[No.194-1]通り過ぎる人
No.194-1
「怒られるわよ、そんなこと言ったら」
人間観察するつもりがなくても、そうなってしまうことがある。
朝、駅に向かうために歩く10分程度の距離。
この間に多くの顔見知りとすれ違う。
「それって、顔見知りって言わないでしょ?」
「暗黙の了解だよ」
「向こうはいい迷惑よ、きっと」
言葉を交わしたこともなければ、会釈したこともない。
ほぼ毎日、決まった時間にすれ違うだけの人達だ。
「だ・か・らぁ、女子高生にそんなこと言ったら怒られるよ」
美和に通勤途中に出逢う人について話した。
その中に特徴的な人が居るからだ。
「しかめっ面・・・ってダメか?」
「ダメに決まってるでしょ!女性に向かって失礼よ」
別に悪意を持って発言しているつもりはない。
その女子高生とは自転車ですれ違う。
意味もない笑顔もどうかと思うが、明らかにしかめっ面をしている。
「それが逆にかわいく見えるんだよ」
「それはそれで問題発言よ」
「おい、おい・・・そんなんじゃなくて」
彼女に好意を持っているとか、そんなんじゃない。
女子高生としかめっ面の組み合わせが何とも微笑ましい。
「とにかく、自然に通り過ぎるのよ」
「分かってるよ、他にも居るから」
| 固定リンク | 0
「(008)小説No.176~200」カテゴリの記事
- [No.200-2]ホタルノヒカリ(2010.09.21)
- [No.200-1]ホタルノヒカリ(2010.09.19)
- [No.199-2]環境が人を変える(2010.09.17)
- [No.199-1]環境が人を変える(2010.09.16)
- [No.198-2]せいじゅうろうを探せ!(2010.09.14)
コメント