仕事が変わり環境が変わると、見たこともない世界に気付く。
それが結果的に、自分を変えてくれる。

「今の自分があるのは、井戸から飛び出したのではなくて・・・」
「井戸が無くなったため・・・とでも言ったらいいのかな?」

千恵美が私の変わりに答えた。
確かに当たっている。
実は仕事が変わること自体は消極的であった。

「そうね、環境が私を井戸から連れ出したとも言える」

いずれにせよ、自力で井戸から這い出たわけではない。

「大海を知った気分はどう?」
「悪くないわね」
「そう言えば、そのことわざの続き知ってる?」
「・・・続き・・・?続きがあるの!?」

千恵美がその続きをしゃべった。

「ひとつの場所にとどまることも、またひとつの生き方よ」
「・・・かもね」

人の生き方なんて、それこそ無限にある。

(No.199完)

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[No.199-1]環境が人を変える

No.199-1

『井の中の蛙、大海を知らず』
今思えば、まさしくこのことわざの通りだろう。

「今でも結構自信があるんだけどね」

最近、仕事の担当が変わった。
会社からは自身のスキルアップのためだと聞いた。
それ自体に嘘はないと思う。

「自信があるって、前に担当してた仕事のこと?」
「うーん・・・そうとも言えるけど、ちょっと違うかな」

前の仕事は結構長く担当した。
それもあり、その仕事に自信を持っているのは確かだ。

「それなら、何に自信があるの?」

同僚の千恵美が言うことも、もっともだ。

「モチベーションを保てる自信よ」
「・・・余計に分からなくなったかも・・・」

一から千恵子に話すことにした。
一般的に長く仕事を続けると、大抵の人はその仕事にたけてくる。
でもその反面、ある危険性と隣り合せだ。

「危険性?」
「そう・・・マンネリ化と言うか、落ち着いちゃうと言うか・・・」

現状に満足して、新しいことへチャレンジする姿勢が薄れる。
私はそんな人を大勢見てきた。

「そんなの、自分の気持ち次第で何とかなる・・・って思ってるの」
「じゃ、自信があるのは・・・」

千恵子が話をまとめた。

「・・・そう言うこと」

どんなにマンネリ化した状況でも、私自信はマンネリ化しない。
そんな自信があった。

(No.199-2へ続く)

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[No.198-2]せいじゅうろうを探せ!

No.198-2

「なぁ・・・さっきから、話が噛み合ってないけど・・・」

話の出だしは、せいじゅうろうの存在についてだ。
後半になると、加えて“皿うどん”がおかしなことになっている。

「ほら、ここに居るだろ?」

あえて写真の一部を指差す。
もちろん、言い逃れできないように、せいじゅうろうを・・・だ。

「・・・あれ?ほんまや」
「ほ、ほんとに知らんかったん!?」

余りの驚きに、大阪弁がうつる。

「・・・ちゃんぽん写す時に、置いたの忘れとったわ」
「ちょ、ちょっと待って!」

置いたのを忘れたまま写真を撮影したのは理解できる。
それに、色が色だけに周囲に溶け込んでいるのも分かる。
それを差し引いても、引っ掛かる部分がある。

「確認していい?」
「ん?・・・ええよ、なんやろ」

俺の考えが間違っていなければ、菜緒は勘違いしている。

「せいじゅうろうはさぁ・・・何と一緒に写っているの?」
「なにって、この食べ物のこと?」

今度は菜緒が、その食べ物を指差す。

「そう!それ」

菜緒が皿うどんを指差した。

「ちゃんぽんやろ?それがどないしたん?」

(No.198完)

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[No.198-1]せいじゅうろうを探せ!

No.198-1 [No.07-1]せいじゅうろう

「美味しそうだな」

あえて、あることに気付かない振りをしてみた。
白々しいと言えば、非常に白々しいが・・・。
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「せやろ!作りもんやけど」
「・・・あ、うん・・・」

予想していた反応と違うことに、少し戸惑う。

「どないしたん?」
「いやぁ・・・その前になんだ・・・その・・・」

冗談ではなく、本当に気付いていないのだろうか。
こうもはっきり写っていれば、逆に無視することが難しい。

「せいじゅうろうは皿うどんが好きなんだ?」
「なんでなん?」
「だって、写・・・」

途中で言うのを止めた。
菜緒にからかわれているだけかもしれない。
もちろん、悪意はないことは承知している。

(一旦、話題を変えてみようか・・・)

「・・・で、菜緒は食べたんだろ?」
「なにを?」
「何を・・・って、皿うどんだよ」

答えを聞くまでもなく、“食べていない”顔をしている。
どうも、さっきから会話がしっくりこない。
でも、嘘を付いているとか、からかってるとか、とも違う気がする。

「パリパリしてたり、しっとりしてたり、美味しかったわぁ」

それを世間では“皿うどん”と言うのだが・・・。

(No.198-2へ続く)

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ホタル通信 No.038

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.22 感性
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

この小説の主軸を成すもの・・・分かりますか?初期の作品であり、まだまだ上手に伝える力がありません

話の流れでは、涼子の好きなタイプ→なかなか説明しづらい感性を持つ人→それを花見の席で発見!と言う流れがあります。その説明しづらい感性が話の主軸になっています。

性別に関係なく、相手に花を贈る。多くの人たちは「綺麗ですね」と見た目の華やかさや色について、コメントするはずです
ただ時より「良い香りがしますね」など、見た目以外の五感を使ったコメントをする人がいらっしゃいます。でも人と違うコメントをしたから
その人が特別・・・と言うことではありません。
花の匂いに気付き、それを最初に口にしてくれる男性は「もしかしたら、私の内面の良い所に気付いてくれるんじゃないかしら?」と勝手に妄想しているだけです。
見た目の華やかさだけに目を奪われるだけでなく、ちゃんと内面も見てくれる・・・そんな期待を持っています。

小説的には単純に、花をプレゼントする話でも良かったのですが、少しコミカルな話に仕上げたかったこともあり、楽しげな花見の席を利用させてもらいました。従って、話の大部分は創作になります。

超短編を売りにしている、冬のホタルにおいても短めの話ですが、前半と後半の間で時間が経過し、会話する場所も変わっています。
一瞬とは言え、男性社員やその感性を持つ見ず知らずの人が登場するなど、結構忙しい話に仕上がっています。
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[No.197-2]スケジュール帳

No.197-2

「教えてくれないなら、いじわるな質問しちゃおうかな?」

同僚が何か気付いたような顔をしている。

「懐かしい・・・ってことは、過去形だよね?」

どうでもいいようなことには、めっぽう鼻がきく。
確かに過去形だ。
現に、その二文字はもう1年ほど書いてはいない。

「まぁ・・・そういうことだけど」
「多分、場所の名前でしょ?」
「どうして分かったの?・・・あっ!」

誘導尋問に引っ掛かったようになった。
それにしても、なぜ場所の名前と分かったんだろう。

(まぁ・・・そんなに選択肢もないしね)

小さなスペースに書き込む。
人の名前、時間、場所・・・内容は限られてくる。

「・・・もぉ!・・・悔しいけど、認めるわ・・・でも」
「どうして分かったかって?」
「時間なら懐かしめないでしょ?それに私なら名前を書くわ」

同僚は恋人を含めて、男友達との交友関係も広い。

「あなたは好きになったら一途でしょ?」

なるほど・・・相手が一人なら待ち合わせ場所でこと足りる・・・か。

(No.197完)

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[No.197-1]スケジュール帳

No.197-1

「懐かしいな・・・」
「・・・なに想い出にふけっているのよ・・・」

気付かない内に、口にしていたらしい。
同僚から言われて、現実に戻る。

「あっ!何でもない、何でも・・・」
「スケジュール帳を見て、懐かしめるなんて、どうなの?」

しっかり聞かれていたらしい。
愛用のシステム手帳を定期的にメンテナンスする。
過ぎたスケジュールは、リファイルして保存するのが習慣だ。

「以前のスケジュールを見てたのよ」
「それだけで懐かしめるの?ある意味羨ましいけど・・・」

スケジュール帳は仕事用だ。
併せて言うなら、プライベートでは手帳は使わない。
ただ、まれにスケジュール帳に私的な内容を書く時がある。

「何が書いてあるわけ?人の名前とか?」
「それは秘密・・・」

それ自体、教えた所で何も問題はない。
スケジュール帳の所々に青い文字で、あることが書かれている。
でも、その書き込みはある時を境に途絶えている。

(京橋・・・か・・・)

今度は口にしないように、意識して心の中でつぶやいた。
主に火曜日に、その文字が書かれていた。

(No.197-2へ続く)

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[No.196-2]学習効果

No.196-2

「そうね、大人な言い方をすれば“体”はそうかもしれない」

仮に体を自由に出来たとしても、心までもそうとは限らない。

「最初はそれでも構わない・・・ただ・・・」
「いずれ、そのギャップに悩まされることになる・・・でしょ?」

例の彼女に悪意はなく、信頼できる相手に相談しただけだろう。
それを男性は“選ばれた人=好意を持たれている”と勘違いする。
それが、体の関係まで進めば尚更だろう。

「それを何度か繰り返せば・・・」
「それが学習効果になる・・・わけね」
「お陰様で、随分と学習させてもらったよ」

尚哉(なおや)がおどけた顔をして笑った。
話が振り出しに戻った時点で、静かなバーはより静けさを増した。

「じゃ、あえてもう一度聞くけど学習効果って?」

私から静寂を破ってみた。

「勘違いしないことなんだけど・・・」

尚哉が一呼吸置くようにして、続きを話した。

「・・・心が繋がるまでは勘違いしないってことさ」
「あら、慎重ね!」

確かに悪いことではない。
でも、今は困る。

「あーあ・・・なんか、相談しずらくなったんだけど・・・」
「心配ないさ、君の場合は前から好きだから」

(No.196完)

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[No.196-1]学習効果

No.196-1

「学習効果?」

お酒の席で、ちょっとした恋愛談義が始まった。
静かなバーに合わせるかのように大人な内容になった。

「あぁ・・・勘違いしなくなったってことさ」
「勘違い?」

尚哉(なおや)が振り返るように話し始めた。

「以前、ある女性から悩み事の相談を受けたんだ」

尚哉が言うには、プライベートな悩みだったようだ。
同性にも話せないような内容でもあったらしい。

「相談に乗ってるうちに好きになるって、パターン?」
「それ以前に、好意を持ってるから相談してきたと思った」

彼女の真意は私にも分からない。
ただ、男性を勘違いさせるにはそれで十分かもしれない。

「恋への進展は?」
「仮にだよ・・・彼女と大人な関係を持ったとしたら、どう思う?」
「それは・・・」

私も女性だから分かる。
悪い意味ではなく、心と体は別々の意思を持っている。
好きではない男性とも一夜を過ごせる場合もある。

「男性はその瞬間、自分の物になったと勘違いする」

尚哉の言うことは間違ってはいない。
だから、男性はここから苦悩するのも事実だろう。

(No.196-2へ続く)

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ホタル通信 No.037

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.153 その先にあるもの
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

真意を伝えにくい小説のひとつです。ラスト近くの「ただ、その感覚を言葉で伝えるのは難しい」のくだりは作者の本音です。

例えば、毎月同じ人と19時に逢っているとします。
夏であれば空も明るく「さぁ、これから!」と妙に元気にもなりますし冬だともう真っ暗で「1日終ったかぁ・・・」と気落ちすると言うより何となく、しっとり落ち着く感があります。
そんな雰囲気の中で定期的に同じ人と逢う。ただ、それだけなのに強烈に季節の移り変わりを意識します。

想い出は場所や物などを通じて、心に刻まれることが多いと思います。私の場合、単にそれらだけではなく、まさしく“背景”の影響力が強いのです。
これでもまだ意味がよく理解できないと思います。自分でも、うまく説明できませんが、そう言うことなんです

『どこ行く?何しようか?』

それは真っ暗な空の下や昼間とも思える空の下で交わされた会話です。
その会話に具体的な答えは出なくても、想い出と言う名のページにはしっかり刻まれて行きました。
本来はもっと分かりやすい話に作り変えるつもりでしたが、前述した通り、自分でもうまく説明できない、そんな気持ちも込めて素直に作ってみました
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[No.195-2]二度目の出逢い

No.195-2

自分の中では、これは二度目の出逢いだ。

「じゃあ、何だろう・・・」
「答えゆっていい?」

実は答えはもう言ってある。
なのに、どうして気付かないのだろうか・・・。

「あっ!そうか」

気付いたのは僕の方だった。
彼女が気付かない理由を僕が気付いた。

「自分にとっては普通のことだもんな」

僕には特別に聞こえても、彼女はいつもと変わらない。

「あぁ!」

彼女もようやく気付いたようだ。

「・・・だろ?」
「うん、“ゆう”って言葉ね」

彼女は“言う”を“ゆう”と表現する。
それが何とも心地よく聞こえる。

「二度目の出逢いなんだよ」
「・・・とゆうことは、最初に出逢った言葉もあるんだよね?」
「ゆって欲しい?」
「ゆって!ゆって!」

ちょっとした、“ゆって合戦”になった。

「ラジャー!」

(No.195完)

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