[No.194-2]通り過ぎる人
No.194-2
「・・・何が居るって?」
一言多かったのかもしれない。
美和がその一言にすかさず突っ込んできた。
「他にも特徴的な人が居るんだよ」
赤いメガネがおしゃれな大学生風の女性。
かなりのスピードを出して自転車で疾走している。
「どうせ、“おしゃれメガネちゃん”って呼んでるんでしょ?」
「よく分かったな、でも・・・」
「はいはい、心の中で思ってるだけ、って言いたいんでしょ?」
彼女もまた清清しい朝だと言うのに、真剣な顔だ。
まぁ、あのスピードだ・・・何となく理由も想像できる。
「そうだよ、声掛けるわけないだろ?」
自分で言ってから、ある矛盾に気付いた。
それは美和も同じだったようだ。
「じゃ、私は何て呼ばれてたわけ?」
「それは・・・」
美和の場合はすれ違うのではなく、方向が同じだった。
歩くのが早い彼女は、いつも僕を抜いて行った。
「特に名前なんて付けてないよ」
嘘じゃない。
サラサラの髪が風になびいていたのが印象的だった。
「私は付けてたわよ」
(No.194完)
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